<連載> デジタルReライフの勧め

目指せ「日常写真家」 カメラの使い方、選び方教えます

たくきよしみつ「デジタルReライフの勧め」(9)

2018.11.14

 文筆家のたくきよしみつさんが主に60代からのデジタルライフを勧める連載。趣味の世界をデジタルで広げる実践編の第2弾は「写真撮影」がテーマです。

 今や誰もがスマートフォン(スマホ)で写真を撮り、インスタグラムなどのSNSにポンポン投稿する時代です。でも、そういうのは「写真が趣味」というのとはちょっと違う気がします。

たくきよしみつ連載9回目P
一時期は新品でも1万円代で売られていたオリンパスの「XZ-10」というコンパクト機で撮った写真。「ガバッ」と寄って撮ったものです。(たくきよしみつ撮影)

 私は朝起きてから夜寝るまで、腰には常にオリンパスの「XZ-10」という小型カメラをぶら下げており、年間3万枚前後の写真を撮ります。写真を撮ることは、趣味というよりも「生活の一部」になってしまいました。

 しかし私はプロカメラマンではありません。プロカメラマンなら持っていてあたりまえの機材も持っていません。

 自分では「日常写真家」をめざしています。日常の一コマをうまく写し取ることで生まれる感動を追い求める写真道……とでもいいましょうか。

 「なんや偉そうに!」「勝手に言っておれ~」とあきれられそうですが、今回は、比較的安価なレンズ一体型カメラで、スマホではなかなか撮れない「感動的な写真」を撮る方法について書いてみます。

「ガバサク理論」で楽しむ

 私がデジカメ撮影術の極意として「ガバサク理論」なるものを打ち出したのは2004年のことでした(岩波アクティブ新書「デジカメ写真は撮ったまま使うな! ガバッと撮ってサクッと直す」)。その後、ことあるごとに「ガバサク理論」を言い続けています。

「ガバサク理論」とは、

  1. 1)ガバガバいっぱい撮る
  2. 2)ガバッと寄って撮る
  3. 3)撮った後はそのままではなくサクッと直す

……というものです。

 そのココロは、デジカメはフィルム代がかからないのだから、同じ被写体を角度を変えて何枚も撮っておく(1)。「オートブラケット」という、露出を自動的に3段階に変えて連写する機能があれば使う。そうすることで失敗写真が減らせる。

 被写体に大胆に近づき、大きく写す(2)。そうすると面白い写真、感動的な写真が撮れることが多い。

 暗すぎたり色味がおかしかったりボケていたりする失敗写真も、編集ソフトでサクッと直す(3)。すると、見違えるような写真になることがある、ということを言い表したものです。

 もう少し詳しく説明すると、露出を自動的に3段階に変えて撮ることで、いちばんいい感じの露出のショットを後から選べる、というのが「オートブラケット」機能の本来の趣旨です。しかし、利点はそれだけではありません。

 写真を撮るときに避けたい「手ぶれ」が起きやすいのはカメラのシャッターを押したときですが、常にオートブラケットにして、1回押す動作で3連写しておくと、仮に1枚目がブレてしまっても、2枚目か3枚目ではシャープに撮れている場合が多いのです。子どもや動物など動く被写体であれば、3連写の過程で微妙に動きや表情も変わりますから、その中からベストショットが選べます。

 写真は、画面の中に多くのものが写り込むと、視点が散らばって印象の薄い写真になりがちです。あれもこれもではなく、思いきって写したい対象物を絞り込み、大きく切り取ったほうが感動が生まれやすくなります。

 その際、安直にズームレンズに頼って拡大するのではなく、撮影者が可能な限り被写体に近付く思い切りのよさが重要です。そのほうが写真に迫力も生まれますし、きれいな画像になりやすいのです。

 デジタルで撮った写真のよさは、画像を後から簡単にいじれることにあります。明暗や色味などをサクッと調整することで、見違えるような写真に変わることも少なくありません。

 この「サクッと直す」には、この連載コラム第7回で紹介した「IrfanView」というソフトが絶大な効果を発揮します。こちらに導入から基本的な使い方まで解説したページを用意しましたので、ぜひのぞいてみてください。

 初心者はこの3点を心がけるだけで、撮った写真が変わって来ます。腕が上がったように感じられるかもしれません。これができるのも、デジタルのおかげです。フィルムカメラでは、「ガバサク理論」の(1)と(3)は難しいですから。

 今まで自分は写真を撮るのが下手だと思っていた方も、「ガバサク理論」を頭に入れて、スマホではなくちゃんとした「カメラ」で写真を撮ってみてください。デジカメならではの、楽しくて深い趣味に目覚めるかもしれませんよ。

明るいレンズの小型カメラを持とう

 「スマホではないちゃんとしたカメラ」というと、多くの人は「デジタル一眼レフ(デジイチ)」と呼ばれる重量級のレンズ交換式カメラを思い浮かべると思います。しかし、私自身はその手のカメラは使っていません。「日常写真」のシャッターチャンスはいつあるかわかりません。しかし、重たいデジイチを気軽に持ち歩くのには無理があります。

 室内の撮影でも、せっかくデジイチを使ったのに、つけているレンズがカメラとセット売りされているズームレンズ(18~55mm、F3.5~5.6といった「暗い」レンズ)などであれば、期待通りのきれいな写真にならないことがあります。隣でスマホで撮っていた友人のほうがずっときれいな写真が撮れていて、がっかりしたという経験を持つ人もいるのではないでしょうか。

