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書評
アジア関連書籍の紹介です

『留学生アドバイジング』 横田雅弘・白ツチ悟
ナカニシヤ出版・3675円

現場から提言する実践学の書

評者・大塚晶(2004年度AAN主査)

タイトルにある「アドバイジング」とは何か。単純に「相談業務」というものでは到底ない。筆者らの定義はこうだ。

「『留学生の修学・生活上の諸問題に援助・助言を与える業務』も含めた、もっと幅広い留学生関連の業務である」

単に「困った」とやってきた留学生の相談に応じることにとどまらず、地域や外部の公的機関との調整・橋渡し、学内での関連業務の企画立案、外部とのトラブル処理など、多岐にわたる知識とノウハウ、そして実践力が問われる業務なのである。

あえて日本語ではなく「アドバイジング」をそのまま使ったのは、適切な訳語がないという理由からだという。戦後、留学生の受け入れは1983年に中曽根内閣が「留学生受け入れ10万人計画」を打ち出すことで本格化し、それから22年もたつというのに、いまだに「適訳がない」という一点からも留学生関連業務の未整備がうかがえよう。

当然、この分野の体系だった専門書は少ないし、各大学等の現場にもノウハウが十分に蓄積されているとは言い難い。その意味で、本書は極めて貴重な、大学関係者に必携の書である。せめて留学生に接する機会のあるあらゆる機関、団体の担当者は熟読すべきだろう。

この本を特徴づけているのは、アドバイジングの理論とともに、筆者らの長年の体験、実践に基づいた「事例紹介」や「ケース」が数多く用意されていることだ。いわば現場から提言する実践学の書である。

ここでは「ケース1」をほんの少しだけ紹介したい。タイトルは「言うべきか、言わざるべきか」。ストーリーは、アジアからの私費留学生で、工学部の学部に在籍する男子学生が留学生担当者のもとを訪れ、「(自分の)先生から差別的な扱いを受けている」と訴えたところから始まる。

ところが、その先生は留学生担当者が昔から知っている人で、偏見を持っているとは思えない。それでも間に入ろうか、と言うと、学生は「自分で言うから」と断り、実際にその先生に話をした。その後、その先生は担当者にこう言った。「なぜ早く言ってくれなかったのか。侮辱したつもりは、毛頭ない。こういう風に情報を留めてしまうからちょっとしたことが深刻な事態になってしまう。留学生相談などと看板を掲げておきながら物事の解決をかえって困難にしている」

筆者らはここで読者に問いかける。


(1)このケースはいくつのシーン(幕)に分けて考えるのが適当か。
(2)この事例を考える上で、頭に入れておかなければならないことは何だろうか。
(3)担当者は、この先生が言うように、(学生の)Aさんが初めに訪ねてきた後、先生に状況を伝えるべきだったのか。

さて、あなたが担当者だったとすれば、どう対応するだろうか。よりベターな対応とはどんなものか。

思わず考え込んでしまうような、しかしながら留学生担当者にとっては決して他人事ではない「ケース」が、「異文化カウンセリング」「危機管理」「修学・生活問題に対するアドバイジング」といった分野でいくつも登場する。

外国人や異文化と日常的に接する立場の人にも貴重な示唆を与える内容だ。

筆者らが終章で指摘するように、「大学の留学生受け入れ体制にはまだ多くの課題が残されている。そのため、その場限りの泥縄式の対応が相変わらず続いている」。83年以降、各大学には留学生センターができ、担当教官も置かれ、住宅もそれなりには造られてきた。にもかかわらず、「泥縄式の対応」が続くのはいったいなぜなのか。

留学生と接する機会の多いある大学の担当者は、評者にこう言ったことがある。
「現場の声が文科省の政策には反映しないんですよ」
文科省の担当者らにも是非読んでほしい一冊である。

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