<読者ブログ>

<連載> シネマのある人生(映画部)

不思議な文通でよみがえる 恋の物語

読者会議メンバーが観た映画「ラストレター」

2020.02.06

 朝日新聞Reライフプロジェクトでは、読者会議メンバーを映画の試写会にご招待し、鑑賞後に書いていただいた感想を紹介しています。
 今回の作品「ラストレター」は、Love Letter」や「スワロウテイル」など、数々の名作を世に送り出してきた岩井俊二監督が、初めて出身地である宮城を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描いた物語です。

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

自分の青春時代と重ねた

 見に行く前の勝手な先入観で、どっぷりのラブストーリーを思い描いていました。そんな期待をしてしまったからでしょうか、見終わった時は、なにか中途半端な気分になってしまいました。でもその内容は、とても心に残りました。
 所々に笑いがあり、何度か出てくる「サインして」というくだりは、わざとうけを狙っているようにも見えましたが、面白かったです。
 「ラストレター」という題名が示す通り、手紙のやり取りに沿って話は進みます。私たちは、文通の流行を知っている世代ですし、愛の告白も手紙でしたから懐かしく、いつしか自分の青春時代と重ねて見ていました。
 ただ、三角形の文通は、現実には無理があるのではないでしょうか。届く手紙は字も文体も違うし、手紙の内容も全然つながらないはずだし。そんなことが気になって、途中でちょっと現実に戻されてしまった感じです。
 手紙の行き違いをうまく生かして、未咲や裕里、鏡史郎の複雑な気持ちや、思いの絡みが描かれていたと思います。人生って、なんて偶奇で成り立っているのだろうとも思います。もう一度見たいです。
(神奈川県 奥村敦子さん 50代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

手紙の味わい深さが心にしみた

 スマホのメールやSNSでのやり取りが主流の現代。「今どき手紙のやり取り?」との思いが、頭をかすめました。しかし、映画を見始めてからは、手紙を素材としたことの味わい深さが心にしみました。
 宮城県白石市を舞台に、淡く美しい映像で展開されるミステリアスなラブストーリー。魅力的な登場人物の中で、鏡史郎の心の動きにひきつけられました。
 同窓会での裕里との出会い。愛する未咲の思いがけない事実。現在と過去を去来する手紙。阿藤からの、厳しい言葉の投げかけ。「売れない小説家」と自嘲する鏡史郎は、こうした一連のエピソードを、改めて小説として書くのでしょうか?
 いずれにしろ、この一夏の経験が、人生の新たな一歩につながっていくことは間違いないと思いました。
(東京都 樋口静夫さん 60代) 

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

愛を伝えるなら手紙?

 20数年ぶりに再会した初恋の相手から発せられた、「君に、まだずっと恋している」との言葉。ただ、その人が愛する相手は自分ではなく、「姉」であることが分かっている主人公。
 そこから向かう先は、「悲劇」を予感させる雰囲気もありました。しかし、彼女はその後、亡くなった「姉」の身代わりとなり、一方的に手紙を送ることで、新たなラブストーリーが始まる。「愛」を伝えるのに、手紙は一番威力を発揮する手段ではないかと、改めて感じました。
 私は結婚前、九州―東京間ほかで、遠距離交際を3年程経験しました。まだEメールも無かった、今から30年以上前。時間や距離を隔てて届く手紙には、自分の気持ちを一番うまく伝えられる手段でした。手紙の返事が届くのを心待ちにしていた当時を、思い出しました。
 幸いなことに、私は結婚から30周年が過ぎました。家内に「君にまだずっと恋している」と言うなら、「手紙」ですかね!
(千葉県 谷口美和さん 60代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

まぶしいほどに輝いていたあの頃

 初恋の記憶は、時が経っても色あせないものだと思いました。大人になるとうれしさや楽しさ、時にはとてつもなく悲しくて涙さえ出ないような経験もします。
 大人ではないけど、子どもでもないあの頃……。振り返れば、精いっぱい無邪気に過ごしたあの頃が、まぶしいほどに輝いていたように感じられるのかも知れません。
 昨年、私も50歳になり、中学時代の同窓会がありました。約20年ぶりの再会でした。あの時の景色や空気を一緒に感じた仲間は、いつまでも色あせない心の宝物です。
 人生は、まだまだこれから。いくつになっても、自分らしく輝いていたいです。目には見えない心のアンテナを大切にしながら、ステキな生き方をしていこうと思います。
(東京都 川口京子さん 50代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

