<連載> キャッシュレス 私の使い方

「どちらが有利?」が現金とクレジットの使い分け基準

キャッシュレス 私の使い方(3) 元会社員・69歳男性

2019.07.30

 東京都の元会社員の男性(69)はプリペイドカードを使わない。「落としたら拾った人に勝手に使われてしまう。現金と同じなのでわざわざ持つ価値はない」

 電車やバスに乗るときは現金を使う。少しだけ割高になることもあるが、プリペイドカードを落としたときのリスクを考えれば、「保険料」だと自分なりに納得している。「現役の勤め人ではないので少しでも早く駅の改札を通る必要もない。そこはリスクとコストのバランスだと考えます」

コントロールできない怖さ

 スマホ決済も利用しない。「2回押し」など過重払いがおきたとき、だれがどのようにフォローしてくれるのかという不安がつきまとうからだ。

 先日、妻が都バスを利用した際、料金を2回チャージされたかもしれないと相談された。近くの都営地下鉄駅や都バスの管轄営業所に連絡を取り、本部に照会してもらって記録をチェックしてもらい、ようやく二重払いが判明した。余分に支払った運賃分は現金書留で戻ってきた。「スマホもプリペイドカードと同じ電磁体。ある距離内に入れば機械が勝手に感知して自動でお金が引き落とされる可能性があるから怖い」

 セブンペイの不正使用事件が起きたとき、現在のセキュリティーシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を感じた。安全性の観点からみればセキュリティーシステムには複雑さが求められる。一方、使いやすさの観点からみれば操作の簡単さが優先される。企業は、この相反するニーズにどこで妥協点を見いだすか難しいのではないかと思う。

 「便利さだけに頼っていると、その裏にある怖さに気づかないことがある。自分がコントロールできないところで金銭のやり取りが勝手に進行してしまうという不安は消えない。便利さと自己防衛のどちらをとるかといわれたら、自己防衛をとる」

クレジットカードの信頼性と使い分け

 約20年前、シンガポール駐在員として働いていた。ある日、東京の信販会社から国際電話がかかってきた。台湾で16万円を使った記録があるが心当たりはあるかと尋ねてきた。

 「ありません」と即答すると、「あっ、やっぱりそうですか」と相手は腹に落ちた様子だった。信販会社も怪しいと感じたから、わざわざ確認の電話をしてきたのだ。自分の口座から引き落とされず被害は免れた。クレジットカードのセキュリティーは、それなりに効果があると実感した。

 クレジットカードには信頼を寄せるが、買い物によって現金との使い分けはしている。現金決済のほうが得ならば現金で買う。要は、どちらが買い手にとって有利なのかが基準だという。クレジットカードもポイント還元率や特定のお店でポイントが付与されるなどの特典によって使い分けしている。

 「消費者には金を支払う選択権があったほうがいい。現金で安く買えるなら現金で買いたいし、キャッシュレスのほうがお得ならそうしたい」と話す。

キャッシュレスで「買い物難民」増える?

 クレジットカード以外はキャッシュレス決済に消極的な立場だが、いずれ世の中はキャッシュレス社会になっていくと覚悟している。

 ただ、自分の周りでは、スマホがなくても十分に生活できている仲間はたくさんいる。スマホを買わされ、月々の高い通信代を支払わなくてはならない生活を強いられることに疑問を抱いている人も多い。

 「政府はキャッシュレス化を進める目的と理由を国民に説明する責任がある。スマホでパカパカやったら改札も早く通れてレジの会計もスムーズというのが若者のファッションだとすれば、その裏に隠れている高齢者が感じる不安をしっかり分析してほしい」

 例えば、レジのキャッシュレス化が進むと、現金で値引きをしていた街中の小売店は、値引きがしづらくなり店舗が減るのではないかと心配する。大量に仕入れして安売りできる大型店の方が有利だと想像できるからだ。

 困るのはお年寄りだ。少し高くてもなじみの店で買い物をしていたお年寄りにとって、自宅近くの店が消えてしまうことは生活に直結する大問題だ。キャッシュレス化が「買い物難民」を増やすきっかけにはならないか、と心配する。

 「漠然とした不安や怖さを取り払うには、きちんと理解するところまで問題を掘り下げる必要がある。国は、ただ『便利だ、簡単だ』と甘い声だけを繰り返すだけでは、この先取り残される人たちを増やすことになるだけだ」と話した。

 朝日新聞Reライフプロジェクトでは56月、キャッシュレス決済に関するウェブアンケートを実施、792人から回答がありました。その中から、キャッシュレスを日常的に使っている読者会議メンバー3人に「私の使い方」をインタビューしました。

  • この連載について / キャッシュレス 私の使い方

    Reライフ読者会議で実施した「キャッシュレス決済に関するウェブアンケート」の回答の中から3人に「私の使い方」をインタビューしました。

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