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書評
アジア関連書籍の紹介です
「1421 中国が新大陸を発見した年」 ギャヴィン・メンジーズ著
“1421: The Year China Discovered The World”

鄭和艦隊の米大陸到達説を大胆に

評者・加藤千洋
(本社編集委員)

1421中国が新大陸を発見した年

中華世界からながめる東西文明の交流史は、主に中央アジアの乾燥地帯をゆく「シルクロード」の物語として書きつがれてきた。この陸の道に対し「海のシルクロード」と呼ばれる海の道もあったが、それを伝える文献類は、歴史記録を何より大切にする中国としては意外に少ない。それはなぜだろうか。

本書がユニークな視点から解明を試みた明の大航海家、鄭和(ていわ)の率いる7回におよぶ「南海大遠征」は15世紀初めの時代としては空前の壮挙だったが、いまは「謎の航海」とも言われる。永楽帝が明帝国の国威発揚や国営貿易を目的に派遣したのだが、後に明は「海禁」という対外貿易や交流を厳しく制限する政策に転じ、記録・文書類を焼き払ってしまったからだろう。

それにラクダをつれた隊商たちが歩んだ道は足跡が残るが、海原をゆく航路は目に見える形では残らない。それでも「航跡」はすべてが消えてしまう訳ではなく、交易や補給のために立ち寄る港町や、心ならずも難破して打ち上げられた異国の浜辺に、船人はさまざまな痕跡をとどめてきた。物産や動植物、言葉などだ。

著者は、その鄭和艦隊の航跡を世界各地に訪ね歩き、数々の新事実を掘り起こし、大胆な結論に達するのである。すなわち永楽帝の命を受けた大航海は伝えられた海域以外にもおよび、1421年から試みられた第6回遠征では一部の艦隊がコロンブスの「発見」より70年も早くアメリカ大陸に到達していたと。

本書の魅力は著者の経歴に負うところもある。英国海軍の生粋の軍人で、潜水艦で世界の海を回り、艦長も務めて退役した。船から陸を見た経験が豊富だと、古地図から文献専門家とは違った風景も読みとれるのだと言う。

偶然に出会った1424年にヴェネツィアで作られた古地図に、当時のヨーロッパの知識になかったカリブ海の島々がかなり正確な形で描かれていた。そこから著者は欧州の探検家に先んじ、世界の海をまたにかけた航海者がいたはずであるとの仮説をたてるのである。

随所に「海の男」の勘や独自の解釈が働いている。世界各地で素性不明の古い難破船が見つかっているが、その現場に足を運んで構造や規模から鄭和艦隊の全長140メートルにおよぶ巨大ジャンク船ではと推断する。本当かなと思いつつ、つい引き込まれる着眼点である。

面白い読み物だが、帯に言う「歴史をぬりかえる壮大なノンフィクション」かどうかは疑問も残る。自身言うように著者は中国史の専門家ではなく、事実の断片を自説補強のために都合よくつなぎ合わせた記述も目立つからだ。

とはいえ鄭和研究家である宮崎正勝・北海道教育大学教授が解説で指摘するように、「イギリス人が西欧中心主義の世界史を根底からくつがえす説を提唱した」ことは注目に値する。


松本剛史訳、ソニー・マガジンズ・506ページ・1800円/Gavin Menzies 37年中国生まれ。世界中を航海した元英海軍潜水艦長。

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