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「空の境界」がアニメ化 原作者の奈須きのこさんに聞く

2007年09月13日

 小説「空(から)の境界」(講談社ノベルス)が、長編映画7部作という異例のスケールでアニメ化される。うつろな心を抱え、怪異をナイフで断つ少女の物語。同人小説として発表したこの作品でプロデビューを果たした原作者、奈須きのこさんにインタビューした。(アサヒ・コム編集部)

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映画「空の境界 第一章 俯瞰風景」イメージビジュアル。相次ぐ飛び降り自殺の謎に式が挑む。公開は12月1日 (C)奈須きのこ/講談社・アニプレックス・ノーツ・ufotable

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「空の境界」に登場するキャラクターたち。式(中央)は着流しに革ジャンという独特のいでたち

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「空の境界 第二章 殺人考察(前)」 高校生だった16歳の式と幹也が出会う物語。12月29日公開

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「空の境界 第三章 痛覚残留」。見るものすべてをねじ曲げる能力を持つ少女と、式が対決する。 08年1月26日公開

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小説「空の境界」上巻。式の服について奈須さんは「コンセプトは和洋折衷。和服の美しさに、それをぶち壊すくらいのものとして革ジャンをぶつけた」

 事故による2年の昏睡(こんすい)から目覚めた少女・両儀式(りょうぎ・しき)は、記憶の一部と引き換えに「直死の魔眼」を得る。万物の生のほころび、「死線」が見える特異な能力を用い、式は、元クラスメートの黒桐幹也と共に様々な怪異を追う。

 98年にウェブ上で発表され、01年に同人小説として刊行、04年に講談社から出版された。

 「90年代前半という時代を覆っていた『未来が見えない』感覚が反映されていると思う。自己が不確かで『個』のない人間は、どう生きればいいのか。日常からはみ出した人間を、日常の側の人間がどう癒やすことができるのか。そんなテーマを考えていた」

 エピソードの並びが時系列順でなく、語り手が細かく切り替わる異色の構成。パズルのピースがはまるような快感にたどりつくには、多少の読みづらさを我慢しなくてはならない。

 「読む人に高い理解力を求め、ある意味、親切ではない。人によっては悪意と感じるかも。書き手のエゴであり、若さ故の暴走ですが、あのころの自分にしか書けない凝縮されたものが詰まっていると思う」

 映画は、原作通りの順番で7章を7部作に。12月から順次公開する。

 「劇場に行くというのは、それだけで一つの行動。それを越えてきた観客は、高い集中力を持って見てくれるはず。加えて映像のクオリティーが高ければ、やる意味がある挑戦です。現時点で出来上がっている映像を見ましたが、文句なし。こちらのイメージ以上です」

 新作「DDD」2巻もベストセラー入り。同人活動を出発点とするゲーム創作集団「TYPE―MOON」のシナリオ担当としても、ヒットを飛ばす。同人活動からヒットメーカーに。若者らにとってはあこがれの存在だが、苦笑いしながら言う。

 「好きなことを仕事にしてはいけません――と、大きな声で言いたい。仕事にしたらそれは『好きなこと』ではなくなる。でも、夢をかなえた後で、この夢まちがってました、なんて言えませんよね」

 書くことも、読むことも、プロになる前とは違ってしまったという。

 「書くことについては常に疑心暗鬼。こんなの読者が求めているのか、これを書く意味があるのか。『自分が楽しければいいや』では済まなくなったが、その代わり多くの人に読んでもらえる。プラスマイナスゼロですね」

 読み手としても、気楽な一ファンではいられない。

 「読んでいて、書き手の勢いとあきらめが感じ取れる時がある。作り手の事情が透けて見えて、変なところで感動したり怒ったりして」

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