韓国史を扱う「国史」の教科書は、国定の1種類しかない。この中で韓国の民主化に関する部分は、「民主主義の試練と経済開発」「民主化運動と統一のための努力」の2章。民主化運動については60年代からの歴史を追い、本文だけでも計8ページをあてる。
まず、李承晩(イ・スンマン)大統領を倒した60年の「4・19革命」については《自由民主主義を守るため、学生と市民たちが起こしたもので、国民の自由と権利を守り、民主主義の理念を実現するためのもの》と位置づけている。多くの犠牲者を出した80年の光州事件については次のような記述だ。
《軍人たちの政権掌握のたくらみに反対し、自由民主主義の憲政体制回復を求める市民たちのデモが全国的に広がった。このデモは光州で絶頂を迎え、5・18民主化運動につながった。》
さらに87年に起きた、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権の独裁に反対し大統領の直接選挙を求める民主化運動は次のように記述する。
《市民は軍部独裁と不正を糾弾し、憲法改正を求めた。このように民主化を要求する市民の熱望は、6月民主抗争に昇華され、全国に広がった。これに軍部勢力が屈服し、ついに6・29民主化宣言が発せられた。》
国史編纂(へんさん)委員会の金得中(キム・ドゥクチュン)博士は「光州から87年の運動への流れは、今日の韓国民主政治の大枠をつくった。民主化は外から教えられたのではなく、国民自らが勝ち取ったもので、私たちはそれを自負している。そうしたことに力点を置いて教える」という。
一方、台湾の民主化は、世界史も含めて言及がない。
中国の改革・開放は、世界史の「社会2」で扱う。金星出版の教科書は「中国が、1978年から改革・開放政策を進め、経済が速いスピードで発展した」と2行ほど。ほかに本文や注で指導者としてトウ小平の名を挙げている。
(桜井泉)