あの頃の感情思い出させる良作

 思っただけでドキドキする。いつも頭から離れない。そこにいるのではないかと辺りを探し回る……。高校時代に好きだった人の事を思い出すと、そんな記憶がよみがえる。
 あれから二十数年たち、再びその人に出会ったとしたら、私の心臓はキュンとするのだろうか。胸の高鳴りはどれほどだろうか。はたまた、取り乱すことなく冷静でいられるのだろうか。
 その時の自分は、多分「切ない」感情と、どうしたらよいのかという「戸惑い」に翻弄(ほんろう)されるのではないか。
 この映画は、そんな、はるかいにしえの時代の感情を思い出させてくれる良作でした。
(東京都 佐藤照彦さん 60代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

日なたぼっこのような雰囲気

 映画全体の印象はほのぼの系で、温泉のような、ぬくもりを感じました。
 福山雅治さんの良さが、埋もれてしまっていような印象を受けました。最後ぐらいはヒゲをそって、シャキッとした福山さんを見たかったです。
 どこかに、ピリッとした所もあればと思ってしまうような、日なたぼっこのような雰囲気の映像と内容でした。
(千葉県 清水めぐみさん 60代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

なぜ、あんな男と?

 姉の未咲の代わりに出席した同窓会で、妹の裕里が姉のふりをした際に流れていた曲(ラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」)は、鎮魂歌のように聴こえました。かつて生徒会長だった未咲が、絶対的な存在だったことを暗示しているかのように。
 裕里にとって未咲は憧れの存在で、鏡史郎にとっては永遠のマドンナ。未咲の娘(鮎美)にとっても、かけがえのない大好きな母だったのでしょう。
 そんな、いとしい人との別れを単に「辛い」と表現するのではなく、いつまでも思い続ける気持ちには、美しさを感じました。映画を見終わった後は、優しい気持ちになれました。
 ただ一つ疑問に思ったのは、生徒会長まで務めた立派な未咲が、大学時代に付き合っていた鏡史郎と別れた後、なぜ仕事もしない男(阿藤)と結婚したのかということです。映画の内容とは関係ないのかもしれませんが、個人的にはとても気になりました。
(神奈川県 鈴木洋子さん 50代)

映画「ラストレター」メイン
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

まさに「岩井節」全開

 岩井俊二監督の映画は初期作品からほとんど見ています。中でも「スワロウテイル」は、我が生涯のベスト5に入るぐらい大好きな作品です。
 本作は事前に小説も読んでいましたし、キャストに好きな役者も多く、とても楽しみにしておりました。
 始まってみれば、まさに「岩井節」全開の作品でした。切なくて、悲しくて、でもどこかで救われる。そしてノスタルジックで、おかしくも美しい、素敵な映画でした。
 見終わった後の感じは、岩井監督作品の中では「花とアリス」に一番近く感じました。作品そのものが「ラブレター」へのオマージュになっており、中山美穂と豊川悦司のペアが、あんな形で登場したことには驚きと拍手喝采しかありませんでした。広瀬すずと神木隆之介の「学校の階段」を思わせるシーンもあって、思わずクスリとしてしまいました。
(神奈川県 渡辺賢一さん 50代)

「ラストレター」製作委員会
(C) 2020「ラストレター」製作委員会

キャスティングや設定には疑問も

 豪華な出演陣の中でも、福山雅治さんの「くたびれた中年男」の演技は秀逸で見事でした。普段の二枚目でシュッとした印象の福山さんとは違って、人生に疲れた感がよく出ていました。
 松たか子さんが夫婦ゲンカしたときのセリフの、どこまでも何げない感じも素晴らしかった。水越けいこさんや鈴木慶一さんといったミュージシャン、庵野秀明さんといった素人さんたちもいい味を出していて、南七菜ちゃんも、その年頃の女子っぽさがよくでていました。去年亡くなられた木内みどりさんも好きな女優さんだったので、最後の演技が見られてうれしかったです。
 福山さんの中学時代を演じた神木隆之介さんも好きな役者ですが、長じて福山さんになるとは想像できないなど、個人的にはキャスティングや設定には疑問も。そのためか、ストーリーに入って行くのが難しいところもありました。もう少し時間を置いたら、感じ方も変わるのかもしれませんが。
(東京都 竹内佐輝子さん 50代)

TOHOシネマズ日比谷ほか、全国東宝系で公開中。121分/2020
監督・脚本・編集:岩井俊二
原作:岩井俊二「ラストレター」(文春文庫刊)
音楽:小林武史
出演
松たか子 広瀬すず
庵野秀明 森七菜 小室等 水越けいこ 木内みどり 鈴木慶一 / 豊川悦司 中山美穂
神木隆之介 福山雅治
<公式ホームページ> https://last-letter-movie.jp/

  • この連載について / シネマのある人生(映画部)

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