どうしたら少子化を食い止められると思いますか?――そんな質問をよく受ける。「個人的な考えですが、」と前置きし、「子どものいる生活が憧れとなるような情報の露出や身近なところにいる働く母親たちの幸せな姿に触れる機会、そして、たとえば週末など街を歩いたときに、ふと、子ども連れの家族を見て良いなあと思う瞬間の積み重ね、そんなことの組み合わせではないか」と答えることが多い。つまり、プラスの情報提供を増やすことだ。
子どもは、仕事にプラスの影響!
今回のイー・ウーマン調査は、とても興味深い。現在、すでに子どもがいる「働く母親」と、今はまだ子どもはいない「働く女性」とで、子どもを持つことの意味がプラスとマイナスに2極分化しているからだ。
働く母親は、51.6%が「子どもを産むことは、自分の仕事にもプラス」と答え、「2〜3人は産みたい」と言っているのに、これから産む女性たちのほとんどが、「きっと子どもは仕事にマイナス。産みたいけど、1〜2人」と考えている。
その理由は明確。メディアから聞こえてくることが、「家族の崩壊」「子育ての大変さ」「職場での不理解」ばかりだからだ。メディアの送り手は、たいていが大変古い組織に属している。その上、報道とは弱者の立場にたって問題を提起する、という使命がある。だからある意味当然のごとく、物事のマイナス面や今後の課題ばかりが取り上げられる。子どもをまだ持たない女性たちは、それらのマイナス情報の過多になっているのだ。
制度の充実を。子育ては乳幼児だけじゃない
制度面での充実も大切だと思う。保育園の質を高めること、保育園の数を増やすこと、ベビーシッターの数、家事手伝いサービスの充実、育児休暇の充実、休暇後の職の確保などいろいろある。保育園も、自分の子どもを行かせるとなるとさまざまな条件をつけてしまう。1日9〜12時間くらい、6年間通う場所。人生の基本概念を身につける最大の場所といってもいい。それが、駅ビルでいいのか? などと追求し始めると質や量への欲求には限りがない。
一方で、仕事と育児というキーワードで話し合われるのは、いつも乳幼児のことのように思う。しかし、子育ては小学校入学で終わるわけではない。むしろ、そこからはもっと「親」の存在が必要になる。6歳までは保育園やシッターさんなどの手をお借りしながらも、何とか物理的な部分を補っていくことができるが、小学校に入学すると、今度は意識のしっかりした子どもを相手に、親としての教育を毎日続ける必要が出てくる。もちろん、学校行事も多い。中学になれば、心が成長し社会との接点も増える。ここでも親が近くにいる必要がたくさんある。働く親をふやすためには、小学生、中学生の子どもたちを持つ親への支援も、しっかり制度面で支える必要があるだろう。
たくさんのサンプルに出会う
しかし、何より大切なのは、「楽しそうな働く母親」「楽しそうな働く父親」にたくさん出会うことだろう。子どもの話は禁句などという会社体制では、ダメだ。子どものことを自慢する親。子どもとの時間を大切にする親たちの日常に触れること。これが「わたしもここで仕事をしながら産めるかもしれない」と感じさせるのだ。
「国際女性ビジネス会議」も、「イー・ウーマン」も、生の事例に出会って欲しくて開催している。お腹の大きいビジネスウーマン、子育てを楽しんでいるエグゼクティブなど、たくさんの女性に会うことで、「わたしもできる」「プラスなのかも」と感じさせるのだ。
わが社は「子宝会社」といっている。社長に子どもがいるから、というのもあるだろうが、みな、次々と出産する。働く母親のほうが、専業主婦より出生率が高いというデータが日本を含む各国で出ていると報道されるようになった。もっともっと、そのようなデータが出て、メディアからも笑顔の家族がたくさん露出することを願っている。
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