「朝日 健康・医療フォーラム2019」が2月3日、東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンスで開かれ、便秘の治療と予防などについて専門家が解説しました。当日の様子を、3回に分けて紹介します。今回は中島淳さん(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室主任教授)による講演の模様です。
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便秘で悩んでいるのは、若い世代では主に女性です。ただ、60歳を超えると急速に患者数が増え、70代後半で男女が逆転します。加齢などで腸の動きが弱くなることが原因です。
子どもの便秘も増えています。原因の多くは、トイレに行くのを我慢してしまっていること。便が出ないと食欲がなくなり、栄養障害で筋肉が少なくなったり、骨がもろくなったり。元気もなくなります。

注意して欲しいのが血圧との関係です。若い人はトイレでいきんでもそんなに血圧が上がらない。しかし、50歳を超えるといきむだけで血圧が30~40ぐらい上がります。トイレでいきみ、意識を失う人もいる。便秘を放っておくと命の危険につながります。
便秘を長く放っておくと、自然な便意がなくなったり、薬に依存したり、治療が難しくなります。50歳を超えて便秘になったら医療機関に行って下さい。
「完全排便」はとても大切です。短時間かつ1回で完全に排便することで、心臓や体に負担をかけない。速いという点が非常に重要で、便秘でない方がトイレに座って終わるまで、ほとんどは50秒を超えません。10分も排便している人がいますが、血圧も上がってしまいます。
ポイントは便の硬さ。「ウサギのふんみたいに小さいのに出ない」「摘便している」という患者さんがいますが、便が硬いといきまなければ出ません。残便感も強く、トイレに何回も行くことになります。
便の理想はバナナ状です。ゴムまりのようにお尻の穴を通るときには細くなり、すっと出る。どうすればバナナ状になるのかを、薬の面から説明します。

最近まで便秘の薬は日本にあまりありませんでした。たくさんあっても中身はだいたい同じ。ところが最近、新薬が出ています。
まず、7年ほど前に出たルビプロストン。約200人の便秘の方がのんだら、自発的な排便回数が有意に増えたという。2年ほど前に出たリナクロチドや、昨年発売されたエロビキシバットという薬でも効果があったといいます。
海外でよく使われるポリエチレングリコールは日本では使えませんでした。ただ、増える子どもの便秘に重要なため、小児科の先生の強い要望でようやく使えるようになりました。
たくさん薬が使えるようになったので、便秘と思ったら、バナナ状の便を目指して、医療機関で処方してもらって欲しいと思います。
最後に、トイレに行くことが大事です。患者さんから「薬が効きません」と言われることがあります。そして、そもそもトイレに行く気が起きないというのです。そういう人に、だまされたと思ってトイレに行ってください、と伝えると、次に来たときは患者さんの顔色が違っていて、「行ったら出ました」ということがあります。
排便姿勢も大切です。ロダンの彫像「考える人」のように、ひじがももに付くぐらい前かがみにすると、すっと出ます。ぜひ試してみて下さい。
◇
中島 淳(なかじま・あつし) 横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵(かんたんすい)消化器病学教室主任教授。ハーバード大客員准教授を経て、2014年から現職。消化器や便秘改善の専門家として、メディアにも多数登場。
(2019年3月4日付け朝日新聞デジタル「アピタル」から)
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この連載について / アピタル・トピックス
世界各国で次々と明らかにされる「腸内フローラ」の可能性。朝日新聞の医療・健康関連記事を集めたサイト「apital(アピタル)」から、最新トピックスを紹介します。
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