日本でトップの最高学府で教壇に立ち、全国から集う優秀な学生を指導し、行政や政治、経済など各界で活躍する人材に育てる知性と権威の象徴――。そんな「東京大学教授」の肩書を、定年を前に捨ててしまう人が相次いでいる。この春も、学界やメディアで名をはせた教授が複数、大学を後にした。東大の魅力が色あせてきたのだろうか。
■改革で「余裕」なくす
「東大教授」の肩書を持つ人は、千人以上いる。東大など国立大学法人が毎年度公表している「役職員の報酬・給与等について」によると、2010年度の東大教授は1271人で平均年齢は55・5歳、年間の平均給与は1165万7千円だ。歴史が古く研究実績も全国の大学でトップクラスの東大や京大など旧7帝大の中で比べると、東大が教授の人数が最も多く、平均給与も最も高い。
また、大学全体の年間予算も10年度は2066億8千万円で、旧7帝大で最も多い。高給、豊富な資金に恵まれながら、それでも辞めてしまう理由は何だろう。
「東京大学がかつてもっていた輝きが失われてしまった」
大物政治家と対談するテレビ番組の司会を務め、東日本大震災復興構想会議では議長代理を任された御厨貴さんは、今年3月、先端科学技術研究センター(先端研)から放送大学に移ったきっかけの一つをそう話す。「学問、夢のある研究をするためには、無駄や余裕が必要。かつての東大はそういうものを大切にしていたのに、今はあくせくしていて、まったくなくなった」という。
「輝き」を失わせた要因は、近年の「大学改革」と御厨さんはみる。