国内では年間に１００万人を超す人が、新たにがんと診断されていると推計されています。かつては治らない病気というイメージが強くありましたが、新しい治療薬の開発や安全な手術の確立といった医療の進歩によって、がん全体の５年生存率は上昇傾向にあります。２００８年までの３年間にがんと診断された患者の５年生存率は、６割を超します。
　新たにがんと診断される人のうち、３人に１人は２０～６４歳の働く世代です。１６年の厚生労働省の調査によると、仕事をしながら通院するがん患者は、約３６万５千人いました。その一方、１３年の厚労省研究班の調査では、がんと診断された後に依願退職や解雇などで離職した人が約３割に上っています。治療と仕事の両立が難しい状況が浮かびました。
　国は、がん対策の基本的な指針「がん対策推進基本計画」をつくり、がんを取り巻く環境をよくしようとしています。１２年度からの第２期計画の重点課題に「働く世代へのがん対策の充実」が加わりました。現在の第３期計画の柱の一つは「がんとの共生」。就労支援の推進などを盛り込んでいます。
　がんになっても仕事を続けることを、社会も企業もさらに後押しすることが求められています。ですが、がんという病気への誤解や恐れもあり、患者が周囲にがんについて伝えたり相談したりしにくい空気も残っています。伝えられて戸惑う人もいるようです。患者側を傷つけたり不安にさせたりしないような配慮が必要です。

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