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サムゲタンのアレンジ

2011年8月30日

  • 筆者 八田靖史

写真鶏と野菜が互いを引き立てる参鶏野菜鍋(宮) ※写真をクリックすると拡大します 写真西麻布の裏路地にある隠れ家的な店舗(宮) ※写真をクリックすると拡大します 写真2種類のスープが選べるけなりぃセット(vegeけなりぃ) ※写真をクリックすると拡大します 写真駅の構内にあって気軽に立ち寄れる(vegeけなりぃ) ※写真をクリックすると拡大します 写真参鶏湯と新発売の参鶏湯風スンドゥブ(丸大食品) ※写真をクリックすると拡大します 写真参鶏湯風スンドゥブの調理例(丸大食品) ※写真をクリックすると拡大します

 日本でもよく知られた韓国料理のひとつにサムゲタンがある。ひな鶏の腹にもち米や、高麗人参、ナツメ、ニンニクなどを詰めて煮込んだスープ料理。漢字では「参鶏湯」と書き、高麗人「参」と「鶏」肉の「湯(スープ)」という意味だ。ひな鶏を丸ごと食べるというボリューム感に加え、多くの漢方食材を使って煮込むことから、韓国では夏場のスタミナ料理として親しまれている。

 日本の韓国料理店でも定番料理のひとつであるが、昨今は提供する店が増えたことから、独自の工夫を持たせるケースも出てきた。海鮮や野菜など新たな具を追加する店、シェア用としてひな鶏ではなく大きな鶏を使用する店、牛骨スープを加えてさらなる濃厚さを求める店。サムゲタンを新たな解釈で見直し、アレンジを加える試みが始まっている。

 今年4月に東京、西麻布でオープンした「宮」は家庭料理から宮中料理までを幅広く用意するコリアンダイニング。サムゲタンを看板料理のひとつに掲げており、もち米に紅麹米を混ぜることで独特のコクと香りを加えている。また、オリジナルの料理としてサムゲタンに野菜を加えた「参鶏野菜鍋」も考案。従来のサムゲタンに白菜、長ネギ、春菊、ニラ、エノキダケといった具を加え、醤油、酢、赤・青唐辛子などを混ぜた特製ダレで味わう。それぞれの具を楽しむ喜びに加え、野菜の甘味がスープに溶け込むことで、サムゲタンの新たな魅力も引き出している。

 一方、サムゲタンをスープのベースとしつつ、個性的な具を足すことで新たな食べ方を提案する店もある。今年2月にJR品川駅構内でオープンした「vegeけなりぃ」は、サムゲタンやスンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋)をアレンジした、オリジナルのスープ料理を提供する店。鶏肉と高麗人参を煮込んだスープに米麺のビーフンを加え、サムゲタンヌードルに仕立てている。女性をターゲットに健康、美容といったイメージも強調し、ブロッコリーやパプリカ、ホウレンソウ、小松菜といった野菜を具にしているのも特徴のひとつだ。

 家庭で作れる韓国料理の素にも動きが出ている。2010年9月に丸大食品が発売した「参鶏湯」は、家庭で手軽に作れるサムゲタン用のスープ。スープだけを別売りにし、鶏モモ肉、長ネギと煮込み、ご飯を加え仕上げる商品だ。これに加え、今年9月からはサムゲタンのスープに鶏肉と豆腐を入れて味わう「参鶏湯風スンドゥブ」も発売予定。もともと丸大食品では辛口のスープに豆腐を入れて作る「スンドゥブ」を販売しており、イメージとしてはその両者を掛け合わせた形だ。

 いずれの試みも、本場韓国ではまず見かけないようなスタイル。サムゲタンという料理が日本でも認知されてきたことで、こうしたアレンジが生まれるようになったのだろう。そして、こうした変化は他の料理にも充分起こり得る話。韓流以降、伝えられてきたさまざまな韓国料理が、今度どのように進化していくのかも楽しみである。

●韓国のサムゲタン事情

 韓国でよく見るサムゲタンのバリエーションとしては、ウコッケイのひな鶏を使用したオゴルゲタンや、ウルシの木と一緒に煮込んだオッケタンなどがある。また、漢方食材をより多めに用いたものをハンバン(漢方)サムゲタンと称することも多い。具を追加する例では海鮮食材を用いることが多く、アワビを入れた贅沢なサムゲタンや、貝、エビ、テナガダコなどを入れた海鮮サムゲタンも見かける。

●店舗データ地図

店名:宮(KUNG)
住所:東京都港区西麻布1−7−11霞ハイツ1階
電話:03−6459−2696

店名:Vegeけなりぃ ecute品川South店
住所:東京都港区高輪3−26−27JR東日本品川駅構内
電話:03−5421−8009

社名:丸大食品株式会社
住所:大阪府高槻市緑町21−3
電話:0120−338−845 (お客様相談室)

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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