韓国で世論形成の新たな担い手として五年前に登場し、盧武鉉(ノムヒョン)大統領誕生の原動力になったインターネット新聞のことは、日本でもようやく知る人が増えてきた。「市民みんなが記者」を合言葉に「保守的な紙新聞」と戦ったその足跡を、軽妙な筆致で綴(つづ)ったベストセラーの翻訳である。
著者はそれを発案し、主宰してきた四十代の元雑誌記者。いまや社員六十七人、市民記者三万六千人になった世界最大のネット新聞の成功物語は、明るい刺激と教訓に満ち、未来メディアへの想像をかきたてる。世界新聞協会の大会にゲストとして招かれ、ソウルの本社に視察の人波が絶えないのは、読者の頭打ちに悩む旧来メディアの危機意識の表れでもあろう。
「オーマイに続け」と、日本でも市民参加型ネット新聞は増えつつある。しかし、まださほどの伸長がみられないのは、若者世代に著者のいう「準備された市民」が乏しい故だろうか。