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書評
アジア関連書籍の紹介です
『私が出会った日本兵ーある中国人留学生の交友録』  方軍著 関直美訳 日本僑報社 1900円プラス税

中国の官製メディアの報道には「当局の定めるコード」という一定のタガがはめられているせいか、日本駐在記者もどちらかといえばお行儀の良い人が多いようだ。けれども好奇心が極めて旺盛で、それに基づく凄まじい行動力を示す中国人は数多い。自分にとってのプラスを発見するために日本にやってきた中国人には特にその手の人が目立つ。90年代に日本に6年間留学して二つの大学で社会学などを学んだ著者はそういう人だ。「日中両国間で同姓同名が発生する確率」「日本の酒飲みと中国の酒飲み」「性概念における日中差異」「札幌の監獄を訪ねる」などの小論文を毎週のように出しながら、様々なアルバイト先などの出会いを通じて十数人の元日本兵と知り合い、そのインタビューをまとめたのがこの本だ。著者の父親は八路軍(共産党軍)の兵士だった。

「私はプールに通っていた。水泳仲間に日本軍の一員として中国東北地方で3年間過ごしたというおばあさんがいた」。著者は彼女に質問する。「戦争中、女性兵士の性は自分のものだったのでしょうか。それとも国家や軍に属していたのでしょうか。あるいは上官の手に?」。彼女は「背中を丸め、老眼をしばたかせ、そして目を細めつつ『あんたはいけない子だねえ』とつぶやいた」という。このおばあさんが即座に「性はもちろん自分のものだ」と答えなかった背景には考えさせられるものがある。「偶然にも日本軍にいたという女性に出会ったことから『戦争中の日本女性兵』と題した論文を書いてみたいと思った」という著者のむき出しの好奇心が、日中のかつての関わり、さらにかつての日本人、日本のシステムの様々な襞を洗い出している観がある。

冷蔵庫部品工場でアルバイトしていた時に知り合った小林さんはこう振り返る。「戦争中、私はずっと考えていた。誰がこの戦争を始めたのか。どうして我々は戦わねばいけないのか。この戦争の目的と結末はどうなのだろうか、とね」「普通の人間が普通の人間を殺すなんてね」「当時の日本は戦争を命じた奴らに操られてるみたいだった。日本全体が激しい嵐に巻き込まれていた」「一人ひとりがもとから悪人だったわけではない。戦争のせいで、残忍で非情な、人の道を顧みない兵士が作られたのだ」

毎日出前を注文してくれた山田さんに著者は「あなたがいちばん恐れていたものは何ですか」と聞く。「自警団だ。彼らは家族を殺された仇や、奥さんを乱暴された恨み、家を焼かれた絶望などを内に抱えている。刀や銃を通さないとかいう民間療法の薬を体中に塗って、狂ったように叫びながら、後から後からこっちに向かってくる。心臓がドキドキするよ(……)武器は手製の銃や大砲、大きな刀に農具といったようなものだ。はては清の時代の土砲まで持ち出してくるんだ」

「操られて」戦地に赴くと、このようにリアルな恐怖が襲う。時に粗削りにも見えるストレートな筆致が「激しい嵐」の実質を伝えてくるようだ。

(アジアネットワーク主査 永持 裕紀)
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