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猫ちぐら 作り手いませんか

2007年07月15日

 暑い時は涼しさ、寒い時は暖かさを求めるのは人も猫も同じ。ワラで編み込まれた猫の住み家「猫ちぐら」に主(あるじ)は喜んで入り込む。地の名産品として売り出そうと、関川村で「猫ちぐらの会」が結成されて22年。新聞やテレビで紹介され、全国からの注文はやむことがない。一方で作り手の減少や高齢化で、受注から発送まで半年もかかる問題を抱える。同会では製作実演などを試み、新たな作り手探しに懸命だ。

写真  
写真縦と横に束ねたわらを編み込んでいく

 ワラで編み込まれた釣り鐘型のつづらに、ポッカリと空いた大きな口。猫の出入り口だ。

 この4月、「猫ちぐらの会」に、ちぐらの中に入った猫の写真が添えられた手紙が送られて来た。口からは目を閉じたトラ猫の顔がのぞく。

 「留守中に入って眠っているのに気づきました。中はよほど心地よいのでしょうが、私が居るときは入りません」。後段には、感謝の言葉が続いていた。

 同会の佐藤利男会長(75)は「喜んでもらえるのが何よりうれしい。指先を動かしてるとボケ防止にもなるし、死ぬまで元気で作りたいね」。ガハハッと笑った。

 狭くて暖かい場所を好むのが猫の本能。複数の猫を飼っている家では、ちぐらを巡ってツメを立ててケンカになることも。ちぐら内では、目を閉じてゴロゴロとのどを鳴らし喜ぶ猫も多いという。

 ちぐら作りには、形の良いコシヒカリのワラ20束が選別して用いられる。実をつけたワラを自然乾燥させた後、ローラーにかけて柔らかくして使う。

 「一番最初のお尻の部分が難しい」と話すのは本間政利さん(78)。最初に針金で輪を作り、ワラの束を通して縦と横に編み込んでいく。底ができた後は編み上げていき、口の部分で束を折り返し竹のクシを入れて固定。てっぺんまで編み上げた後、煙で2、3時間燻(いぶ)す。わらに虫が入らないようにするためだ。

 「勘が命」の作業には手作りの味が出てくる。「編み目が雑だったり、上がとがっていたり。名札が無くても誰が作ったか分かる。一つとして同じものはできないのが魅力」と、関川村自然環境管理公社の伊藤マリさん(59)は言う。

 猫ちぐらの着想は、かつて農家で赤ん坊の子守に使われたワラ製ゆりかご「ちぐら」から。関川村では「つぐら」と呼んでいたという。80年ごろ、わらで編んだ食器入れに猫が入っているのを見た故・本間重治さんが、炉辺で父親がちぐらを編んでいたのを思い出したのがきっかけだ。

 最初は、国指定重要文化財の豪農の館「渡辺邸」に飾っていたが、82年に村の観光土産品の掘り出し事業などにより村主催の物産展に出品。ペットブームも重なって評判となり、新聞やテレビで全国的に紹介された。東京の百貨店で実演し、村もパンフレットを作ってPR。多い時には年間1000個以上の注文があったという。

 一方で、ちぐら作りの技能を持った会員は高齢化が著しい。90年に52人いた会員数は、昨年7月までに20人に減少、65歳から75歳の高齢者が中心だ。1個を完成させるのに2週間掛かることから、大量生産は困難という。

 関川村上関の「道の駅・関川」に5月、地域文化交流施設「ちぐら」が完成。地元産品の販売のほか、猫ちぐらの製作実演を行って、訪れる人に見てもらうのが目的だ。伊藤さんは「器用さが必要で誰でも作れるものではないが、会社を辞めた団塊の世代の人たちに習ってもらえたら」と期待している。

 〈猫ちぐら〉 飾り用の「ミニ」(底の直径20センチ、高さ16センチ)から、猫用の「特大」(底の直径45センチ、高さ38センチ)まで数種類の大きさがある。猫用は1万2000円から。問い合わせは「関川村猫ちぐらの会」(0254・64・0252)へ。地域文化交流施設「ちぐら」の製作実演は、土、日曜と祝日。ワラ製品には円座や、おひつ入れなどもある。

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