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ケランパン

2012年3月28日

  • 筆者 八田靖史

写真具のアレンジにも力を注いでいる(新・大久保わくわく広場) ※写真をクリックすると拡大します 写真生地がなくなった段階で販売終了(新・大久保わくわく広場) ※写真をクリックすると拡大します 写真入口脇にテイクアウト用の窓口がある(新・大久保わくわく広場) ※写真をクリックすると拡大します 写真上部がふくらんだ形のケランパン(La*Pain) ※写真をクリックすると拡大します 写真ひとつひとつ型に入れてオーブンで焼く(La*Pain) ※写真をクリックすると拡大します 写真渋谷の道玄坂小路にワゴン車が出ている(La*Pain) ※写真をクリックすると拡大します

 韓国の町を歩くと、雑踏に溶け込んでたくさんの屋台が目に入る。繁華街の四つ角、大通り沿いの歩道、地下鉄の出口など、わずかなスペースにさまざまな屋台料理が並ぶ。簡易的な椅子が用意されているところもあるが、その場での立ち食いだったり、あるいはテイクアウト専門のところも多い。アツアツのホットク(蜜入りのお焼き)や、プンオパン(タイ焼き)をかじりつつ、町を散策するのも楽しい。

 筆者がソウルに留学していた90年代末。街角でよく手を伸ばした屋台菓子にケランパンがある。ケランは漢字で「鶏卵」と書いて卵のこと。直訳すると「卵パン」だ。見た目は今川焼きにそっくりだが、中にアンコの姿はなく、かわりに目玉焼きがひとつ入っている。最初は驚いたが、食べてみるとこれが意外に合う。生地のほのかな甘みと、うっすら塩味を効かせた卵の濃厚な味わい。街角で手軽に買えるのも手伝って、あっという間にファンになった。いまでも韓国に行くと、ふと食べたくなって探してしまう。

 そのケランパンが最近、東京でも食べられるようになった。やはりというか、最初に登場したのはコリアンタウンとして知られる新大久保である。数年前までは新大久保でも、韓国式の屋台菓子といえば前述のホットクぐらいだったが、最近は屋台そのものが増えて競争が激化している。それに伴って料理のバリエーションも多様化してきた。

 ケランパンの提供を始めたのは、昨年11月にオープンした「新・大久保わくわく広場」。路地に面してテイクアウト専用の窓口があり、またカフェ風の店内でも味わえる。担当のソン・ミンヨンさんによれば、「発売当初こそ知名度がなかったが、少しずつテレビや雑誌にも取り上げられて、いまは土日に行列ができるほど」とのこと。1日に400個を販売する日もあり、ときには製造が追いつかないこともあるようだ。12月からはチーズ入り、スパム入りのオリジナルケランパンもメニューに加え、韓国にもない新たな味わいにも挑戦している。

 東京、渋谷でフレンチトーストをワゴン車販売する「La*Pain」でも、4月1日からケランパンの販売を始める予定だ。店長の小島健一さんは3年前にソウルでケランパンに出会い、「この素朴な魅力を日本でも伝えたい」と思うに至った。昨年12月には新大久保でも1ヶ月間営業し、好評を得たのもきっかけのひとつ。車内に設置したオーブンを使い、ぷっくりふくらんだ形のケランパンを作る。時間が経っても美味しく味わえるよう、グルテンの多い小麦を使用するのもこだわりだ。

 韓国におけるケランパンの歴史をひもとくと、オバントク(今川焼き)や、クッカパン(菊の花型のアズキ餡入り焼き菓子)と呼ばれる屋台菓子にたどりつく。これらはもともと日本から伝わって韓国で広く定着したもの。それが時代を経るにつれて少しずつアレンジが加えられ、ケランパンのような食べ方が誕生した。それがまた今日、韓国料理として日本に伝わってくるというのは、文化的にも物理的にも両国の近さを象徴しているように思える。

●韓国屋台菓子の魅力

 日本に入ってきた韓国屋台菓子のひとつにホットクがある。黒砂糖の蜜を入れたお焼きのことで、韓国では冬場の風物詩として親しまれている。東京の新大久保には、このホットクの屋台があちこちにあり、コリアンタウン名物として韓国ファンに好まれている。最近は種類も増え始め、韓国ではまず見かけない、チーズ味、キムチ味、チョコレート味なども登場するようになった。日本におけるさらなる進化が垣間見えるのも面白い。

●店舗データ地図

店名:新・大久保わくわく広場
住所:東京都新宿区大久保1-12-15
電話:03-5272-0909
http://www.ehiroba.jp/

店名:La*Pain(ラ・パン)
住所:東京都渋谷区道玄坂2-25-16
電話:080-4163-1511
http://www.facebook.com/shibuyafrenchtoast

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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