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論争 経済危機はいつもで続くのか―危機は長期化しかねない状況にある

2009年7月10日発売号

    ロバート・マッドセンマサチューセッツ工科大学
    国際研究センター・シニアフェロー

    「ブッシュ・オバマ両政権の場当たり的な政策立案と政策の揺らぎは、1990年代初頭の日本の指導者のそれと恐ろしいほどに似ているし、経済ダメージの規模の大きさ、そして保護主義が台頭しつつあることを考慮すれば、大恐慌初期との類似性さえ想起させる。近代的な財政と金融ツールを駆使すれば、現在の世界は大恐慌のような大惨事が今に繰り返されるのを回避できるかもしれない。しかし、この点での確信を抱かせるような施策はなんら取られていない」

    ■世界は失われた10年を再現する瀬戸際にある

     『アメリカは日本の「失われた10年」と同じ道をたどるのか』(フォーリン・アフェアーズ・リポート2009年4月号掲載)において、リチャード・カッツは1990年代に日本が苦しんだ経済不況を、現在アメリカで起きていることの先例としてとらえるのは間違っていると主張した。アメリカの経済危機は日本の危機と比べて余波が及んでいる領域が狭いし、アメリカ政府は当時の日本政府よりも力強い対応策を打ち出している。したがって、経済的なダメージもはるかに小さくなると彼は言う。しかし、アメリカ経済ばかりに注目している彼のとらえ方は間違っている。いまや北米だけでなく世界全体が、日本が経験したような「失われた10年」に陥るかどうかの瀬戸際にある。

    ■過剰貯蓄とバブルの発生

     日本の「失われた10年」も現在のグローバルな経済危機も、過剰な貯蓄と巨大な資産バブルの崩壊によって引き起こされている。日本の場合、団塊の世代が中年後期に入った1980年代半ばから問題は始まっていた。一般にこの年齢層に達すると人々は引退に備えて所得の多くを貯蓄するようになり、国民貯蓄は増大する。

     理屈から考えても、貯蓄の増大が消費と国内需要を抑え込み、GDP(国内総生産)成長率を低下させるのは明らかだ。日本にとってこれは厄介な問題だった。

     だが問題がすぐに表面化したわけではない。金融緩和政策、金融技術の進歩(財テク)、不適切な規制が重なり合って資産バブルが発生し、企業投資も急増したからだ。加えて(当時の日本は)巨額の貿易黒字も計上していたので、1980年代末までは全般的には一定の需要水準とGDP成長を維持できた。

     だが、1989年から1991年にかけてバブルはついに崩壊した。精神的に大きな衝撃を受けた日本人は、企業が債務を徐々に処理し始めても、ますます貯蓄性向を強めていった。この(借入金に依存した投資であるレバレッジを解消する)デレバレッジによる投資の減少は、根本的な消費不足をさらに深刻にした。こうした消費不足が日本の失われた10年の根幹にあった。

     教科書にある経済理論では、過剰貯蓄を抱える国は資本を輸出し、国内市場でさばききれない商品やサービスを購入する資本を外国に輸出することになっている。過去にシンガポールやスイスのような国はまさしくこのような行動をとり、長期にわたって自国のGDPの10%近くの経常黒字を計上し続けた。

     しかし日本はあまりにも巨大な経済大国であり、世界は日本が輸出する必要のある資金を十分に吸収しきれなかった。このため、日本の経常黒字は、GDPが潜在成長率で伸びていくのに必要な半分のレベルを超えられなかった。残り半分の資金は、過剰貯蓄と表裏一体の消費不足が工業生産、物価、金利を抑え込んでいた日本国内にプールされた。こうして、日本は本格的な不況に陥る瀬戸際に陥った。

    Worse and Worser

    フォーリン・アフェアーズ日本語版

    <フォーリン・アフェアーズ・リポート2009年7月10日発売号>

    (C) Copyright 2009 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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