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書評
アジア関連書籍の紹介です
『中国のこっくりさん 扶鸞信仰と華人社会』
志賀市子著 大修館書店あじあブックス 1800円

SARSの時代に再び庶民の神様

評者・種村季弘(評論家)
 

そういえば家族がやっていた。こっくりさん、こっくりさん、来てください……だっけ。誰しもこっくりさんには多少の思い出がある。一時は凝った。でも、まもなくケロッと忘れた。

本場中国だとそうはいかない。こっくりさんは明治時代につくられた俗名。本来は扶鸞(ふらん)といい、これを信仰するのが扶鸞信仰だ。実践的にはT字型またはY字型の柳のけい筆(けいひつ)を一人または二人のけい手(けいしゅ)が支え、砂を敷いた「沙盤(さばん)」の上にけい筆の先端の突起を置くと、ひとりでに文字や記号を自動筆記する。お告げは、概して依頼者の希望の成否や病気の際の適切な治療薬名を指しているらしい。なかでも疫病の治療法。それかあらぬか扶鸞信仰は清末のペスト流行の時代にすさまじい勢いで拡大したし、現代でもSARSの出現とともに近代的医療設備のとぼしい地域に復活する傾向があるという。

扶鸞信仰の源流は五世紀頃の紫姑(しこ)神信仰に始まる。紫姑神はさる男の妾(めかけ)だったのが、正妻の嫉妬(しっと)に追いつめられて自殺した女性(神)。扶鸞信仰はそのせいか女性的なものと関(かか)わりが深いが、女性霊媒の独占物でなくなったのは、宋代の士大夫が伝統的な文字崇拝と結びつけて以来のこと。だから幸田露伴の随筆「扶鸞之術」で知られた神仙呂洞賓(りょどうひん)のような男性神もいる。

本書のハイライトは、著者が香港下町の扶鸞信仰の現場を探訪するうちに研究と信仰のはざまに陥り、ついに導師の許可を得て入信してしまうくだり。登場人物がそこらのおばさんやおじさんといった信者ばかりのせいか、宗教というより身近な生活感が強い。そんなつましい信者たちを抱える結社も、香港、台湾、東南アジアの華人社会、果ては中国本土の一部にまで日常的な影響を及ぼしているとなるとバカにならない。

今のところ中国政府は扶鸞結社を公認していない。それでも著者の見るところ、「少なくとも、地下に潜んでいた扶鸞信仰の水脈が、今後もあちこちで地表に顔を覗(のぞ)かせ」る可能性は大いにあるという。ましてやSARSやインフルエンザ流行の徴候(ちょうこう)ありともなれば。

しが・いちこ 63年生まれ。茨城キリスト教大助教授。

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