<連載> なるほどマネー

貯蓄を取り崩すことに抵抗があれば「毎月分配型投信」も

なるほどマネー 投資の新「常識」:5

2017.12.04

 「老後に貯蓄を取り崩すことは覚悟していますが、やはり抵抗があります。運用でお金を増やすのも難しい中、どう考えていけばいいのでしょうか」
 読者からの質問にファイナンシャルプランナー深野 康彦さんが答えました。

 老後の生活で、貯蓄の取り崩しに抵抗を感じる人は少なくありません。現役時代は子どもの教育費、マイホーム購入の頭金などの取り崩しであれば抵抗はありません。ところが、生活費のための取り崩しは「罪悪感」が強く感じられるようです。

毎月分配型投信

 なぜなら、生活費に使うことは、毎月の家計が赤字であることを示すからです。現役時代は赤字は最も避けるべきことでした。将来に備えた貯蓄ができないからです。現役時代の家計管理は「収入―生活費=黒字」が基本で、黒字分をせっせと貯蓄していくわけです。このような家計管理を30~40年続けて老後を迎えます。老後の生活を公的年金だけで賄うのは難しく、貯蓄を取り崩して生活するわけですが、これが意外と難しいのです。

 老後は現役時代にためた資産を刈り取る時期です。豊かな生活のため、ストレスなく資産を取り崩す仕組みを考える必要があります。取り崩せないのであれば、ストレスなく、定期的にお金を受け取れるようにしましょう。

 筆者に寄せられたこれまでの相談では、株式や投資信託などへの投資では、売却益よりも、定期的に受け取れる配当金や分配金の方がストレスなく生活費や自分の楽しみに使える傾向が強いようです。定期的に入るフロー収入という感覚が、現役時代の収入に思えるのかもしれません。

 ただ、株式の場合は中間配当がある会社でも配当金の受け取りは年2回です。複数の銘柄を持てば2回以上の受け取りとなりますが、上場企業の大半は3月末が決算期です。配当金の受け取りを2回以上にするのはなかなか難しいことです。

 そこで注目すべきなのは、毎月分配型投資信託のような定期分配型の商品です。毎月分配のほか、隔月分配や3カ月分配もあります。自分が望む分配回数の商品を選べばよいのです。

 毎月分配型の投信をめぐっては、「長期投資に向かない」「新商品が多く、金融機関の手数料稼ぎの回転売買に使われている」などの批判もあります。しかし、老後に定期的に分配金を得てストレスなく使う、といったニーズに合うなら、その仕組みを活用することもできます。

 毎月分配型投信の分配金は、運用がうまく行っている時は利益にあたる「普通分配金」が得られますが、運用状況が芳しくない時は投資元本の一部を取り崩す「元本払戻金(特別分配金)」となります。

 ある意味で、貯蓄を取り崩すのと似た仕組みともいえるのではないか、と私は考えます。自分で貯蓄を取り崩すようなことを、毎月分配型投信に行ってもらうわけです。

 毎月分配型投信を10年間保有したとしましょう。その間、毎月分配金を得て、老後の生活費などに充て、運用も芳しくなくて投資元本を減らしていったとしても、貯蓄の取り崩しと似ているわけです。貯蓄を取り崩すことに抵抗がある人は、毎月分配型投信で運用益を期待しながら分配金を得る仕組みを利用するのも、一考の余地があるでしょう。=全12回

(2017年12月4日付け朝日新聞朝刊「Reライフ」面)

深野康彦さんがReライフ講座(朝日カルチャーセンター・新宿教室)「人生100年時代を見据えたマネー戦略」に登壇します。

人生100年時代を見据えたマネー戦略
日時:2018年12月2日(日)14:00~15:30 詳しくはこちら

有限会社ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー 深野 康彦(フカノ ヤスヒコ)
1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。FP業界歴29年(2017年4月現在)を誇る。金融資産運用設計を研鑽して1996年に独立。現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙を幅広く行っている。日本経済新聞夕刊「投信番付」のほか連載多数。BSジャパン「日経モーニングプラス」に毎月1回出演。新聞・マネー雑誌、経済誌などへの執筆・取材協力および金融商品などのデータ提供を行いながら、テレビ、ラジオにも多数出演している。


  • この連載について / なるほどマネー

    長寿社会を生きる上で、自分の資産をどう守るかは大切な課題。資産設計にまつわる悩みや疑問について、ファイナンシャルプランナーがお答えします。

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