「朝日 健康・医療フォーラム2019」が2月3日、東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンスで開かれ、便秘の治療と予防などについて専門家が解説しました。当日の様子を、3回に分けて紹介します。今回は鳥居明さん(鳥居内科クリニック院長)による講演の模様です。
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そもそも、なぜ便秘になるのでしょうか。食べ物は胃で消化され、小腸を通り、大腸の入り口に来るのに5~6時間かかります。ここからゆっくり進み、最終的に1~3日で体の外に出る。その間に水分が吸収されて便が硬くなります。長くとどまれば硬くなって出しにくくなるわけです。
朝に食事をすると何となくもぞもぞしてくることがあります。食べ物が胃に入って腸を刺激する「胃結腸反射」が起き、便を肛門(こうもん)に送り出すためにポンプのように働く腸蠕動(ぜんどう)運動によるものです。ただ、朝食を抜くとこれが起きなくなって便秘につながります。
薬が原因となる薬剤性の便秘もあります。血圧の薬や抗うつ薬、麻薬系の痛み止めや抗ヒスタミン薬……。一般のかぜ薬に入っている鼻水を止める成分も腸の動きを悪くします。花粉症の時期は、抗ヒスタミン薬を使うことが多くなるので注意しましょう。

では、どうしたら便秘を防げるのでしょうか。
食事は、食物繊維が多く含まれる食べ物をとりましょう。野菜や果物、海藻などです。例えば玄米、おから、ゆでた大豆、ゴボウ、ブロッコリー、エリンギ、ひじき。食物繊維の1日の必要量は男性20グラム、女性18グラムで、和食は非常にいい。ただ、一気にとってしまうと調子が悪くなってしまう人もいます。
注意してほしいのは油分。太るからと油をまったくとらない人もいますが、適度にとることを心がけたいです。朝食後に排便が促されるので、朝食を食べる習慣をつくって規則的な生活を送りましょう。
水分も大切です。水やお茶などで1日に1千~1500ミリリットル。一気にとるのではなく少しずつ。大きな湯飲みなどにお茶を入れ、手元に置いてこまめに飲むのがコツです。

運動については、5分でも10分でも、とにかく歩くことが大切です。速くなくてもいいので楽しく歩いて腸を動かしてあげましょう。
過労や睡眠不足、不規則な食生活、運動不足などのストレスもよくありません。リラックスしたい時は、鼻で息を吸い、口ではーっと吐く。これを3回繰り返すだけでも、少しイライラが取れるのでやってみてはどうでしょうか。
寒さも原因になります。まず、水分をとる量が減ります。加えて、寒いと交感神経が優位になって、腸の働きが悪くなってしまうのです。
便秘で病院に行く時、排便の状態を医師に伝えるのはなかなか難しいですね。そこで使って欲しいのが「お通じ手帳」。便の形やのんでいる薬、ストレスの有無などを記録します。自分で見ることもできるし、医師に相談する時にも活用できる。便秘だと思っていても、実はよく出ていることもあるんです。
医師に頼るのもいいですが、自分で健康になるという意識は持って欲しいと思います。予防や治療のために行動することが大切。「お通じ手帳」は、そのツールになるので、ぜひ利用してもらいたいです。
◇
鳥居 明(とりい・あきら) 鳥居内科クリニック院長。東京慈恵会医科大助教授などを経て現職。現在、東京都医師会理事。日本消化器病学会専門医。
(2019年3月4日付け朝日新聞デジタル「アピタル」から)
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この連載について / アピタル・トピックス
世界各国で次々と明らかにされる「腸内フローラ」の可能性。朝日新聞の医療・健康関連記事を集めたサイト「apital(アピタル)」から、最新トピックスを紹介します。
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