写真・図版 5月18日、ガーナの首都、アクラのマムプロビ・クリニックの屋内は、はしかの予防接種を待つ子どもとその母親で大変な混雑となっている。写真は11日、ガンビアの首都バンジュールで、新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける男性(2022年 ロイター/ Ngouda Dione)

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 [ダカール(セネガル)/アクラ(ガーナ) 18日 ロイター] - ガーナの首都、アクラのマムプロビ・クリニックの屋内は、はしかの予防接種を待つ子どもとその母親で大変な混雑となっている。一方、屋外に設けられた新型コロナウイルスのワクチン接種エリアでは閑古鳥が鳴き、担当者が椅子にもたれてタブレット端末をスクロールしている。

 娘に予防接種を受けさせようと訪れたある母親は、はしかの怖さを熟知している。高熱、発疹、視覚に影響が出るリスク──。だが、周りで新型コロナにかかった人を1人も知らない。

 新型コロナが大きな脅威をもたらさないというのは、アフリカ全土で共通した認識だ。アフリカの平均年齢は低く、感染してもごく軽症ですむことが多い。高齢者を中心に新型コロナの直撃を受け、ワクチン接種の普及につながった欧米のような地域とは違う。

 「(ワクチン接種を受けるのは)常識だと聞かされているけれど、接種したのに未だにロックダウンしている他の国々をどう考えるべきか」とアクラの建設労働者、ナナ・クワク・アッドさん(28)は疑問を口にした。

 人口13億人のアフリカ大陸で、新型コロナワクチンの接種を終えた割合は17%にとどまっている。その一因は、世界的にワクチン需要がピークに達してアフリカ諸国も供給を切望していた昨年、先進諸国がワクチンを抱え込んだことにある。

 今になって、ようやくアフリカ大陸に大量のワクチンが到着しているが、接種率はむしろ下がっている。世界保健機関(WHO)のデータを見ると、2月には接種回数が前月比23%増加したものの、3月は35%減って帳消しになった。

 新型コロナに対する恐怖が薄れた上、ワクチンに関する誤情報も広がっている。

 マムプロビ・クリニックの新型コロナ・チームリーダー、クリスティナ・オデイ氏は接種率の低さについて「ワクチンがもっと早く届いていたら、こんなことにはならなかっただろう。当初はだれもが本当に欲しがっていたが、ワクチンが無かった」と振り返る。

 公衆衛生の専門家は、これだけ大勢の人々がワクチン未接種のままだとアフリカ大陸で新たな変異株が出現し、欧州などの地域に広がる可能性があると懸念する。欧州各国などでは、マスク着用義務や渡航制限が解除され始めているところだ。

 実際、南アフリカでは過去数週間中、オミクロン株に新たな変異が加わった株が2種類見つかり、当局は感染第5波を警戒している。

 とは言え、感染率が低いアフリカにおいて、それ以外の国々を守るために新型コロナワクチンの接種を優先しろと言うのは「虫が良すぎる」と、ワクチン普及活動団体「ピープルズ・ワクチン・アライアンス」のアフリカ責任者、ラハブ・ムワニキ氏は話す。

 さらに「『あなたがたは助けてくれなかったじゃないか』と多くの人々は言っている。先進国は全然支援してくれなかったと感じている」と語った。

 ムワニキ氏自身は、アフリカの人々も自らと他の人々を新変異株から守るためにワクチン接種を受けるべきだと考えている。

 一部のアフリカ諸国は、接種率を上げるために医療チームが村々を訪れるなどの「移動作戦」を行っている。しかし多くの国々は、そのために必要な自動車や燃料、ワクチンの冷蔵装置、給与などの財源を欠いているのが実態だ。寄付もなかなか届かない。

 <インフレの方が深刻>

 多くのアフリカ諸国は長年、死に至る疾病とつきあってきた。結核には毎年数百万人がかかってしまう。マラリアでは毎年数十万人が命を落とし、その大半が5歳未満の子どもだ。コンゴ民主共和国では繰り返しエボラ出血熱が流行している。

 西アフリカ地域は現在、紛争や干ばつに加え、ウクライナでの戦争に起因する食品価格の高騰が災いし記録上、最悪の食料危機に見舞われている。

 アフリカの多くの人々にとって、高齢者の方がはるかに重症化・死亡リスクの高い新型コロナは差し迫った問題ではない。米ピュー・リサーチ・センターによる国連データの分析によると、アフリカの年齢の中央値は20歳と、世界で最も低い。欧州の43歳、北米の39歳の半分程度だ。

 アクラのビジネスマン、マウレさんは「質問させてほしい。今現在、ガーナで最大の問題は新型コロナだろうか。燃料が買えなくて苦しんでいるインフレよりも大きな問題だと思うのか」と問いかけてきた。

 アフリカ大陸では今、新型コロナのワクチンが余っている。接種会場は空っぽで、未使用のワクチンの小瓶が何百万個も積み上がっている。アフリカで早くからワクチン製造に乗り出した企業の1つは、受注待ちの状態だ。

 マムプロビ・クリニックでは黄色いベストを来た医療従事者のチームが、積極的に接種を働きかける作戦に打って出た。露店の並ぶ市場を歩き、いぶかしげな顔の買い物客に「接種はいかがですか」と聞いて回るのだ。ワクチンの入ったクールボックスを肩から下げたスタッフもいる。

 しかし炎天下で1時間歩き回った挙げ句の成果は、たった4回の接種だった。

 <誤情報と資金不足>

 アフリカでは過去に、大手製薬企業が怪しい臨床試験を行って死者を出した事例があるだけに、ワクチンを巡る誤情報の拡散を抑えるのは難しい。医療従事者は、間違ったうわさに対抗するには対策資金が必要だと話す。

 また、ガーナ、ガンビア、シエラレオネ、ケニアといった国々は移動接種キャンペーンを行っているが、財政はひっ迫している。

 ガーナで新型コロナワクチン普及を担当するジョゼフ・ドウォモル・アンクラー氏は「もはやワクチンの数には何の問題もない。問題は人々に接種を受け入れさせることと、そのための資金だ」と語った。

 (Edward McAllister記者、 Cooper Inveen記者)