<連載> デジタルReライフの勧め

スマホに振り回されてない? 私がパソコンを選ぶわけ

たくきよしみつ「デジタルReライフの勧め」(3)

2018.10.03

 主に60代以上にデジタルライフを勧める連載です。文筆家のたくきよしみつさんは今回、スマホ万能論に疑問の目を向け、創作活動に適した道具について考えます。

ガラケーの方が安くて便利

 いきなりですが、みなさんはスマートフォン(スマホ)をお持ちでしょうか? 私は持っていません。当面、持つつもりもありません。必要性を感じないからです。

 毎日何時間もネットにつないで様々な作業をしていますが、それはすべて仕事机の上で、デスクトップパソコンと大きめのモニター、手になじんだキーボードでやっています。これを小さなスマホやタブレットなどでやりたくありませんし、やれません。

たくきよしみつ連載3回目
各種端末の大きさ比較。左から、妻のアンドロイドスマホ、iPod touch6、私のガラケー、モバイルルーター(たくきよしみつ撮影)

 昔ながらの携帯電話(ガラケー)は持っていて、最低料金のコースで契約しています。常時腰のベルトに着けていますが、通話よりもおサイフ(モバイルSuica)として使うことのほうが多いでしょうか。電車の切符代わりや、コンビニや自販機での支払いに使っています。おサイフ機能を持つスマホも増えましたが、スマホのほうが大きく、重く、壊れやすく、バッテリーも食うので、私のような使い方をしている限りはデメリットのほうが多いのです。

 妻は以前からスマホに興味を持っていたようなので、アンドロイドスマホを買い与えました。しかしその妻も、介護施設に入居している要介護2の母親と毎日電話で話をするのは、通話時間無制限契約のガラケーです。料金の点でも、使いやすさの点でも通話ならガラケーの方が有利だからです。

 さて、みなさんはどうでしょうか? スマホを毎日使っている方も、持っていない方も、改めてご自分の生活にスマホが本当に必要なのかを、考えてみてください。

人間関係が面倒なLINE

 私がスマホを持たないもう一つの理由は、煩わしいからです。

 スマホを持っている人の多くは、LINEというサービスを使っています。日本国内におけるアクティブユーザー数は7300万人(LINE株式会社2017年12月期決算説明会報告書)だそうです。

 LINEでは、グループトークというメンバー限定の談話室のようなものを複数つくり、その中で会話をするような使い方が一般的で、そこにメッセージが入るたびに「プッシュ通知」で知らせてくれます。プッシュ通知は切ることもできます。しかし、メッセージを送ってくる相手は基本的にすぐに返信が来ることを期待しているので、いつまでも放置しておこうものなら「失礼なやつだ」などと人間関係が悪化する原因になります。こんな「LINE文化」とでも言うべきものに加わるのが煩わしいのです。

 ちなみにフェイスブックと連携する「メッセンジャー」というアプリもLINEとほぼ同じ性格のものですが、「LINE文化」ほどには「いつもオンラインであたりまえ」な感覚はないように思います。(メッセンジャーについてはまた別の機会に説明します)

 妻は、私以上にそういう「ネットでの人間関係」が嫌いなので、LINEだけでなく一切のSNSをやっていません。

 妻のスマホは普段は居間のテーブルなどに置かれていて、「テニスの錦織圭は今、ATPランキング何位だろう」とか「これから雨が降るのだろうか」とか、何か調べたいときにさっと手を伸ばす使い方がメインです。寝る前にベッドでニュースを読むのにも使っています。家では、引いている光回線からのWi-Fi接続ですから、いくら使ってもスマホ本体の通信料はかかりません。外出時のみ、本体の通信回線で接続しますが、契約した格安SIMの基本料金700円(月額・税別)を超えたことは一度もありません。

