<読者ブログ>

<連載> シネマのある人生(映画部)

喪失感を抱えて生きる人に、そっと寄り添う映画でした

読者会議メンバーが観た映画「風の電話」

2020.01.30

 朝日新聞Reライフプロジェクトでは、読者会議メンバーを映画の試写会にご招待し、鑑賞後に書いていただいた感想を紹介しています。今回の作品「風の電話」は、「天国とつながる電話」として知られ、東日本大震災以降3万人が訪れた岩手県大槌町に実在する電話ボックスをモチーフとした物語。震災で家族を失い、心に深い傷を負いながらも親戚のいる広島に身を寄せていた少女ハルが、故郷の岩手県大槌町を目指し、ヒッチハイクの旅に出る。出会いと別れを繰り返しながら、再生へと向かうハルは、導かれるように「風の電話」へと歩みを進める。喪失感を抱えて生きる人に、そっと寄り添うような映画です。

映画「風の電話」
(C) 2020映画「風の電話」製作委員会

災害を自分ごととして考える機会となりました

 人は、日常を当たり前に過ごしている。家族や、近しい人の存在を意識することなく、時を重ねている。しかし、ある日突然それらが失われたとしたら、どうなるのだろう?
 自分のこととして考えてみたが、どうしてもそんな状況の自分の姿が見えてこない。過去にあった災害で、たくさんの被災情報に触れる機会があったが、ただ傍観することしかできなかった。時にその不運を嘆くことはあっても、それは人ごとでしかなかった。
 「風の電話」の試写会は、災害を自分ごととして掘り下げる機会となった。人は何げない生活の積み重ねの中で、無意識に生きる力を育んでいる。その事実に、じわじわと気付かされる。当たり前の日常の、なんと大切なことか。実は自分を取り巻く人々との関係が、私に生きる力をもたらし、与えてくれていたのだ。
 あまりにも大きすぎる喪失の前では、傷ついた人を思いやる周囲の関わりも空回りする。何げない日常を再び積み重ねる営みこそが、生きる力を取り戻すきっかけになるのだ。そのことを教えてくれる映画だった。
(東京都 遠藤めぐみさん 60代)

2020映画「風の電話」
(C) 2020映画「風の電話」製作委員会

亡き祖母を思い、私もしっかり生きたい!

 私も「風の電話」で、天国にいる祖母に「たくさんの思いを伝えたい!」「話がしたい!」と思い、とても胸が熱くなりました。
 震災とは関係ありませんが、ちょうどハルと同じぐらいの高校生の時、一緒に暮らしていた祖母が突然亡くなったのです。私は、その現実がなかなか受け止められなかった。学校から帰っても、毎日泣いてばかりで何も出来ず、心の中は空っぽ。物心ついた時から祖父母と3人で暮らしていたので、祖母が1番身近な存在だったのです。
 でも、祖父や担任の先生、友人らたくさんの人に支えられ、気遣ってもらえた。つらくて、悲しくって、どうしてよいか分からない気持ちでいっぱいでしたが、何とか乗り越えることができました。今でも、祖母のことを思うと涙が出てきてしまうのですが…。映画の中で、色々な人に支えてもらっているハルの姿が、かつての自分と重なりました。
 ハルが家族に「風の電話」を通して自分の思いを伝える場面では、私も祖母のことを思い、様々な感情があふれてきました。この気持ちを大切に、これからも祖母のことを思いつつも、しっかり生きていきたいです。
(東京都 城戸しほみさん 50代)

2020映画「風の電話」
(C) 2020映画「風の電話」製作委員会

ヒロインの自然な演技に感動

 私は試写会に参加する時は、作品について白紙の状態で観賞するのが常です。けれど、この作品は実在する「風の電話」を巡る物語ということと、上映前に諏訪敦彦監督や主演のモトーラ世理奈さん、西島秀俊さん、三浦友和さん、西田敏行さんの舞台あいさつもあって、実際の撮影では台本らしい台本がなかったと聞いて、驚くと同時に大いに期待が高まりました。
 では、あの電話ボックス内でのハルのセリフは、世理奈さんがその場で創作したものなのか……? と、驚かされると同時に、「当事者の身になる」ことを体現してくれた、そのあまりにも自然な演技に、素晴らしい女優さんだなと思いました。
 「言葉」や「会話」の大切さを思い出させてくれる。そして、傷つき途方に暮れ、前に進めないでいる者たちの背中を押して未来への一歩を踏み出させてくれる「風の電話」の存在を、とてもありがたく思いました。
 とにかくお薦めの映画です! 139分の上映時間も、あっという間でした。
(東京都 坂田ユカリさん 50代)

2020映画「風の電話」
(C) 2020映画「風の電話」製作委員会

最後に心が解放され、安らぎ感じた

 主人公のハルが、広島から大槌を目指す気持ちが理解できませんでした。世話してくれていたおばさんが倒れたというのに。おばさんの看病はしなくていいのでしょうか? 完全看護だったとしても、おばさんを放っていく気持ちがわかりません。
 また、親しい人と別れた人が行く先々で出てきて、気持ちが暗くなりました。確かにここ数年、いろいろな所で大災害が起こっているけれど、悲しい話ばかりではなく、立ち上がった人の心の持ちようをもっと見せてほしかったです。
 唯一、最後にハルが風の電話でお父さんやお母さんと話していたところでは心が解放され、安らぎを感じました。辛い時代だからこそ、楽しい映画を見たいのです。
(千葉県 小松順子さん 60代)

私にも「風の電話」で話したい人がいます

 大切な人を亡くした心の傷を癒やせるのは自分だけ。そして、立ち直るには時間がかかるんだな、と感じました。いろいろな人に優しくされ、その人が抱える悲しみにも触れながら、少しずつゆっくりと。
 「人は辛くても、食べて出して暮らしてゆかなければならない」。改めて言葉にされると、そうだよなぁと思いました。
 被災地を訪れたことはありませんが、「普通の暮らし」が失われるつらさが、少しだけわかりました。西田敏行さんが演じる言葉のなまりが、とても心地良かった。
 私にも、あの「風の電話」で話したい人がいます。
(千葉県 是谷妙子さん 50代)

新宿ピカデリーほかにて全国公開中。139分/2020年

監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈 西島秀俊 西田敏行(特別出演) 三浦友和
配給:ブロードメディア・スタジオ
<公式ホームページ> http://kazenodenwa.com/

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