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書評
アジア関連書籍の紹介です
『周恩来 キッシンジャー機密会談録』
 毛里和子、増田弘監訳 岩波書店 5500円

世界を驚かせた米中関係の転換点

評者・北岡伸一(東京大教授)
 

1971年7月のキッシンジャー大統領特別補佐官の中国訪問ほど、世界を驚かせ、世界を変えた事件も少ない。それは、50年の朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)以来の米中関係を大きく転換させ、アジアの国際関係に根本的な変更をもたらした。

本書は、主に7月および10月のキッシンジャー訪中時における周恩来首相との会談記録を収めたものである。既刊の『ニクソン訪中機密会談録』とあわせ、歴史的な米中関係転換の記録の主要部分が、出揃(でそろ)ったわけである。

イギリスの外交官ハロルド・ニコルソンは、外交とは交渉によって合意に達する技術だと述べた。二十世紀屈指の二人の外交家が、巨大な対立をはらんだ二国の間に、それぞれの国益を最大限盛り込んだ合意を実現しようと全力を尽くす様はまことにスリリングである。

会談では、アメリカはヴェトナムからの名誉ある撤退を目指し、中国は台湾問題を有利に解決しようとした。会談をリードしたのは周恩来だった。アメリカのヴェトナム政策は行き詰まり、堅固な道徳的基盤を欠いており、しかも大統領は翌年に選挙を控えていた。

その結果、キッシンジャーは台湾問題で譲歩を重ねた。最初から「台湾独立を支持しない」という立場を示し、10月には、「台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであると主張していることを認識し、それに異議を申し立てない」という文言を提案し、合意が達成された。ただ、台湾の人々が、中国は一つだと考えなくなったとき、一体どうするのか。この条項は、今、新しい試練にさらされている。

周恩来の外交は、50年近い政治外交経験に深く裏付けられていた。毛沢東の箴言(しんげん)を引き、歴史の先例にさかのぼり、国連問題における中間的な案や、対ソ提携の可能性などには関心を示さず、もっとも重要な問題に絞ってキッシンジャーに譲歩を迫ったのである。

周恩来の背後は決して万全ではなかった。周は文化大革命にまだ揺れる国内を誘導し、毛沢東の許容する範囲を見定めて、事にあたった。林彪(りんぴょう)事件は9月のことだった。

しかし周恩来にも誤りはあった。日本が台湾に軍事力を派遣する可能性を懸念しているのは、的外れと言うほかない。キッシンジャーも日本の軍事大国化の危険を指摘して、だから米軍の駐留が必要だと述べる。二人のリアリストは、この誤りにおいて奇妙に一致している。

こういう極秘資料が世に出たのは、アメリカが外交文書を30年後に公開しているからである。中国でも、最近、50年代の外交文書を公開し始めた。歴史は資料によって書かれる。それゆえ歴史には資料を残した国の立場が強く刻み込まれる。日本の外交文書公開は著しく遅く、その結果、日本の姿は歴史の中でも見えにくい。大胆な方針の転換を強く希望する。

もうり・かずこ 40年生まれ。早稲田大教授。ますだ・ひろし 47年生まれ。東洋英和女学院大教授。

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