<連載> デジタルReライフの勧め

お金をかけずにパソコンを便利に フリーソフトあれこれ

たくきよしみつ「デジタルReライフの勧め」(7)

2018.10.31

 文筆家のたくきよしみつさんが60代からのデジタルライフを勧める連載の第7回。パソコンの使い勝手を快適かつ便利にしてくれ、しかも無料で使えるフリーソフトをいくつか紹介します。

パソコンはシンプルに使いたい

 前回はハードとしてのパソコン選びについて書きました。その中で、私は今でもMacで文章作成などの仕事をする気にはなれない、使い慣れているソフトがWindowsのものばかりだからだ、ということを書きました。
 この「使い慣れているソフト」のいくつかは、メーカーが開発した市販ソフトではなく、個人ユーザーが作ってWEBで配布しているフリーソフト(個人が非営利で利用するのは無料のソフト)です。

 もともと、WindowsというOS(オペレーション・システム)はMacに比べるとデザインや基本機能が洗練されておらず、不親切なところがありました。それで世界中のユーザーが寄ってたかって「こうすれば使いやすくなる」「もっと合理的で理にかなったソフトがあるはずだ」という発想でいろいろなフリーソフトを作り、発表してきました。

 「フリーソフトで使いやすい環境にする」とはどういうことか、いくつかの実例で説明します。
 メーカーが作っている商品ではないソフトなど怖くて使う気がしない、ウイルスでも仕込まれていたらどうする、と心配されるかたもいらっしゃるかもしれませんね。しかし、昨今では有名メーカーの高額なソフトにもスパイウェア(ユーザーの利用環境情報を収集し、裏でメーカーのサーバーに送信するプログラム)もどきのものが仕込まれているソフトはたくさん存在します。そうした「余計なもの」が一切入っていない、しっかりした定評のあるフリーソフトは、シンプルな分、むしろパソコンに悪影響を与えることが少ないともいえます。

 今回ご紹介しているのはそうしたソフトばかりですが、ダウンロードするときは、作者の本家サイトや「窓の杜」「ベクター」「freesoft100」などの実績のあるオンラインソフト配布サイトから行ってください。

ランチャーで起動を快適に

 みなさんはソフトを起動するときどうしていますか?
 デスクトップにソフトを起動するためのショートカットのアイコンをベタベタと並べている人をよく見ます。中には、今作業中のファイルをデスクトップに保存して、アイコンを表示させておく人もいます。
 デスクトップにアイコンが増えていくと、目的のアイコンをパッと探し出せなくなるだけでなく、セキュリティー上も問題があります。デスクトップは他人の目に触れやすいので、簡単にファイルを開けられてしまいます。また、デスクトップに表示されるアイコンが増えることでパソコン全体の動作も重くなります。
 「スタートメニュー」やデスクトップ下部に表示されるツールバー、タスクバーからたどっていく方法もありますが、一度に表示できる数が限られているため、すぐに目的のソフトにたどり着けないこともあります。

 ソフトを起動するためのソフトをランチャーといいます。「え? そんなものが必要なの?」と思う人もいるでしょうが、一度使い始めると、その便利さに手放せなくなるかもしれません。
 たくさん出ているフリーソフトの中で、「CLanch」はお薦めの一つです。普段は隠れていて邪魔になりません。マウスでポインターを画面の外に振り出したり、あらかじめ決めたキーやマウスボタンの操作一つで、ソフトの起動ボタンが並んだ画面がパッと現れたりします。

「文章を書く」に特化

 文章を書くとき、みなさんはどんなソフトを使いますか? 多くの人はマイクロソフトのワードのような「ワープロソフト」を使っているのではないでしょうか。

 ワープロソフトは、文章を「書く」だけでなく、レイアウトし、印刷物などを作るためのソフトです。そのため、文字に色をつけたり、フォント(書体)を指定したり、字詰めを決めたりといった、「書く」以外の機能を多く装備しています。最初からレイアウトや文字修飾が必要なファイルを作成するのであれば、ワープロソフトを使えばいいのですが、単に文章を書くだけのために使うのは、蠅(はえ)を鉄砲で撃つようなものです。ワープロソフトは重く、起動して文章を入力するまでに何秒もかかります。

