2010年12月29日
キムチサンド(ロックヴィラ)
刻んだキムチを挟んでいる(ロックヴィラ)
種類豊富なチヂミ(ちぢみ屋)
焼き立てを提供している(ちぢみ屋)
ピントクを巻いているところ(徳山商店)
刻み野菜は蒸してから包む(徳山商店)
JRの大阪環状線と近鉄大阪線の交わる鶴橋駅一帯には、焼肉店や韓国食材店が集まっている。大阪で韓国関連の店が集まるエリアといえば、この鶴橋駅周辺か、または鶴橋駅から1キロほどの距離にある御幸通り商店街(生野コリアタウン)が有名。最近は飲食店、食材店以外にも、韓流グッズやCD、DVDを扱う店も増えており、商店街という枠組みを超え、観光地としても注目されている。
実際に鶴橋駅周辺を歩いてみると、細い路地にずいぶん多様な店が集まっているのに気付く。キムチや韓国惣菜の店に始まり、韓国雑貨を扱う店や、あるいは韓服(ハンボク)と呼ばれる民族衣装の専門店など。そして軽食を扱う露店風の飲食店も多い。鶴橋は韓国関係のB級グルメが充実しているうえ、その中には鶴橋ならではという韓国料理も散見できる。ソウルや東京などとはまた違う、独特の韓国料理が味わえるのも魅力だ。
まず象徴的な料理として紹介したいのが、喫茶店「珈琲館ロックヴィラ」のキムチサンド。サンドイッチにキムチを挟むというユニークな発想が受け、14〜5年前から鶴橋名物として人気を集めるようになった。この料理を開発した店主の岩村瑛子さんは、「キムチをほんのり酸味が出るまで発酵させることと、水気をしっかり絞ることがポイント」と語る。ハム、キュウリ、卵といった定番の具に、刻んだキムチが加えることで、まったく新しいサンドイッチに生まれ変わる。マヨネーズを下地とした味付けに、キムチの味と食感が不思議とマッチしている。
もうひとつ、鶴橋でよく見かけるのが各種のチヂミ(韓国式のお好み焼き)である。専門店のひとつ「ちぢみ屋 豊山なみえの店」の店頭をのぞくと、韓国でも定番のニラチヂミ、ネギチヂミ、キムチチヂミなどに加え、大阪の食文化と融合したような、ネギタコチヂミ、スジコン(牛スジとコンニャク)チヂミがあった。また、アマダイチヂミや、ホッペ(牛の肺)チヂミといった珍しいチヂミもある。こちらはいずれも済州島にルーツを持つチヂミ。アマダイは済州島の特産品であり、また肺や肝臓を使ったチヂミは郷土料理のひとつ。大阪には済州島出身者が多く住んでいるため、韓国料理の中に済州島の食文化が多く溶け込んでいる。
御幸通り商店街に足を伸ばしてみると、こちらでもやはり済州島にルーツを持つ料理が見つかる。「徳山商店 洪家餅房」は伝統餅の店で、トッククと呼ばれる雑煮用の餅や、シルトクと呼ばれる蒸し餅などを扱っている。それとともに店頭で販売しているのがピントク(くるくる餅の意)と呼ばれる済州島の郷土料理。クレープのように薄く焼いたそば粉の生地で、千切りにした大根、ニンジンなどの具を巻いたもので、済州島では市場などでよく見かける。そば粉の香りがぷんと鼻に抜ける、素朴ながらも懐かしい味わいの料理だ。
いずれの料理も大阪、鶴橋だからこそ食べられる韓国料理。焼肉や家庭料理といった定番の韓国料理ももちろん楽しめるが、そこからもう一歩踏み込むことで、大阪と韓国の関係が背景として浮かんでくる。鶴橋のB級グルメはなかなかに奥が深い。
●韓国B級グルメの魅力
韓国の街を歩いていると、あちらこちらで屋台を見かける。これらの屋台ではキムパプ(海苔巻き)、トッポッキ(韓国餅の炒め物)、スンデ(腸詰め)、オデン(練り物を串に刺したおでん)、ホットク(蜜入りのお焼き)といった軽食類が販売されており、ふらっと立ち寄って小腹を満たすことができる。鶴橋周辺にもほぼ同様の料理を扱う店が軒を連ねており、韓国の街を散策しているような気分に浸れる。
●店舗データ
店名:珈琲館ロックヴィラ
住所:大阪府大阪市東成区東小橋3−17−23
電話:06−6975−0315
店名:ちぢみ屋 豊山なみえの店
住所:大阪市東成区東小橋3−15−11
電話:06−6981−4746
店名:徳山商店 洪家餅房
住所:大阪市生野区桃谷4−6−16
電話:06−6731−7090
コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』、『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』、『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。
日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。