「認知症と運転」(2016/6/7)

　６５歳以上の認知症の人は２０１２年時点で４６２万人、２０２５年には７００万人、高齢者の５人に１人になると推計されています。「認知症と運転」の問題は誰もが当事者になりうる切実な問題です。
　道路交通法では、認知症であるとわかった人は免許取り消し・停止の対象となります。自主的に免許を返納する仕組みもあります。しかし本人が運転中止や免許返納を強く拒む場合の対応は現実には難しく、苦悩する家族が少なくありません。運転は単なる移動手段ではなく、その人の尊厳や生きがいに結びついています。
　２０１４年に死亡事故を起こした７５歳以上の運転者のうち、事故前に認知機能検査を受けていた人は４３８人。その約４割は記憶力・判断力が「低い」「少し低い」と判定されていました。子どもを巻き込む重大な事故も発生しています。
　１５年６月に道交法が改正され、認知症対策が強化されました。今でも７５歳以上のドライバーは３年に一度の免許更新時に記憶力などを調べる認知機能検査を受けることになっています。改正により、検査の３段階の判定のうち、最も能力が低下した「１分類」と判定された人は、すべて医師の診断を受けなければいけなくなります。現行法では、１分類と判定されても、信号無視などの交通違反をしなければ診断を受ける必要はありませんでした。さらに改正後は、免許更新時だけでなく、特定の違反をした人にも認知機能検査が義務づけられます。改正道交法は来年３月に施行される見通しです。
　こうした法規制のあり方については、さらなる規制強化を求める声がある一方、「特定の病名をあげて運転を制限するのは差別だ」という批判もあります。

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