<連載> アピタル・トピックス

早期大腸がんで増える細菌を特定 便での発見に期待

2019.06.20

 大阪大と国立がん研究センターなどの研究チームは、早期の大腸がんで増える細菌を発見したと発表した。大腸がんは、日本人に最も多いがん。細菌はこの発症に関連するとみられ、便でごく早期の大腸がんがわかる新技術につながると期待されている。7日、米科学誌ネイチャー・メディシンに掲載される。
 人の腸内には約1千種類、40兆個の細菌がいる。細菌が腸内で作る群れは「腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)」と呼ばれる。

 チームは、国立がん研究センター中央病院で、大腸内視鏡検査を受けた616人の便のDNAを網羅的に解析。すると、内視鏡で切除できるポリープや粘膜内にとどまる早期のがんがある人の腸内フローラで、特定の2種類の細菌の割合が、健康な人の2~3倍あった。早期がんに多い細菌の発見は初という。


 早期大腸がんは、内視鏡で切除すれば治るとされる。ただし内視鏡は、肛門(こうもん)から管を入れるため負担が大きい。国は40歳以上に便潜血検査による大腸がん検診を推奨する。だが検診を1万人が受けた場合、内視鏡による精密検査が必要な人は500~千人。がんがわかるのは10~15人という。

 今後、研究を進めると、便を解析して内視鏡検査に進む人を効率的に選別でき、早期がんを見つけやすくなる可能性がある。谷内田(やちだ)真一・大阪大教授(ゲノム生物学)は「今回の研究は腸内細菌の違いから、がんの予防や治療選択をする時代の第一歩になる」と話している。

(月舘彩子)

2019年6月7日付け朝日新聞デジタル「アピタル」から

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    世界各国で次々と明らかにされる「腸内フローラ」の可能性。朝日新聞の医療・健康関連記事を集めたサイト「apital(アピタル)」から、最新トピックスを紹介します。

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