<連載> ギミック・ジャケットの世界

ずらして 飛び出て ジャジャジャジャーン

植村和紀のギミック・ジャケットの世界(5)

2017.12.01

 「ギミック・ジャケットの世界」の5回目は、ギミック・ジャケの真骨頂といえる可動式のスライド・ジャケ7点です。スライド・ジャケは、デザイナーの遊びゴコロを最も発揮できるもので、ユーザーにとっても手にとって動かすことで色々と楽しめます。印刷的には型抜き加工なので経費がかかりますが、それを凌駕するインパクトと記憶に残るギミック仕様がジャケのクオリティーを高めます。アナログLPならではの遊びゴコロを堪能してください!


飛び出すギター
 SIX STARINGS NINE LIVES / WALTER ROSSI (AQUARIUS 1978)

ギター折りたたみ
ギター全展開

 「カナダのロイ・ブギャナン」と言われた豪腕ギタリスト、ウォルター・ロッシの2作目。ミシン目の入ったジャケを切り取り、三つ折りになった部分を広げると全長約90センチのレスポール型のギターになる仕掛けです。裏に本人のサインも入っているほどかなりリアルなものに仕上がっており、ギター・ジャケとしては極めてレアな逸品です。

ウィンクの方法
 SWEET / GIVE US A WINK (RCA VICTOR 1976)

片目をつぶる
目つぶりジャケットの裏側

 英国グラム・ロック・シーンで活躍したスウィートの5作目。インナー・スリーヴを目いっぱい引き出すと通常の目になりますが、これを5段階で少しずつ下げてスライドさせていくと次第に目が閉じられて、何とも妖艶なウィンクになる仕掛けです。バック・カバーにもくりぬかれた小窓があり、小窓からのぞくポスターが、作詞・作曲者や楽器ごとの演奏者一覧に変わります。表と裏の両方で楽しめる優れものです。

お薬天国
 CHEECH & CHONG / SLEEPING BEAUTY (ODE 1976)

赤いカプセル
カプセルから舌が出る

 米国コメディー・コンビ、チーチ&チョンの5作目。「薬に頼っても十分な睡眠をとって美しくなりたい」という米国の薬依存社会を痛烈に風刺した本作は、カプセルの変形ジャケをスライドさせていくと薬を乗せた舌が出てくる驚きの仕掛けです。このお笑いコンビのLPの大半がギミック仕様になっており、ジャケットでも楽しませてくれますが、彼らの存在自体もまたギミックといえるかもしれません。

鍵穴からの絶景
 HUMBLE PIE / THUNDERBOX (A&M 1974)

鍵穴から覗く
トイレでセミヌード

 英国ロックの雄、ハンブル・パイの8作目。鍵穴からのぞくと何やら美女がトイレで、裏面では浴場であられもないお姿になっています。名匠ヒプノシスによる傑出したジャケット作品です。1970年代に日本でも人気を博したデヴィッド・ハミルトン風味の写真も傑出しています。

お着替えジャケ
 TELEPHONE / CRACHE TON VENIN (PATHE MARCONI EMI 1979)

黒い服の4人組
裸の4人組

 フレンチ・パンク、テレフォンの2作目。タイトルの「毒をはき出せ」よろしく、インナー・スリーヴをスライドさせると瞬時にしてヌード・ジャケに変身します。チョッピリ残念なのは、大事なところが白い「前貼り」のようなもので隠されていることです。パンクを標榜(ひょうぼう)するバンドであれば、オールヌードで権威に挑み物議を醸すのも一興かと。

巨大ドル札!
 ALICE COOPER / BILLION DOLLAR BABIES (WARNER BROS. 1973)

緑の皮財布
財布の中にドル紙幣

 米国ショック・ロックの代表格、アリス・クーパーの6作目。表面が凸凹になるエンボス加工された財布を広げると、紙質もリアルな巨大な10億ドル札!が収納されています。
 アリス・クーパーもギミック・ジャケットが多く、その中でも特に有名なものは、リアルな紙パンティーがレコード盤面に付いた『スクールズ・アウト』です。

でんわ急げ!
 THE J.GEILS BAND / HOTLINE (ATLANTIC 1975)

電話機 鳴る前

 20174月に急逝したJ・ガイルズが率いた米国ロックの最高峰バンドの7作目。インナー・スリーヴを上にスライドさせると、受話器がはずれて歌詞カードが出現するという仕掛けです。今日では絶滅危惧種になりつつある黒色の固定電話は郷愁を誘います。

受話器を外す

●筆者プロフィル 植村 和紀(うえむら・かずのり)

 1953年、千葉県生まれ。大学卒業後、オリジナル・コンフィデンス社に入社。93年に東芝EMIに入社し、邦楽・洋楽の宣伝・制作、デザイン部で編集担当。現在はフリーの収集家として活動中。ミュージックジャケットギャラリー(https://www.kinyosha.co.jp/mjg/)の雑誌版を月刊『ステレオ』(音楽之友社刊)に連載中。著書に『洋楽日本盤のレコード・デザイン』(グラフィック社刊)。

  • この連載について / ギミック・ジャケットの世界

    昔懐かしい黒いレコード盤には、ジャケット自体を楽しめる仕掛けが付いた「ギミック・ジャケット」が存在します。国内有数のレコード収集家の貴重なコレクションを紹介。動画も交え、知られざる世界を解説します。

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