2008年8月25日
「韓国食菜 ニ東マッコリ」の二東生マッコリ
エイの刺身(手前)とモドゥムジョン(野菜や魚の衣焼き、右奥)
「韓国食菜 ニ東マッコリ」の店内
ブルダック(鶏の辛焼き、手前)と海鮮焼きうどん(右奥)
「生マッコリ家」の韓さん生マッコリ
醸造場を案内してくれる韓吉洙社長
先日、ソウル取材に出かけた際、市場内の屋台で食事をする機会があった。緑豆を石うすですりつぶし、お好み焼きのように焼いたピンデトクを食べながら、韓国の伝統酒であるマッコルリを飲んだ。マッコルリは米や小麦などから作る韓国式のどぶろくで、日本ではマッコリ、マッカリの名でも呼ばれている。
飲みながら何気なくマッコルリのボトルを見ると、製造年月日の印字が前日であることに気付いた。昨日出荷されたマッコルリが、翌日にはもう屋台で客に提供されている。見ると賞味期限はわずか10日。日本で飲めるマッコルリは加熱処理されたものがほとんどだが、韓国では生のマッコルリも多く飲まれている。生マッコルリは流通する間にも発酵が進んでゆくため、ぷちぷちとした発泡感があり、甘味の中にもほのかな酸味が加わる。爽快な喉越しが生ならではの味わいだ。
近年、日本でも韓国料理の人気上昇に伴い、マッコルリの人気が高まっている。アルコール度数が5〜9度前後と飲みやすく、口当たりのよさが人気の理由。マッコルリを使ったカクテルを出す店や、韓国各地から地マッコルリを仕入れて販売する店も登場している。舌の肥えた客が増えてきたと見えて、各店とも個性を打ち出すのに懸命だ。
その中でも注目されているのが、生マッコルリの存在だ。これまでは流通や保管の問題もあって難しいとされてきたが、需要の増加にともない、生マッコルリの提供も現実的になってきた。販売メーカーが冷蔵での輸入を行う一方、国内の酒造会社と提携し、日本産のマッコルリを作るケースも出てきた。韓国料理店で生マッコルリを見かける頻度は、確実に多くなっている。
こうした時代の流れに背中を押され、生マッコルリを前面に出した韓国料理店も登場し始めた。今年7月に東京の上野でオープンした「韓国食彩 二東マッコリ」は、日本でのマッコルリ販売最大手、株式会社二東ジャパンが経営する韓国料理店。自社で販売するマッコルリを宣伝するとともに、まだ日本ではあまり知られていない、生マッコルリの味を知って欲しいと飲食店経営に乗り出した。日本ではなかなか味わえないエイの刺身など、マッコルリと相性のよい料理にこだわったメニュー構成も自慢のひとつだ。
同じく、東京の新大久保でも生マッコルリの専門店、「生マッコリ家」が7月にオープンしている。韓国料理店を営みつつ日本で酒造免許を取得した韓吉洙(ハン・キルス)社長が、「ソウル酒造」という生マッコルリ製造、販売の会社を設立。そのアンテナショップとして飲食店も同時にオープンさせた格好だ。店のすぐ裏が醸造場になっているため、まさに工場直送、出来たての生マッコルリを味わうことができる。
徐々に市場規模を拡大しつつある生マッコルリ。味にこだわる日本人の好みから考えても、この流れはよりいっそう加速していくことと思われる。韓国料理店における「とりあえず生!」がマッコルリを意味する日も、そう遠くないのかもしれない。
●生マッコルリの魅力
生マッコルリは発酵が進むにつれて、少しずつ酸味が出てくる。出来たてのフレッシュな味わいもいいが、ほんの少し酸味が出てきたぐらいが美味しいという人も多い。あまり寝かせすぎると今度は苦味が出てしまうので、好みの発酵具合で飲むというのは意外に難しい。ある程度在庫のある店であれば、製造年月日を確認しつつ、好みの味を店員に伝えてみるのもいいかもしれない。
※韓国語の表記統一により本文中では「マッコルリ」としました。固有名詞である店名のみ「マッコリ」としてあります。
●店舗データ 地図
店名:韓国食彩 二東マッコリ
住所:東京都台東区上野2−12−11宝丹ビル4階
電話:03−5816−4979
HP:http://www.e−dongmaccori.jp/
店名:生マッコリ家
住所:東京都新宿区大久保2−31−16
電話:03−3205−3231
コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』、『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』、『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。
日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。