 また、ワープロソフトで作成した文章は、そのまま保存すると独自のファイル形式(ワードの場合はファイルの拡張子が「.doc」か「.docx」)になるので、そのデータを渡す相手が同じソフトを持っていないと読むことができません。
 私の所には仕事柄、ワード文書がよく送られてくるので、それを読むためにワードもインストールしていますが、そのバージョンは10年以上前のものです。「.docx」という新形式のファイルを開くには、旧形式にいったん変換する必要があり、ファイルを開くだけで何秒も待たされます。待たされた揚げ句に開いたファイルが文字修飾などの必要がない「ただの文章」だったりすると、腹が立ちます。「なぜテキストファイルで送ってこないのだ」と。

 文字修飾やフォント、レイアウトなどの情報を含まない「文字だけのファイル」をテキストファイルといいます。テキストファイルは文字を表示するあらゆるソフト(ワープロソフト、DTPソフト、WEBブラウザー、画像ソフト、メールソフト……)で扱える万能のファイル形式(テキスト形式=拡張子は「.txt」)です。
 テキストファイルを読み書きするソフトをテキストエディターといいます。
 テキストエディターができるのは、文字を書くことだけ。基本的には、文字に色をつけたりフォントを変えたりといったことはできません。レイアウトもできませんし、直接印刷もできません。(一部の高機能テキストエディターには印刷機能を備えたものもあります)。あくまでもテキストデータを作成するだけのソフトですが、その分、シンプルで動作が軽く、ストレスなく文章が書けます。この連載も、テキストエディターで書いています。

 テキストエディターはメモのような短い文章を書くための、簡易的なソフトだと思っている人もいますが、それも間違いです。長文になればなるほど、テキストエディターの軽さやシンプルさが威力を発揮します。
 例えば、ブログをやっている人は、WEBブラウザーから直接文章を書き込んでいる人がほとんどだと思います。でも、長い文章を書いたり、じっくり校正をしたりしたいとき、WEBブラウザーに表示されたテキスト入力画面は狭すぎませんか? 私は、事前にテキストエディターでじっくり文章を書き、できあがったら全文を選択(キーボードで、「Ctrl」ボタンを押しながら「A」ボタンを押せば一瞬でできます。以下、「Ctrl+A」と表記)。その全文をコピー(Ctrl+C)し、そのデータをWEBブラウザーのブログ書き込み画面に貼り付ける(Ctrl+V)という方法をとっています。この一連の動作は、ほんの数秒で完了します。
 これですと、WEBブラウザーの狭い画面に直接書き込むよりずっとストレスなく文章を作成できますし、書いた文章はネット上だけでなく、手元(パソコンのハードディスクなど)にテキストファイルとして保存できますので、いつでも再利用できます。

 実は、Windowsには「メモ帳」というテキストエディターが最初から用意されています。(スタートメニューから、「すべてのプログラム」→「アクセサリ」→「メモ帳」で起動)
 「メモ帳」でもいいのですが、世の中にはもっと使いやすいテキストエディターがたくさん出ていますので、試してみるといいでしょう。「CatMemoNote」などは、複数の文書をタブで整理できたり、定型文を管理できたりと、多機能なわりに使いやすく、お薦めです。

履歴のデータをとっておく

 文字列をコピーすると、そのデータはクリップボードというWindows標準機能に一時的に格納されます。しかし、そのデータは、次に別の文字列をコピーすると消えてしまいます。そこで、消えないように履歴をとり、以前にコピーした内容もすぐに呼び出せるようにするソフトがいくつか出ています。
 定型文も登録しておける「Clibor」はシンプルで分かりやすくお薦めです。
 私にとっては、これがない環境で文章を書くなんて考えられないほどの必須ソフトです。

