小島朋之氏が雑誌「東亜」に「中国の動向」を連載し始めて、すでに20年以上が経過した。「中国の動向」は、「人民日報」その他の公刊資料を中心とする中国情勢の正確な分析で定評があり、関係者の必読文献となっている。それらは、すべて本にまとめられており、本書は8冊目となる。偉業といってよい。
本書は、2000年から03年前半までの動きをカバーしている。この間、江沢民の地位がさらに上昇する一方、台湾における陳水扁政権の誕生など、難しい問題も発生した。そして01年には、ブッシュ政権の発足、小泉政権の誕生、9・11事件など、一連の動きの中で、中国外交は大きく大国協調へと転換し、02年末には胡錦涛政権が発足して新しい模索を開始する。本書は、中国の「富強大国」への道を克明にたどった読み応えのある本であり、将来この時期を振り返るときにも、必ず参照されるであろう。
国分良成氏の著書は、国家計画委員会を中心とする中国の官僚制を考察の対象とする。中国は建国後まもなくソ連をモデルとして経済建設に着手したが、その中心となったのが国家計画委員会であった。しかし同委員会は、大躍進そして文化大革命によって、翻弄(ほんろう)された。共産党一党独裁の下、「人治」の傾向が強い中国で、彼らは専門官僚としての役割を果たすことができず、指導者の権力行使を支える役割を担うこととなった。
彼らが手腕を発揮するようになるのは、78年の改革開放からである。しかし、その中で計画経済そのものの役割が縮小されていく。98年、国家計画委員会は国家発展計画委員会となり、03年、国家発展・改革委員会となって、「計画」という言葉はついに姿を消したのである。このように、計画経済の中心である国家計画委員会の分析を通じて、本書は中国政治の巨大な変化を描き出すことに成功している。
両氏は、日本における中国政治研究の第一人者である。こうした本格的な著作が、より広く読まれてほしいものである。何といっても中国は政治が経済を支配する国なのだから。