(質問)自然の中での散骨に関心があります。どこに頼めばいいのか、いくらぐらいかかるかなど、詳しく教えて下さい。
◇
関東地方に住む50代男性は、亡くなった母の生前の希望に従って散骨しました。父は存命ですが、認知症が進んでいて十分な相談はできませんでした。予期しなかったのは、親戚の反発です。父方の親戚は、先祖代々のお墓に入らないことへの不満をぶつけてきました。母方からも「散骨では成仏できない」との声が出ました。それ以来、親戚付き合いがぎくしゃくしてしまったそうです。
散骨はどこでもできるわけではありません。家の庭などで勝手に散骨すると、近隣とトラブルになったり、地域の農水産物への風評被害を招いたりする恐れもあります。実績がある専門業者や葬儀社に相談するのが安心です。
散骨の場所としては、お寺の敷地内やお寺が管理する山、それに海、空、宇宙などがあります。遺骨を粉状の遺灰にし、人が集まる海岸や漁場などを避けてまきます。
海への散骨は「海洋散骨」と呼ばれ、船で散骨地点まで移動します。水に溶ける袋に入った遺灰をそのまま海に入れるか袋から出してまき、その後、花を手向けて供養します。数組の遺族が合同で行ったり、業者が散骨を代行したりするものもあります。
山への散骨は、所定の場所で散骨するものもあれば、遺灰を皿に盛って風にのせてまくものもあります。僧侶が同行し、読経しながら行うことも多いようです。
空への散骨は、ヘリコプターなどをチャーターして海上を飛び、遺灰をまきます。もっと高い成層圏での散骨も可能です。直径1.5~2メートルほどのバルーンに遺灰を入れて空に放ち、高度30キロ付近でバルーンを割ってまきます。
また、最近は宇宙での散骨もできるようになりました。「宇宙葬」と呼ばれ、カプセルに遺灰数グラムを納め、海外からロケットで宇宙へ打ち上げます。人工衛星に搭載し地球を回るもの、月面へ着陸するものなどもあります。
遺骨はすべてまく必要はありません。手元に遺骨が残らないと、家族は心のよりどころを失ってつらい思いをするかも知れません。家族とともに散骨を実際に見学し、模擬体験もしたうえで決めるのが望ましいと思います。
遺骨を手元に残すため、ネックレスや数珠に加工したり、遺灰を小さなオブジェやミニ骨壺(こつつぼ)に入れたりするなど、さまざまな「手元供養品」もあります。いつでも故人を近くに感じられるのがいいところです。
ただ、身につける手元供養品は、紛失には注意する必要があります。また、ほかの遺族から「遺骨の独り占め」といった不満が出る恐れもあるので、事前によく相談しておきましょう。
いつか故人本人を知らない世代が引き継ぐ日が来ることも考えておいた方がいいでしょう。処分する時期をあらかじめ決めておくと、行き違いがありません。=全10回
(2016年9月5日付け朝日新聞朝刊「Reライフ」面)
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明石久美 ファイナンシャルプランナー。相続・終活セミナー講師。著書に「家族が亡くなる前にやっておくべきこと」など。
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