 また、気軽な集まりに重量級のカメラを持ち込んでカシャカシャと連写していたら、レンズを向けられた人たちはカメラを意識してしまい、いい表情が撮れません。せっかくのおいしい料理も、いちいち重くて大きなカメラで撮っていたら楽しめません。

 室内でのスナップ写真などには、明るいレンズの小型カメラが向いています。レンズの明るさは、「F2.0」などと表示される「開放F値」で表されます。この数値が小さいほど明るいレンズです。ちなみに私が常用しているオリンパスXZ-10はズームレンズですが、F1.8~2.7という明るいレンズを搭載しています。相当暗い室内でも、ストロボをつかうことはありません。

 散歩の途中で見つけた花や昆虫などを思いきり大きく写したいときも、小型カメラのほうが被写体にガバッと寄れるので有利です。その場合も、明るいレンズであれば速いシャッターが切れるので手ぶれしにくくなります。レンズが明るい小型カメラはぜひ1台持っておきたいカメラです。

欲しいカメラが買えない時代に

 きれいな写真を撮るためには、レンズだけでなく、センサー(かつてのフィルムに相当するパーツ)の性能が極めて重要です。センサーの性能というと、「高画素(画素数が多い)ほど高性能」と思っている(思わされている)人が多いのですが、完全な間違いです。センサーの性能を見るには、画素数より「画素ピッチ」(1画素あたりの面積)の大きさが重要なのです。

 どれだけ画素数が多くても、1画素あたりの面積が小さければ、受け取れる光の情報量が少なくなり、濃淡や色味の浅い、さえない画像になります。小型カメラによく使われている1/2.3型というセンサーは小指の指先くらいの大きさしかありません。そんな小さなセンサーに2000万画素以上も押し込んでいるような製品は、最初から選択肢から外した方がいいでしょう。

 しかし、明るいレンズに大きな画素ピッチのセンサーを備えた製品を作ろうとすれば、カメラは小型化が難しくなり、製造コストも高くなります。かといって、現在もわずかに売られている安価な小型カメラはスマホと大差ないような代物ばかりなので、お薦めできません。

 実売価格が5万円以下で買える現行モデルのレンズ一体型小型カメラで、私が推薦するのはソニーの「RX100(枝番がつかない初代機)」です。2012年6月に登場した当時は6万円以上していましたが、今では実勢価格3万円台まで下がりました。すでに6年以上製造が続き、今も売れ続けているというのは極めてまれなことであり、それだけよくできたカメラだといえるでしょう。

 オリンパスで唯一製造が続いている小型カメラ「タフシリーズ」の「TG-5」も面白いモデルです。

 かつて、良心的な設計ながら頑張ってギリギリの価格設定をしてい小型カメラとして、ニコンではPシリーズ、キヤノンではPowerShotのSシリーズ、オリンパスではStylusシリーズなどがありましたが、利益が出せず、すべて消えていきました。今では、後継機種が出る気配もありません。パナソニックのLXシリーズはまだありますが、実売価格が7万円以上で、気軽に買える値段ではありません。おかげで、製造終了した数年前のカメラの中古機が、当時の販売価格以上の価格で取引されていたりします。

 オリンパスの「Stylus1」と「XZ-10」は、私の愛用モデルです。どちらも製造終了ですが、Amazon.comなどで程度のよい中古品が売られています。特に「Stylus1s(初期モデルのStylus1も中身はほぼ同じ)」は、広角から300mm相当の超望遠までカバーし、全域でF2.8という明るさを誇るズームレンズを備えた傑作モデルで、今後こういうコンパクト機はもう出てこないかもしれません。

 写真趣味は、一部のハイアマチュアやマニアだけのものではありません。よくできたレンズ一体型カメラで「日常写真」を撮り続けていると、スマホでは得られない世界が見えてくるはずです。

 「ガバサク理論」やカメラ選びについてもっと詳しく知りたい方は、「デジカメ ガバサク談義」にいろいろ書いていますので、のぞいてみてください。

 デジタルを縦横に駆使して、執筆や作曲など多彩な表現活動を展開しているたくきよしみつさんは「デジタルReライフ」を推奨しています。それは、長年親しんだアナログ文化の本質を見失うことなく、デジタル技術を賢く使うことで、ライフスタイルを整えてゆく営みです。インターネットを通じていかに人とつながり、あなたらしい表現を発信していくか。この連載では、そのノウハウをご紹介します。

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たくき・よしみつ(鐸木 能光)

 1955年、福島生まれ。91年、原子力政策の闇をテーマにした小説「マリアの父親」で第4回小説すばる新人賞受賞。住んでいた福島県川内(かわうち)村で2011年、福島第一原発の原発事故に被災。その体験を元に「裸のフクシマ」(講談社)、「3・11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ」(岩波ジュニア文庫)を執筆。近著に「医者には絶対書けない幸せな死に方」(講談社+α新書)。作曲などの音楽活動、デジタル文化論、狛犬(こまいぬ)の研究などを幅広く手がけている。

公式サイト https://takuki.com/

  • この連載について / デジタルReライフの勧め

    アナログ世代こそが、デジタルを賢く使えるはず。60代の文筆家がデジタルツールを活用した「デジタルReライフ」のノウハウを伝授。長年親しんだアナログ文化の本質を見失わず、インターネットを通じて人とつながり、発信するコツを紹介します。

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