<連載> デジタルReライフの勧め

自費出版の勧め デジタルで、安くて見ばえもよくできますよ

たくきよしみつ「デジタルReライフの勧め」(11)

2018.11.28

 主に60代からのデジタルライフを文筆家のたくきよしみつさんが勧める連載。趣味の世界を広げる実践編の第4弾は、本作りです。デジタルのおかげで、自費出版のハードルは、グッと低くなっています。

 前回、今や音楽鑑賞手段の第1位はCDを抜いてYouTubeになっているということを書きました。

 しかし、音楽はまだしも、本だけは電子書籍をモニターで読むのではなく、今まで通り「紙」で読みたいというかたは多いと思います。

 本は売れなくなりました。どんなに素晴らしい内容でも「売れそうもない本」は出版されません。さらに進むと、売れそうもない本だけでなく、「売れるかもしれないけれど売れないかもしれない本」まで出版されなくなり、「確実に売れるであろう本」しか存在できなくなります。

 売れない本を世に残すには、自分で作るしかありません。

 「それって自費出版?」「お金がかかるよね。そんな余裕はないもんね」と言われそうですが、デジタル技術のおかげで、印刷物を作るコストは以前よりずっと安くなっています。今回は「お金をかけずに本を作る」方法をお教えします。

1冊からでも本は作れる

 印刷物は、オフセット印刷という従来の方法で印刷する方法と、コピー機で作る方法の二つに大別されます。

 コピー機(トナー)での印刷は一般のオフセット印刷(インク)より質感は若干劣りますが、パッと見、素人にはオフセット印刷とトナー印刷の違いは分からないでしょう。それほど今のコピー機の性能は向上しています。

 オフセット印刷では大量に刷れば刷るほど単価が下がりますが、コピー機で作る場合は1枚でも100枚でも単価はほとんど変わりません。ですから、少部数ならオフセットよりコピーのほうが安くつきます。1部からでもできるので、オンデマンド(注文を受けてから生産する方式)印刷とも呼ばれます。

 私はこの方法で、オリジナルの写真集や絶版になった過去の著作を細々と販売しています。

たくきよしみつ連載10回目
オンデマンド印刷・製本で作った本(B6判)。左はフルカラーの写真集。右は表紙はカラー、中身はモノクロ印刷の小説本(たくきよしみつ撮影)

 私が利用している業者では、例えば、B6判(128×182mm100ページにカラー印刷した厚紙の表紙をつけて無線とじ製本(背の部分を糊で固めた一般的な製本)した本を1冊作る料金は362円(税込み)、送料が216円(税込み)です。合計578円(税込み)で、カラーの表紙がついた100ページの本ができるのです。ちなみにこれを100冊作っても、1冊あたりの料金は同じ362円(税込み)です。

 できあがった本は印刷所から直接注文者に送ってもらえるので、発行者は発送の手間もかかりません。

 これは中身が全ページモノクロの場合ですが、オンデマンド印刷に向いているのはむしろ全ページカラー印刷された写真集や絵本などです。オフセットではカラー印刷はCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のインクを別々の版で印刷しなければなりません。でも、オンデマンド印刷はカラーコピー機で1回印刷するだけで済みます。なので、モノクロ印刷との価格差はそんなに大きくありません。

 上記の業者ですと、B6判で16ページフルカラーの本を中とじ(背がないホチキス留め)で作った場合、本体は275円(税込み)、送料が216円(税込み)で、合計491円(税込み)です。16ページというとペラペラで「本」ではないと言われそうですが、絵本や写真集などなら十分な内容を詰め込めます。

 フルカラー40ページ・無線とじですと、592円(税込み)+送料216円(税込み)で合計808円。ラーメン1杯と同じような金額で本ができてしまうのです。思っていたよりもずっと敷居が低いでしょう?

ポイントはPDFでの入稿

 ……と、大風呂敷を広げましたが、上記のようなコストで本を作るには、印刷所に完全なデジタルデータを入れる必要があります。

 入稿するデータの形式はPDFが一般的です。最近では商品の取り扱い説明書が印刷物ではなくPDFファイルだったり、各種書類のテンプレートがPDFで配布されていたりするので、すでにおなじみですね。PDFから印刷物を作ることに特化した印刷所も出てきたために、上記のような低コストが実現しました。

 ただし、PDFには解像度の違いなどによって様々な規格があり、印刷所によっては規定外のPDFでは入稿できなかったり、印刷してみたら元データと違っていたりということがあります。

 例えばMicrosoftワードは、作成したデータをPDFファイルとして出力する機能がありますが、最高解像度は220dpiなので、オフセット印刷(通常は350dpi以上)のPDFデータとしては受け付けてくれない印刷所もあります。

(*dpi=ドット・パー・インチ:解像度の単位。350dpiとは、1インチ四方を350×350の点で表現しているという意味)

 オンデマンド印刷の場合はオフセットのような高解像度を要求されないので、そこまで厳しいことは言われないことが多いのですが、印刷所が要求しているPDFの規格には注意する必要があります。

 PDF入稿に対応した印刷所では「PDF/X-1a」という規格がよく使われています。お使いのワープロソフトやDTPソフトがこの規格のPDFに変換してくれるものであればおおむね問題ありません。新たな出費をせずにPDF入稿ができます。

(*DTP=デスクトップパブリッシング:コンピューターで完全な電子版下を作って印刷所に渡す編集作業)

 「PDF/X-1a」で出力できるDTPソフトとして人気が高いのが「パーソナル編集長」というソフトです。私はこれの古いバージョン(Version6)を使っていた時期がありましたが、ワードよりはるかに分かりやすく、使いやすいソフトでした。1万円台で買えるソフトで、印刷用PDFも出力できるので、今も人気の高いソフトです。

 こんな風に、レイアウトしたものをPDFファイルとして出力することさえ覚えれば、本は簡単に作れるのです。自分用に1部だけ作るのでも、友人知人にプレゼントとして配るために数部くらいの規模で作るのでも、費用はそれほどかかりませんから、気楽なものです。

 あとはアイデア次第です。ぜひ、楽しんで本を作ってみてください。

 デジタルを縦横に駆使して、執筆や作曲など多彩な表現活動を展開しているたくきよしみつさんは「デジタルReライフ」を推奨しています。それは、長年親しんだアナログ文化の本質を見失うことなく、デジタル技術を賢く使うことで、ライフスタイルを整えてゆく営みです。インターネットを通じていかに人とつながり、あなたらしい表現を発信していくか。この連載では、そのノウハウをご紹介します。

◇ 

たくき・よしみつ(鐸木 能光)

 1955年、福島生まれ。91年、原子力政策の闇をテーマにした小説「マリアの父親」で第4回小説すばる新人賞受賞。住んでいた福島県川内(かわうち)村で2011年、福島第一原発の原発事故に被災。その体験を元に「裸のフクシマ」(講談社)、「3・11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ」(岩波ジュニア文庫)を執筆。近著に「医者には絶対書けない幸せな死に方」(講談社+α新書)。作曲などの音楽活動、デジタル文化論、狛犬(こまいぬ)の研究などを幅広く手がけている。

公式サイト https://takuki.com/

  • この連載について / デジタルReライフの勧め

    アナログ世代こそが、デジタルを賢く使えるはず。60代の文筆家がデジタルツールを活用した「デジタルReライフ」のノウハウを伝授。長年親しんだアナログ文化の本質を見失わず、インターネットを通じて人とつながり、発信するコツを紹介します。

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