今からできる親孝行旅行 要介護になっても旅を楽しむコツ

「高齢者・障がい者の旅をサポートする会」理事長の久保田牧子さんに聞く

2020.01.24

 「どんなに高齢でも、障がいがあっても旅は楽しめる」。そう語り、「誰もが旅をあきらめない社会づくり」を目指す「高齢者・障がい者の旅をサポートする会」理事長の久保田牧子さん。これまで数々の高齢者や障がい者の旅をサポートしてきた久保田さんに、会の活動や高齢者を旅に連れて行くうえでの注意点を聞きました。

「高齢者・障がい者の旅をサポートする会」理事長の久保田牧子さん
「高齢者・障がい者の旅をサポートする会」理事長の久保田牧子さん

――親を介護している人のなかには、「もっと元気なうちに旅行にたくさん連れていってあげれば良かった」と後悔する人が少なくないようです。

 お気持ちはよくわかります。でも私は、そんな後悔は不要だと思います。人は何歳になっても、どんな障がいがあっても、適切なサポートがあれば旅を楽しむことができるからです。私どもはこれまで要介護5の方や、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など難病患者の国内外の旅を数多く支援してきました。寝たきり状態で引きこもりがちだった高齢者が、旅をするようになって前向きになり、リハビリを一生懸命するようになる。その結果、昔より健康になり、若返っていく。笑顔や会話が増える。そんな姿をたくさん見てきました。

――旅を楽しみたいという気持ちが、生きる意欲につながるのでしょうか。

 そうですね。要介護5だった93歳の女性が、ヘルパーやボランティアのサポートで海外旅行をするようになり、要介護3に回復した例もあります。昔はそのような方の旅行など、医師はたいてい反対していました。でも今は、旅が高齢者の健康の維持や回復につながることが多いことから、応援してくださる方が増えています。エビデンスがあるわけではありませんが、認知症の予防や進行を食い止めるうえでも、旅は効果があると私は思います。

――ただ要介護状態の親を旅行に連れて行き、〝現地で何かあったら大変〟と思う人も多いと思います。

 旅といっても、途上国や僻地(へきち)に行くのでなければ、基本的には普段の生活と変わりません。ただ〝移動〟の要素が少し加わるだけです。しかも今は飛行機や電車、駅などのバリアフリー化がすすみ、車いすの方や障がい者が移動しやすくなっています。介護タクシーや、ユニバーサルデザインのホテルも増えています。移動や交通機関の乗り降り、ベッドやトイレなどへの移乗、衣服の着脱や食事を適切に介助できる人が同行すれば、とくに心配ありません。それをご家族の方がやってもいいし、普段お世話になっているヘルパーさんにお願いしてもいい。それが難しい場合は、私どもが紹介する「旅サポーター」を活用いただければと思います。

――「旅サポーター」とはどのような方ですか。

 養成講座を受け、私どもが認定した旅の支援者です。高齢者や障がい者が旅行する際に付き添い、必要な介助をさせていただきます。今のところ介護や医療関係者が多いですが、人が好きで「困っている人の役に立ちたい」との気持ちがあれば、誰でもなることができます。私どもはこの「旅サポーター」の育成と紹介を行っていますが、利用者は年々増えています。支援を受けるには、当会の会員になっていただき、旅費や謝礼金などの負担が必要です。まずは何でも、気軽にご相談いただければと思います。また私どもは全国の同じような支援組織と、日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワークとして連携しています。ですから例えば、東京駅までは私どもがお手伝いし、電車内は鉄道会社の方におまかせする。旅先では、現地の組織のスタッフが対応する、といったかたちで実費負担を抑えることもできます。普段、親の介護をされている方も、「旅サポーター」を上手に活用して、旅先ではぜひ羽を伸ばしていただきたいと思います。

――親を旅行に連れて行くために自分自身が「旅サポーター」になることもできるのですか。

 そのような方もいらっしゃいます。養成講座では、高齢者や障がい者が旅をする際の医学的な注意点、飛行機や鉄道を利用するうえでの留意点、ホスピタリティーなどについて、専門家から幅広く学びます。自分の親を旅行に連れて行くうえでも、おおいに役立つでしょう。「親の介護が終わったのでこれからは他の方の支援をしたい」「定年退職したので社会貢献がしたい」という、一般の方の受講も増えています。

――介助が必要な親と旅行するうえで、気をつけるべきことはありますか。

 移動だけで思っている以上に時間がかかるので、なるべく2泊はしていただきたいですね。エレベーターやトイレの場所は、事前に必ず確認しておきましょう。とくに高齢者の旅行では、トイレの問題が重要です。今は薄くていいオムツがたくさんあるので、旅行のときだけ使うのも手です。荷物は事前にホテルに送り、移動時には貴重品と必要なもの以外は持たないようにしましょう。保険証とともに、お薬手帳も必ず忘れずにご持参いただきたいですね。

――最後におすすめの場所や、旅のスタイルを教えてください。

 誰にでも人気があるのは、何といっても温泉です。体が動かせない人には、お風呂にリフトがついている「かんぽの宿」をおすすめします。リクライニングベッドを設置し、車いすの方でも使いやすい部屋を用意している「富士レークホテル」も快適です。一度乗ってしまえば、移動や荷物の持ち運びの手間がなく、食事もエンターテインメントもすべて船内で完結するクルージングもいいですね。新婚旅行や子供が小さな頃に家族で出かけた思い出の地を、ご夫婦で訪れるのもすてきだと思います。ぜひ私どものサポートもご活用いただき、何歳になっても旅を楽しみ続けていただきたいと思います。

久保田牧子さん NPO法人高齢者・障がい者の旅をサポートする会 理事長
女性誌『婦人生活』、在宅介護誌『やさしい手』『かいごの学校』の編集を経て、2007年にNPO法人高齢者・障がい者の旅をサポートする会を設立。現在は、日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワークの東京拠点となる、NPO法人東京ユニバーサルツーリズムセンターの理事長も務める。

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