13日に公開された周防正行監督の5年ぶりの最新作『カツベン!』。「活動弁士」とその時代を紹介した作品だが、全国各地で大正時代の建物のロケ現場を探し歩き、3カ月間くらいの撮影時間をかけたという。当時の「再現」にこだわった熱い思いについて、周防監督は「映画が音を持たなかった時代、映画館は拍手と歓声にあふれていたんです」と話し、その原動力を「気持ちは今も、監督になりたかった学生時代と変わらないから」と語った。

日本だけで確立した活動弁士のシステム
『シコふんじゃった。』『Shall weダンス?』『それでもボクはやってない』『終の信託』『舞妓はレディ』と、常にヒット作を生み出す周防監督が5年ぶりに放つ映画『カツベン!』の舞台は大正時代。映画が「活動写真」と呼ばれ、無声で字幕がついていた頃、スクリーンの脇で映画を説明する「活動弁士」に憧れた若者の青春ストーリーが展開する。
「映画が伝来してから、日本では無声映画の時代が30年くらい続きました。それを支えたのが全国津々浦々の映画館に居た活動弁士です。その語りとはいわば映画の実況中継。それぞれの個性で、面白く解説をつけるんです。海外ではサイレント映画に生演奏がついて上映するのがスタンダードでしたが、活動弁士は定着しなかった。日本だけで発達したシステムです」
もちろん、鑑賞スタイルも今とは違う。「大衆演劇の芝居小屋のように、活動弁士の語りが面白ければ“日本一!”なんて声がかかったり、おひねりが飛んできたり。反対につまらなければ“引っ込め!”。日本人はおとなしいとか感情をあまり表に出さないとか言われますが、歌舞伎でも浪曲でも必ず客席から声がかかる。活動弁士も、その日の客層を見て、語る内容を変えます。日本の演芸は、そういう、観客と舞台との関係性の中で演(だ)し物が出来上がっていったんですね。映画が音を持たなかった時代、映画館は拍手と歓声にあふれていたんです」。
当時の映画監督も、「活動弁士がつく」という前提で撮っていただろうと監督は言う。その後の日本映画に大きな影響を与えたと考えられる。
『カツベン!』では、今を時めく俳優の成田凌さんが主人公を務め、高良健吾さん、永瀬正敏さんも活動弁士を演じる。それぞれ、現役の活動弁士について基本から学び、見事な語りを聞かせてくれる。
「活動弁士がどんなに映画を活気溢れるものにしたか、いかに映画史に欠かせない人たちだったかを今の人に伝えたい。この映画を通して知ってほしいと思っています」
全国各地でロケーション撮影、元気の秘訣(ひけつ)は?
アスファルトで舗装された道も、ビルも高速道路もなかった時代の景色を求めて、撮影は北関東から岐阜、滋賀、京都など各地で行われた。「当時の文献や資料を見て、なるべく忠実に再現したかったんです。大正時代の建物を探して、3カ月半くらいの撮影期間で何カ所も。移動距離が長くなりました」。さらに今回は映画プロモーションのためにも全国を飛び回る。その行動力の源泉を聞かれると「自分の好きなことをやっているだけなんです。大学時代に映画監督になりたいと思って、高橋伴明さんの助監督になって、そのままずーっと映画の世界に。自分では、今でもその学生時代の気持ちなんです。みなさんもそうじゃないですか?自分では“若い頃とあまり変わっていないな”と思っている人は多いんじゃないですか?」。監督の言葉に、会場を埋めたReライフ世代の中にはうなずく人も。何かに好奇心を持ち、掘り下げて映画にしていくエネルギーの源は、「精神的には学生」という心の若さにあるようだ。
「『カツベン!』は活動弁士の語りを楽しんでもらえる映画です。そして、この映画自体が、当時の活動写真を意識した笑いやアクションシーンを作り、活動写真を見ている気になるように狙っています。それを面白く感じたら、ぜひ本物の活動弁士つきの無声映画も見に行ってください」。そう語る監督の笑顔から、楽しいものを見せたい!というまっすぐな気持ちが会場いっぱいに伝わってきた。
<映画『カツベン!』について>
●あらすじ
いまからおよそ100年前、サイレント映画が主流だった時代を舞台に、成田演じる活動弁士志望の青年・俊太郎の奮闘を描く本作。とある小さな町の閑古鳥が鳴く映画館に流れついたことからすべての物語が始まる。隣町のライバル映画館、再会を果たした初恋相手、大金を狙う泥棒、ニセ活動弁士を追う警察までもを巻き込み、物語はノンストップで進んでいく。日本映画の始まりを題材に、アクションや恋、笑いの要素が交差したエンターテインメントが繰り広げられる。2019年12月13日公開。
●キャスト
成田凌/黒島結菜/永瀬正敏/高良健吾/井上真央/音尾琢真/竹野内豊/竹中直人/渡辺えり/小日向文世/池松壮亮/成河/酒井美紀/山本耕史/監督:周防正行
◇
周防正行 (すおまさゆき)
89年、『ファンシイダンス』で一般映画監督デビュー。92年の『シコふんじゃった。』で数々の映画賞を受賞し、96年の『Shall we ダンス?』では、第20回日本アカデミー賞13部門独占受賞。さらに05年にはハリウッドでリメイク版も製作された。その後も07年に『それでもボクはやってない』、11年に『ダンシング・チャップリン』、12年に『終の信託』、14年に『舞妓はレディ』とエンターテインメントから社会派作品まで傑作を世に送り続けている。16年には紫綬褒章を受賞。
◇
定年や子育て後の世代を応援する文化祭「朝日新聞ReライフFESTIVAL2019秋」(朝日新聞社主催、協賛各社)が2019年9月27日、東京・有楽町の有楽町朝日ホールで開かれました。映画監督の周防正行さんが登壇し、意欲的に話題作を作り続ける若さについても明かし、満員の会場を大いに沸かせました。この記事は、その際の内容を採録したものです。
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