2010年7月27日
ジョンの盛り合わせ(ビソリ)
木々に囲まれた中庭風の座席(ビソリ)
外観はひっそり佇むカフェのよう(ビソリ)
牛肉、牡蠣、青唐辛子のジョン(韓流美食)
大きな鉄板で丁寧に焼いていく(韓流美食)
マッコリの充実度は都内屈指(韓流美食)
日本でいう「チヂミ」は、ソウルに行くと「ジョン」、または「プチムゲ」と名が変わる。葉ネギやニラ、魚介などを、お好み焼き状にフライパンで焼いた料理。チヂミというのは南部地域の方言であり、ジョンとプチムゲは標準語だ。いずれの単語も、日本語にするならば「焼いたもの」、「お焼き」程度の意味になる。
また、ジョンとプチムゲを比べると、ジョンのほうがやや定義が広い。お好み焼き状に焼いたものだけでなく、エビ、牡蠣、白身魚、豆腐、キノコ、青唐辛子といった素材に小麦粉と溶き卵をつけて焼いたものも含まれる。ちょうどイタリア料理のピカタに似た調理法。これらを大皿に盛り合わせたモドゥムジョンは居酒屋料理として親しまれており、また家庭では正月や祭祀を行うときなど、人が大勢集まるときに多く作られる。
ジョンはごはんのおかずとして食べてもよいが、特に力を発揮するのがマッコリ(韓国の濁酒)と組み合わせた場合だ。韓国ではマッコリに合うおつまみというと、まずジョンの名前があがるほど。マッコリを主として提供する「民俗酒店(ミンソクチュジョム)」と呼ばれる伝統居酒屋では、店頭でジョンを焼いている光景をよく見かける。ジョンをつまみながら飲む、マッコリの爽やかな喉越しは格別の喜びだ。
ここ最近は、日本でもマッコリが浸透し始めており、国内で飲める銘柄もすでに100種類を超えた。スーパーやコンビニの棚にも並び始め、韓国からの輸出量も右肩上がりが続いている。その伸び率と肩を並べるかのように、マッコリとジョンを一緒に味わえる店も少しずつ増えてきた。
東京、恵比寿に位置する「ビソリ」は、店名の由来が「雨音」。韓国では雨の降る日にマッコリを飲みながらジョンを食べる習慣があり、雨音がジョンを焼く音に似ているからともいわれる。肉団子、エビ、シイタケといった日替わりの食材でジョンを作り、盛り合わせたものをコースメニューで提供。カフェ風の店内には木々に囲まれた中庭席があり、自然を感じながら料理を楽しむことができる。健康と癒しが店のコンセプトで、リニューアルしたばかりの2階席では、ハーブマッサージ店とのコラボ営業も始めた。
東京、中目黒の「韓流美食」は今年6月末にオープンしたばかりの新規店。マッコリとジョンを店の看板メニューに据えており、マッコリは41種類(カクテルを含むと70種類以上)、ジョンは盛り合わせも含めて22種類を揃えている。オーソドックスな牡蠣、白身魚、豆腐のジョンに加え、韓国の南西部にある光州市の郷土料理でもある牛肉のジョンや、カレー風味のジョンなど、珍しい種類も揃えているのが自慢。マッコリも含めて、その魅力をひと通り味わってみたいという人にはちょうどいい店だ。
マッコリブームが今後どれだけ拡大するかはわからないが、こうした背景の文化も一緒に伝わっているのは心強い。マッコリを飲む雰囲気や、マッコリに合う料理など。韓国人が愛してやまないマッコリの世界を、日本で体感できる環境は少しずつ整い始めている。
●マッコリの魅力
韓国国税庁の資料によれば、韓国から日本に輸出されたマッコリは、2008年が4891キロリットル、2009年は6157キロリットルとなっている。輸出量に対する国別の比率をみると、2008年が89.6%、2009年が83.2%と、実に8割以上を日本で消費している。日本国内で生産される銘柄も増えているため、実際の消費量はさらに多い。もちろん他の酒類に比べれば、まだまだ微々たる数字だが、少しずつ消費が拡大していく現状に関係者の期待は大きい。
●店舗データ(地図)
店名:ビソリ
住所:東京都渋谷区東3−20−1
電話:03−5778−2875
店名:韓流美食
住所:東京都目黒区上目黒3−1−4グリーンプラザ4階
電話:03−5794−8290
コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』、『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』、『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。
日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。