 ちなみに私も妻も自分専用のデスクトップパソコンと仕事机を持っています。パソコンやネットが必要な仕事はすべてデスクトップパソコンで行っています。

モバイルルーターのススメ

 あまり外出しない私ですが、仕事で遠出する時に、乗り換え案内アプリやネットの地図検索を利用するため、「iPod touch6」という、小さくて軽い(88g)端末を持っていきます。通話機能がついていないiPhoneのようなもので、見た目は現行のiPhoneでは最小の「iPhone SE」に似ています。通信SIMはつかないので、外で使うときはモバイルルーター(携帯用Wi-Fi接続器)で接続します。このモバイルルーターも格安SIMを使っており、基本料金500円の契約で、500円を超える通信をした月はありません。

 スマホなら1台で済むのに、端末の他にルーターも持ち歩かなければいけないのは邪魔ではないかと思うかもしれませんが、モバイルルーターは小さなものですので、それほど邪魔だとは思いません。また、モバイルルーターがあれば、タブレット端末やノートパソコンなどもネットに接続できます。Wi-Fi機能を持った端末をいつでもどこでも月500円でネットに接続できるのですから、非常用通信手段として持っていてもよいでしょう。たとえば、災害などで停電して家の光回線が使えなくなっても、モバイルルーターがあればネットに接続できるかもしれません。

 ちなみに、私と妻のガラケー、モバイルルーター用の格安SIMNTTdocomoの通信回線ですが、妻に持たせたスマホはあえてauの回線で契約しています。災害でどちらかの回線が不通になったり、山間部などでどちらかの回線がつながらなかったりした時、相互に補える可能性があるからです。

パソコンの力を見直そう

 2016年度「総務省情報通信白書」によれば、スマホの世帯普及率は71.8%で前年とほぼ横ばいですが、パソコン普及率は76.8%から73.0%へと下がっています。つまり、「スマホがあるから、もうパソコンはなくてもいいか」と、パソコンが壊れたり、パソコンを動かす基本ソフトウェアであるOS(オペレーティングシステム)が古くなったのを機に手放してしまう人がいるわけです。

 しかし、スマホはパソコンの代わりにはなりません。携帯性を除けば、スマホでできることはほぼすべてパソコンでできますが、その逆はあり得ません。スマホで長い原稿を書いたり、WEBサイトを作ったりする作業、言いかえれば何かを「創造する」ことには、力不足なのです。

 内蔵カメラでパッと写真を撮って、与えられたアプリでそれをお遊び感覚で加工してSNSに投稿するといったことはできます。しかし、プロっぽいアートな写真を撮り、それを細かく補整・編集して写真集を作ったり、音楽や動画を緻密(ちみつ)に制作・編集したりはできません。無理にやろうとすれば、パソコンでやる何倍もの時間と労力が必要になります。

 そんなわけで、スマホで全部済むなどと思わず、パソコンを使いこなしましょうと言いたいのです。パソコンの選び方や使い方については、また回を改めて話をしたいと思います。

 デジタルを縦横に駆使して、執筆や作曲など多彩な表現活動を展開しているたくきよしみつさんは「デジタルReライフ」を推奨しています。それは、長年親しんだアナログ文化の本質を見失うことなく、デジタル技術を賢く使うことで、ライフスタイルを整えてゆく営みです。インターネットを通じていかに人とつながり、あなたらしい表現を発信していくか。この連載では、そのノウハウをご紹介します。

◇ 

たくき・よしみつ(鐸木 能光)

 1955年、福島生まれ。91年、原子力政策の闇をテーマにした小説「マリアの父親」で第4回小説すばる新人賞受賞。住んでいた福島県川内(かわうち)村で2011年、福島第一原発の原発事故に被災。その体験を元に「裸のフクシマ」(講談社)、「3・11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ」(岩波ジュニア文庫)を執筆。近著に「医者には絶対書けない幸せな死に方」(講談社+α新書)。作曲などの音楽活動、デジタル文化論、狛犬(こまいぬ)の研究などを幅広く手がけている。

公式サイト https://takuki.com/

  • この連載について / デジタルReライフの勧め

    アナログ世代こそが、デジタルを賢く使えるはず。60代の文筆家がデジタルツールを活用した「デジタルReライフ」のノウハウを伝授。長年親しんだアナログ文化の本質を見失わず、インターネットを通じて人とつながり、発信するコツを紹介します。

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