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書評
アジア関連書籍の紹介です
『中国現代化の落とし穴ーー噴火口上の中国』何清漣著、坂井臣之助、中川友訳 草思社、¥1900

著者の何(ハー)さんには、99年5月深センでインタビューしたことがある。ちょうど天安門事件10周年。事件のきっかけとなった官僚腐敗について「経済規模の拡大につれて一層深刻化している」と言い切った。細身の女性なのだが、意志の強さがはっきり窺えるまなざし。巨大な権力相手にペンで真剣勝負をしている感じがあった。だがその後、その姿勢に対する当局の態度は強硬化して、一昨年ニューヨークに事実上の亡命を迫られた。  

インタビュー時も「中国式資本の原始的蓄積」というコメントは紙面化したが、彼女が糾弾するのは、改革開放以降の中国の市場経済化の過程で、いったいだれが一番得をしたのか、その陰でだれが泣いているのか、ということだ。

「この20年余りにおよぶ財産蓄積の競争のなかで利益を得たのは、おもに政府部門で資源配分の大権を掌握する権力者、国有企業の管理者とかれらに取り入る種々雑多な『仲介者』たちである。……かれらが『市場経済』のなかで修練した『腕』とは、いかにして『公有財産』のポケットに手を突っこむか、そして『公有財産』をいかに自分のものにするかということだった」

「富を蓄積する競争のなかで、社会の成員間の資本は主として権力だった。資源配分の権力をにぎる部門にいる者、国有企業の管理者、権勢者にとりいる連中はやすやすと権力を市場化できるために、計画経済体制の遺産を分割する過程ではいとも簡単に一杯のスープ(分け前)をもらい、資本の原始的蓄積をすみやかに完成することができた」

一方で、どのように人口の多い農村部で暮らしやモラルの荒廃が起こっているか、地下経済やマフィア勢力が台頭しているかを、記者らしく様々なデータやインタビューを駆使して説明する。

私も中国での取材時に、「公有制」とは「あるモノが結局だれのものだかよく分からないシステムだ」という理解に到達したことがある。だれのものかはっきりしないから、力のある者が先に私物化できる。国のあちこちで市場経済化という名の「財の私有化」が進んでいる現代中国で、筆者の上記の指摘・批判は、一般人中心に大きな反響を呼んだ(この本の原書は98年中国国内で発売。2000年発禁処分)。

この訳書には、当局をとうとう筆者の事実上の国外追放に踏み切らせた「現代中国の社会構造の変遷についての総体的分析」も収録されている。そこにはこんな個所がある。

「中国のこんにちのありさまはその根本からいうと、後進的で陳腐な幹部選抜メカニズムに報復された結果だといえる。中国共産党が政権を担当していらい数十年間、幹部の選抜にかんしては合理的なメカニズムがつくられなかった。試験制度もないし公開でも民主的でもない。…… 指導者による人材の『発見』、組織部門による人材への『配慮』、ひいてはトップによる『後継者』選出のゴーサインが、現在にいたるも中国政府の幹部選抜の基本的なやり方となっている」

経済分野で重きをなしてきた私営企業家の入党など、中国共産党は「中国社会の優れた人材はすべて共産党員」という状況を作り出し、統治のグリップを強めようとしている。共産党の人材登用システムは、少なくとも上層レベルでは、すべてが筆者のいうほど「後進的で陳腐」ではないかもしれない。人間通、政治好きの中国人たちの間から選ばれる人材には、それなりの能力や魅力が備わっている場合も多いように思う。けれど、確かに不公平や不合理な現象が否定できず、またその現象が一層深刻化していく傾向も見えるなかで、「権力者」のありようがこれまでと同じでよいのか。本書の最大のメッセージはそこにある。

(アジアネットワーク主査 永持 裕紀)
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