 なお、ランチャーやクリップボードユーティリティーソフトは、パソコンの起動と同時に「常駐」させて使います。「常駐」はソフト側から設定できます。

大量の写真を瞬時に処理・編集

 今のデジカメは画素数が多くなりすぎて、撮った画像をそのままの解像度でWEB上に表示したりすることはまずありえません。必ず解像度を落として「リサイズ」する必要があります。
 また、明暗や色味などが不自然で、直したくなることも多いと思います。そうした作業をするためのソフトが画像編集ソフトです。

デジタルReライフの勧め(7)
上下の写真の違いを見つけてください。IrfanViewを使えば、簡単な色調補整などはキー操作一発(shift+U)で瞬時に完了。さらには、こんな風に「邪魔なものを消す」ことも1分もあればできてしまいます。(たくきよしみつ撮影)

 画像編集ソフトというとPhotoshopが有名ですが、現在、PhotoshopをはじめAdobe社の製品のほとんどは月額利用料を徴収する販売方法になっていて、どうしても仕事に必要な人以外は気楽に手を出せないソフトになってしまいました。そもそも、Photoshopは多機能ですが、多機能すぎて動作が重く、大量の写真を次々と加工、編集していくのには向いていません。

  私がよく使っているのは「IrfanView」という海外製のソフトです。
 もともとは画像を閲覧したりグループ分けして整理するためのソフト(画像ビューワー)として誕生し、編集機能はオマケ程度でした。それが、解像度が高い(画素数の多い)元の写真画像をWEB用に解像度を落としたり、明暗補整、色味補整などの編集作業が瞬時にできたりする強力なソフトに成長しました。使いやすさ抜群なので、世界中に多くのユーザーがいます。
 海外製ですが、日本語化するファイルも出ていて、それを一緒にインストールするだけで日本語化もできます。使い慣れると他のソフトを使うのがバカらしくなります。

 以上、市販ソフトより優秀で合理的なフリーソフトをいくつかご紹介しました。こうしたフリーソフトなどでコンピューターの利用環境を細かくカスタマイズできるのがWindowsの魅力です。

 しかし、そういうのは面倒くさい、与えられた基本環境をそのまま使いたいという人もいるでしょう。そういう人にはMacのほうが向いているかもしれません。音楽制作や動画編集など趣味系ソフトもOSに最初からついていて、しかも下手な市販ソフトより優秀ですので、何も付け加えなくても最初からじっくり楽しめます。

 WindowsもOSがアップデートするたびに、デザインや使い方の流儀がMacに近づいている気がします。「フリーソフトで使いやすい環境を」なんて言っているのはジジイのざれ言といわれてしまうのかもしれませんね。まあ、私もしっかりジジイになりましたので、今回はざれ言も大目にみてください。

 デジタルを縦横に駆使して、執筆や作曲など多彩な表現活動を展開しているたくきよしみつさんは「デジタルReライフ」を推奨しています。それは、長年親しんだアナログ文化の本質を見失うことなく、デジタル技術を賢く使うことで、ライフスタイルを整えてゆく営みです。インターネットを通じていかに人とつながり、あなたらしい表現を発信していくか。この連載では、そのノウハウをご紹介します。

◇ 

たくき・よしみつ(鐸木 能光)

 1955年、福島生まれ。91年、原子力政策の闇をテーマにした小説「マリアの父親」で第4回小説すばる新人賞受賞。住んでいた福島県川内(かわうち)村で2011年、福島第一原発の原発事故に被災。その体験を元に「裸のフクシマ」(講談社)、「3・11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ」(岩波ジュニア文庫)を執筆。近著に「医者には絶対書けない幸せな死に方」(講談社+α新書)。作曲などの音楽活動、デジタル文化論、狛犬(こまいぬ)の研究などを幅広く手がけている。

公式サイト https://takuki.com/

  • この連載について / デジタルReライフの勧め

    アナログ世代こそが、デジタルを賢く使えるはず。60代の文筆家がデジタルツールを活用した「デジタルReライフ」のノウハウを伝授。長年親しんだアナログ文化の本質を見失わず、インターネットを通じて人とつながり、発信するコツを紹介します。

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