「第二の人生のお手本」が見つかる場

精神科医・保坂隆さんに聞く「同窓会の効用」(下)

2018.07.25

 60代以降の同窓会で、昔のキャリアや肩書を持ち出して失敗する人がいますね。同窓生は、今のあなた、今あなたが何に取り組んでいることを知りたいのに、それがない人は過去の栄光を心のよりどころにせざるを得ない。そんな人は、どこか上から目線で、自分と周囲の間に無意識に上下関係を作ってしまい、孤立しがちです。そうした人を見ていると、どこか見苦しい感じもします。

同窓会の効用を説く精神科医の保坂隆さん
 逆に、過去の栄光などは忘れてしまい、自分のテーマに取り組んでいつも目をキラキラさせているような人の回りには、自然と人が集まってきます。そうした人は、いくつになっても知的好奇心を失いません。いろいろな場面で頭の中に「?」マークが出て、なぜだろうと思うことができる。そんな人の脳はいつも活性化しています。ある意味、老いるということは、知的好奇心を失うことなのです。

 人生のある時点で定年を迎えると、誰もが「ああ、満員電車から解放される」などと思うのでしょうが、解放された日々には、1カ月もすれば飽きてしまうでしょう。「平日に思いっきりゴルフをしよう」と考えていたとしても、多分2~3カ月もやればおなかいっぱいで「もういいや」となるはずです。

 定年後、自分に短期間のご褒美を上げるのは結構なのですが、何かしら、その後の人生に打ち込めるテーマを持たなければ。第二の人生に取り組むべきテーマは、単なる趣味ではない気がします。

 初めて本格的な日本の地図を作った事で知られる伊能忠敬は、息子に家督を譲り、50代で江戸に上って測量学を学びました。70代まで全国を巡って地図を作り、生涯で二つの人生を生きました。彼は人生50年の時代の人ですが、今や人生100年時代です。定年後の20~30年は、彼のように、それまでとは全く違う自分を作るようなことに取り組んでもいいのではないでしょうか。

 今、自分がいきいきとしていないと感じているなら、同窓会をきっかけに、生まれ変わってやろうと考えてはどうでしょう。同窓会にはいろんな人生を生きた人が参加します。その中から、目を輝かせて理想とする人生を生きているような人を探すのです。世の中には見習いたくなるような有名人もいるでしょうが、そうした人には簡単には近づけません。でも、同窓生ならば昔のよしみで簡単に会い、アドバイスをもらうこともできます。同窓会は、そんな人生のお手本を探せる場でもあるのです。

(取材・文 沢田歩)

保坂 隆(ほさか・たかし)
1952年山梨生まれ。慶応義塾大医学部卒。1990年に米国カリフォルニア大に留学後、精神科医としてがん患者の心のケアに取り組む。東海大医学部教授を経て、がんと心の問題を扱う新しい学問領域である「サイコオンコロジー(精神腫瘍〈しゅよう〉学)」の普及を目指し、聖路加国際病院精神腫瘍科部長などを歴任。2017年に保坂サイコオンコロジー・クリニック」を開院。著書に「図解 50才からの人生が楽しくなる生き方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「定年後、うまくいく人 いかない人」(朝日新聞出版)、「人生をもっと楽しむ『老後の学び術』」(PHP文庫)など。

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