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書評
アジア関連書籍の紹介です

『日露戦争史』 横手慎二著 中公新書・777円

読みどころは虚々実々の外交駆け引き

評者・野口武彦(文芸評論家)

 日露戦争終結百年という歴史の節目の割には、なぜか記念すべき戦史の大著が刊行されていない。そんな出版界の数少ない収穫といえる本書は、二百ページそこそこながらタイムリーな好著である。

日露戦争とはどんな戦争だったか。

十九世紀末から二十世紀初めにかけての戦争は「欧米帝国主義対アジア・アフリカ植民地」の構図をそなえ、(1)殺傷力の高い兵器の使用、(2)非戦闘員の殺戮(さつりく)、(3)人種差別といった特色を帯びて戦われ、おおむね宗主国が勝った。日露戦争も当初は世界中からそのたぐいだろうと思われていたが、日本は勝利し、終了時には日本を強国の一員に押し上げる「帝国対帝国」の戦争に変わっていた。

読みどころは外交戦争史である。

記述は外交官風にマイルドな筆致で書かれていて、血湧(わ)き肉躍る戦闘場面を期待する向きは拍子抜けするほど淡々としているが、しかし丁々発止、虚々実々の外交駆け引きには迫力がある。

対立する二国の一方が自国の安全を増そうとすると、他方の国は不安を増す。そういう悪循環を「セキュリティ・ジレンマ」というそうだ。日露関係でもロシアは旧満洲を、日本は韓国をというかたちで勢力圏を定める「満韓交換論」が相互不信でまとまらず、戦争以外に解決策がなくなってゆく経過をたどる。

交渉決裂から戦端開始に持ち込んでゆく外交の呼吸が呑(の)み込める。

旅順要塞(ようさい)陥落や日本海海戦といった戦史の名場面も出てくるが、それらハイライトシーンを準備する政府と軍首脳の迷いと決断が興味深い。軍は政策決定に口出ししないが、独自の判断で開戦準備を進める。政府は最大の戦果を欲張るが、軍のリアリズムに耳を傾けて妥協する。その結果、たとえ日比谷焼き打ちが起きても、明治の日本では、政府と軍との間には対立を超えた協力があった。

日露戦争の勝利は日本を東アジアの大国にしたが、敗者はより多くを学ぶ。ロシアでは詳細で軍部に厳しい戦史が編纂(へんさん)され、「奇妙なほど分析姿勢を欠いた日本の公式の戦史」と対照的だという指摘は、今日ひとしお傾聴に値しよう。

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