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書評
アジア関連書籍の紹介です
『環境学の技法』
石弘之編 東京大学出版会(2002年)税抜き3200円

(環境問題のいい入門書はないか。02年3月まで、アジアネットワークで「アジアの環境とエネルギー」チームの主査を務めていたときに感じていたことである。ジャーナリズムで知る環境問題は京都議定書をめぐる交渉や、中国の砂漠化のルポルタージュなどの個別の問題についての報告が多く、一方学者の著作は専門性が高すぎて、手に取るのに勇気がいるのではないか。私と同じように恐らく、みんな石弘之氏の「地球環境報告」(岩波新書)やワールドウォッチ「地球白書」などを通じて、ばくぜんと「環境学」のようなものがあると感じてきたのではないだろうか。「沈黙の春」(レイチェル・カーソン、新潮社)や「複合汚染」(有吉佐和子、新潮文庫)などの警鐘で覚醒させられた読者に訴えるため、ここ2、30年にわたり環境諸科学はそれぞれの方法論と啓蒙策を探ってきた。

『環境学の技法』は、環境というものを問題として考える際に、その方法と視点を定める重要性を述べている。「問題を設定する」「状況を解釈し、一般化する」「データを集め、判断する」という章立てで、文化系、理科系に細分化された環境諸科学の説明ではなく、実際の社会の現象を切り取る方法、社会科学の方法の適用、フィールド調査が単なる調査に終わらないためのデータ活用などについて、ザンビア大使に転身した石弘之氏のほか、佐藤仁(前AAN客員研究員)、永田淳嗣、リチャード・ノーガード、松原望、井上真(現AAN客員研究員)の5学者が、個々の経験も交えて考察した。

「環境学栄えて環境滅ぶ」とは、中国で環境学者が急増したのに比べて環境問題はなかなか改善されない事態について、「アジア環境白書」(東洋経済新報社)で言及されていた表現であるが、水俣病の被害などに取り組んだ学者たちには、現在の環境諸科学の問題解決能力や現実社会への影響力に危惧があるように思える。

環境問題を報ずるジャーナリズムも、環境汚染の現場から、ヨハネスブルクのような国際会議まで、広がる地平にとまどっているように思える。試行錯誤で群盲象をなでるような報道もまだ続いている。環境ジャーナリズムで使ってきた用語や概念も再検討すべき時かも知れない。「地球にやさしい」という俗耳に訴える表現がきらい、という人は驚くほど多いのだ。

「環境学の技法」は、「これから環境学を自分の研究として始めようとする学部上級生から大学院生を意識して書かれている」(石)とある。高校生、社会人のための読みやすい入門書もほしいものである。        

(01年AAN主査 川崎 剛=現外事課長)
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