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書評
アジア関連書籍の紹介です
『グローバル・プリズム <アジアン・ドリーム>としての日本のテレビドラマ』
岩淵功一編 平凡社 2600円(プラス税)
表紙

ずいぶん長く書評のアップを怠ってしまいました。アジア関係の書籍といっても想像以上に発行点数が多いのだが、今後は「新刊」にこだわりすぎず、また「学術書」など以外もどんどんとりあげていきたいと思います。「自薦」も歓迎しますので、aan@asahi.comまでお寄せ下さい。

今回の「グローバル・プリズム」の編者、岩淵さんは、日本の民放テレビ局勤務を経て、研究者に転身した人だ。現在は国際基督教大学国際関係学科助教授(メディア・文化研究)。この本は、サブタイトルを見てもおわかりのとおり、トレンディ・ドラマと呼ばれる(呼ばれた?)日本の若者向けテレビドラマを、アジア各地の若者がどのように受け入れたかについて、韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、オーストラリアの研究者が考察したものだ。いろいろな意味で、岩淵さんはまとめ役として適任なのだろう。というのは、ある研究会で一度ご一緒した時、マスメディアの世界にいた人だけに、メディアの生理、あるいは病理については熟知されているな、という印象を受けたからだ。そして、できるだけそうした「病理」に陥らないよう自制しようという姿勢も感じられた。

マスメディアの病理とは、たとえば起こっている現象を分かりやすく、解釈しすぎようとすることだ。だれにでも分かるように、という一点をめざすあまり、結果的に多くの人に「リアル」と受けとめられない矛盾を生み出しかねないことになる。それは何も報道に限った話ではなく、最近のテレビドラマの迷走も、そうした病理が生み出しているものではないのか。

で、もう一回、この本のテーマ「日本の若者向けテレビドラマが、アジア各地の若者にも好まれている」。いかにも分かりやすい解釈は可能かもしれないが、岩淵さんを含め、研究者たちはできるだけ丁寧に、ある意味で分かりやすさを犠牲にして、この現象を追いかける。

たとえば台湾の研究者は、なぜ台湾の若者は、台湾の農村部を舞台にしたドラマより、東京を舞台にしたラブ・ストーリーに「リアル」を感じるのか、という問題を考える。その結果、「東京という大都市は、個人が自由や愛、キャリアを追求するときに中心となる場所として表象されている。想像上の東京は、現実と夢のなかだちをする視覚的な場所である。これらの夢はいまだに台北では実現していないが、スクリーン上ではすでに呈示されている。私がインタビューした人たちにとって、納得いくような大都市は、フィクション上の表象によってのみ実現しているが、どんなにつかの間のフィクションであろうと、彼らの欲望は彼らにとってリアルなのである」という結論にいたる(「日本のアイドルドラマと台湾における欲望のかたち」)。

私たちはこうした言葉によって、東京という場所、日本という場所、そしてそことアジア各地との距離感、あるいは次第にそれらが覆われてきている共通感覚を知り始める(ことができる気がする)。アジアにとってのこれからの課題は、「アジアという場所を作っていくことだ」(小倉和夫・AAN委員)という言い方もある。その課題に向けての、格好の手がかりがこうした共通感覚となるのだろう。

ただ、さらにここで自制のことば。「アジア地域の文化交通が多方向となり活性化していることは、まぎれもない事実であるし、その状況はますますありふれたものになってきている。しかし、そうしたつながりが、地球規模で進行する、もてる人ともたざる人との格差拡大、それぞれの社会内部のさまざまな差別、日本植民地支配の痕跡といった未解決の歴史問題などへの相互の取り組みと全く結び付かなかったり、そうした問題を見えにくくしてしまうように作用するなら、それは国境を越えた対話と呼ぶにはほど遠いものだろう」(岩淵功一「グローバル化のプリズムとしてのアジアメディア交通」) 

確かに、手放しで楽観的にアジアの未来を見通すことは、その多様さひとつ見ても脳天気にすぎる。けれど、そうした自制、さまざまな留保を踏み固めたうえで初めて、「国境を越えたポピュラー文化のつながりのなかに、想像/創造的な対話の可能性を具体的に模索していくこと」(同)が説得力を持つ。参加した研究者たちのそういう思いが伝わってくる本だ。

(アジアネットワーク主査 永持 裕紀)
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