現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. ニュース
  3. 国際
  4. ロイターニュース
  5. 記事

焦点:変わる中国の労働環境、安価な人件費は遠い過去へ

2012年4月4日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

4月4日、米アップルがフォックスコンと労働環境の改善に取り組むことで合意したことは、中国がもはや「世界で最も安価な生産拠点」でなくなりつつあることを明確に示している。写真は上海の工場ではたらく女性従業員。1月撮影(2012年 ロイター/Carlos Barria)

 [台北 4日 ロイター] 米アップルは「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」の生産を委託する富士康科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)との間で、労働環境の改善に取り組むことで合意。このことは、中国がもはや「世界で最も安価な生産拠点」でなくなりつつあることを明確に示している。

 今回の合意は、独立系労働監視団体である公正労働協会(FLA)から、アップルの製品は中国労働者の犠牲の下に生産されていると指摘されたことを受けたもの。同協会はフォックスコンの3工場で働く3万5000人以上の労働者に対する調査に基づき、極端な長時間労働や残業代未払いなど、労働法に反する行為が行われていると指摘していた。

 合意の下、フォックスコンは、数万人の従業員を新たに雇用し、不法な残業をなくすほか、安全手順の改善や従業員の住宅、その他の設備の刷新を行う。

 アップルなどにタッチパネルを供給する台湾企業、勝華科技(ウィンテック)<2384.TW>のジェイ・フアン最高財務責任者(CFO)は、「中国で低コストと安い労働力が確保できる時代は終わった」と指摘。安価な製品はこれまで、中国労働者の生活を犠牲にした上で成り立ってきたとした上で、「しかし、現在では労働環境の改善が必要だと誰もが考えている。道徳意識を持ったメーカーとして、われわれは労働環境の改善に取り組まなければならない」と語った。

 <労働者側に選択肢>

 現在の中国経済や政策の方向性をみると、労働者は以前に比べ強い立場にいることが分かる。労働力不足や2桁台の賃金の伸びを背景に、労働者はこれまでよりも多くの選択肢を持ち、より高額な報酬が得られる仕事があればそれに飛びつく可能性が高い。

 中国政府は国内の格差拡大を抑えるため、地方からの出稼ぎ労働者の賃上げを行う方針を明らかにしている。これを受け、多くのメーカーは低コストを維持するため、さらに内陸部へと拠点を移転させている。

 <賃金上昇の負担者は>

 米調査会社のIHSアイサプライによると、1台当たり600ドル(約4万9500円)で売られる「iPad2」の場合、部品コストは300ドル以下で、製造コストはほぼ10ドルとなる。つまり、フォックスコンが受け取るのは小売価格のわずか2%以下ということだ。

 台湾のパソコン(PC)受託メーカー、和碩聯合科技(ペガトロン)のチャールズ・リンCFOは、中国での労働環境改善は「社会的な問題」だとし、受託生産者側だけが負担を負うべきでないと強調。「受託メーカーは改善に取り組めるようになる前に、それに十分な利益を確保する必要がある」と述べた。

 HPのメグ・ホイットマン最高経営責任者(CEO)は、中国における賃金上昇が、最終的に世界のエレクトロニクス業界に波及効果をもたらすと見込む。

 同CEOは2月のインタビューでロイターに対し、「富士康の人件費が上昇すれば、製品の納入価格も上昇するだろう」と指摘。「ただ、それは業界全体の問題であり、どのくらい消費者に転嫁できるのか、またどのくらい自社で吸収できるのか、われわは決断を迫られることになる」と述べた。

 KGI証券のアナリスト、ミン・チークオ氏は「市場では、フォックスコンの今回の賃上げはアップルが負担するとの見方がある」と指摘。アップルは「環境に配慮する企業」とのイメージを重要視していることから、「賃上げ負担はマーケティング費のようなものだ」と語った。

 中国では社会的セーフティーネットが十分に整っていないため、多くの労働者にとっては賃金が命綱になる。労働環境が優れていなくても、労働者は残業が多い仕事を引き受ける。

 中国南部にあるフォックスコンの工場で働くチェン・ヤーメイさん(25)は、「ここには仕事をするために来た。遊びに来たわけでない」とコメント。「だから収入は非常に重要」だとし、労働環境に不満はないと述べた。

 (原文:Clare Jim and Jonathan Standing、翻訳:本田ももこ、編集:宮井伸明)

ロイタージャパン ロゴ
ロイタージャパン

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介
  • 中国特集