「スマホ決済」導入した商店街、60代店主のホンネは……

消費増税後の東京・高円寺の「メルペイ通り」を歩いた

2019.11.22

 10月に始まった消費増税に関するキャッシュレス決済の還元制度で、競争はスマホ決済事業者大手のキャンペーンだけでなく、中小店舗への導入獲得に広がっている。ヤフーとLINEの経営統合が報じられた11月中旬、キャッシュレス化を進める都内の商店街で、店主たちの“ホンネ”を聞いた。

 訪ねたのは、東京都杉並区の「高円寺ルック商店街」。約20年前からWEBでの情報発信に積極的に取り組み、今年6月、フリマアプリメルカリ傘下のメルペイと組んで「高円寺メルペイ通り」キャンペーンを展開した。商店街の約170店舗のうち、6月のキャンペーン時点でキャッシュレス決済を導入していたのは四分の一程度。10月の増税後の変化について、商店街の中澤一也理事は「実は、あまり変わっていない」と話す。「客層の違いにもよるけれど、『キャッシュレス決済はやらない』というポリシーを持っている店主も多い。お店も少しずつ理解しているとはいえ、まだまだです」

高円寺メルペイ通り
今年6月には、高円寺ルック商店街がメルペイと組んで「高円寺メルペイ通り」キャンペーンを実施した=東京都杉並区

「本音では現金」

 入り口に「5%還元」のシールが張ってあった生活雑貨店「ニイミ」では、レジの横にメルペイ、LINE Pay、Pay Pay、楽天ペイといったスマホ決済のQRコードがずらりと並び、クレジットカードや電子マネーも含めて計約30種類に対応しているという。店主の新實俊介さん(62)は「売り上げ? 変わっていないよ。(スマホ決済の事業者が)キャンペーンをするとその決済が増えるけど、広がりは感じられない。チャージ(入金)してまで使う段階には進んでいないんじゃないか」と話す。どちらかというと若者は淡々と使い、中高年のほうが「今日、初めてペイを使うんです」と言いながらスマホ決済で支払いをしていくのだという。

 新實さんが気にしているのは、決済手数料の負担の重さ。「政府が本気でキャッシュレス化を進めたいなら、手数料を下げてほしい」と訴える。手数料は店側の負担になるからだ。キャッシュレスの種類や事業者によって水準がバラバラで、”手数料ゼロ”を売りにするスマホ決済の事業者がある一方で、店ごとに個別交渉で決まるところも。「本音で言うと、現金がいい。結局、中間搾取でしょ。両替の手間は減ったけど、仕入れに現金を使うから、結局は現金を下ろしに行っている」

ニイミのレジ周り
生活雑貨店「ニイミ」は約30種類のキャッシュレス決済に対応している=東京都杉並区

「全てキャッシュレス」熱望も

 一方、飲食系の店では「楽になった」という声も。持ち帰り専用のパン屋では複数のスマホ決済を導入し、「すごく楽になった。全部キャッシュレスになったら良いのに」。追加でクレジットカードの導入手続きも進めているという。しかし、スマホ決済の一つが「利用額が10万円になったら振り込む」という契約になっていて、「(パンは単価が安いので)振り込まれるのはいつになることやら」と感じているという。

 テイクアウトでの利用が多いというコーヒー店でも、店主が「現金が減ったので、釣り銭を準備する手間が省けるようになった。会計で間違いが起きにくいし、何より早い」と喜ぶ。商店街を訪れる観光客も多く、キャッシュレスで支払う人も目立つという。ただ、決済手段が増えすぎるとレジ周りがごちゃごちゃするので、「スマホ決済が一本化されたらいいのに」。

中澤一也さん
高円寺ルック商店街理事の中澤一也さん。「商店街のキャッシュレス化を杉並区全体に広げていきたい」と話す。

 商店街の中澤理事は、ヤフーとLINEの経営統合のニュースに「Pay PayとLINE Payが統合されて“一強”になると、決済手数料が上がるのではないか」と心配する。商店街の中小店舗は売り上げや利益の規模が小さいので、「ちりも積もれば山となる」で、手数料が経営を圧迫しかねないからだ。ただ、商店街の生き残りのためには、キャッシュレスをうまく活用しながら地域を盛り上げていくべきだと考えているという。「来年は東京五輪・パラリンピックがある。高円寺阿波踊りなどの地元のイベントで、生ビール3杯のうち1杯が無料になるかも?というような、お客さんが楽しめる企画を提案していきたい」と話す。

(取材・文 見市紀世子)

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