こんな症状に注意!男性更年期の治療法や予防策に関する基礎知識

人生100年時代を生きるキーワード・男性更年期

2020.03.13
男性更年期イメージ

 最近「イライラが収まらない、よく眠れない」「急にほてりが出たり、関節が痛んだりする」、人にはあまりいえないけれど「めっきり性欲が減退してしまった」といった症状を感じたことはありませんか?
 もしかしたらそれは男性の更年期障害が原因かもしれません。今回は、男性更年期の症状や治療法、予防法の基礎知識をまとめてみました。

<目次>

男性にもある更年期

 更年期による心身の変化は、女性の場合は一般的に閉経時期の前後10年位の時期に女性ホルモンの低下によって起こると言われています。しかし、更年期障害は女性特有のものではありません。男性も更年期による心身の変化が起こり、その症状に苦しんでいる人がいます。

 40代後半から50代前半の男性の方で、「この頃調子が悪く、いつもと違うなぁ」と感じることがある方は、もしかするとそれは更年期障害の症状かもしれません。

男性更年期障害とは

 男性の更年期障害は、LOH症候群(late-onset hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれており、中高年男性が体内テストステロンの低下によって起こる心身の不調のことを指します。身体的・精神的どちらにも大きな影響を与え、日常生活に支障をきたす場合もあります。そのような症状を感じた時は、放置せずに早めに診察を受けるようにしましょう。

発症時期は

 男性の更年期障害が発症する時期は、50代から60代が最も多いと言われています。しかし、発症時期には個人差があり、30代後半から70代まで、いつでも更年期障害になる可能性があるのです。

 女性は更年期障害を発症したとしても、一定期間でホルモンバランスが落ち着けば症状が軽減することが多いのですが、男性の場合は、一度更年期障害を発症すると症状が長期化することがあります。また、更年期障害を患っていることに気づかれにくく、更年期障害の状態が、その人の性格だと思われてしまうこともあるので注意が必要です。

男性更年期障害の症状とは

 男性更年期障害の症状は、人によって現れ方に差がありますが、心身ともに影響を与えます。イライラやほてりが一時的に起こる軽度な方から、うつ症状や不眠がいつまでも収まらず続いてしまう重度な方までいます。

 男性の更年期障害には、以下のような症状があります。

軽症

  • ・イライラ
  • ・ほてり
  • ・性欲低下
  • ・体重の増加
  • ・メタボリックシンドローム
  • ・不眠
  • ・ED

■重症

  • ・めまい
  • ・耳鳴り
  • ・体毛の減少
  • ・関節、筋肉痛
  • ・記憶力低下
  • ・全身の倦怠(けんたい)感
  • ・うつ症状

 更年期障害の症状は、身体的な変化よりも精神的な変化がより顕著に表れます。イライラや無気力などの症状が、うつ病によく似ているため、そう診断されてしまうこともあるようです。

 例えば、何かに対する興味や意欲がなくなることは、更年期障害でもうつ病でも症状として考えられます。また、発症する年代が幅広いという共通点もあるため、症状を慎重に見極めることが大切です。

 では、更年期障害による「うつ症状」と、精神疾患の「うつ病」はどのように違いがあるのでしょうか。

 身体的な変化として、更年期障害のうつ症状は太りやすくなるのに対し、うつ病の場合痩せていくパターンが多いです。

 精神的な変化として更年期障害によるうつ症状の場合、希死念慮と言われる「死」をイメージすることにはなりにくいのが大きな違いです。

男性が更年期障害になる原因は?

 男性ホルモンの一種である「テストステロン」の分泌量が、加齢やストレスにより急激に減少すると症状が起こりやすいとも言われています。

テストステロン

 テストステロンは、下記のような役割を持っています。

  • ・骨や筋肉などの男性的な体形を形作る
  • ・社会の中で自分を主張する
  • ・認知能力を高める(記憶力、判断力)
  • ・性機能を保つ

 テストステロンの量は、ストレスにより急激に減少すると言われています。精神的ストレスにより交感神経が優位になると、脳におけるテストステロンの分泌刺激が減少してしまうのです。

 テストステロンが低下すると、身体的な変化が現れてきます。

 例えば、骨密度やヘモグロビンが低下してきます。一方で、体重が増え、筋肉量が減ります。いわゆるメタボの症状ですね。

 またテストステロンには、男性機能を保つ役割があります。テストステロンの分泌量の減少にともない、性欲が減少し、勃起機能の低下(ED)が見られます。男性機能の低下は、男性更年期障害で大きな影響を受ける症状の一つです。

男性更年期を診断する方法

 男性の更年期を診断する方法として、全部で17の質問から構成されている AMS(Aging malessymptoms)スコアがよく用いられ、点数によって更年期障害の程度が分かるようになっています。こちらの診断表を見て、思い当たるところに○を付けて合計点を出し、自己診断をしてみてください。

男性更年期AMS(Aging males’symptoms)スコア

 点数が中度から重度の場合は、一度医師の診察を受けることをおすすめします。なお、更年期障害を発症しているかどうかを、自己判断だけに頼らないようにしましょう。症状によっては、更年期障害ではなく、うつ病の可能性もあるからです。放置することで、更に症状が悪化する場合もあるため注意が必要です。

 なお、男性の更年期障害の診断は精神科ではなく泌尿器科が該当します。血液検査によって、血中のテストステロンの濃度を調べるだけでなく、前立腺の状態なども調べるため、「前よりも深く眠れなくなった」「やる気が湧かないのにイライラだけが募る」などと感じた場合には、診察を受けてみましょう。

 そして、診断を受ける場合は、年齢は気にしないでください。更年期の発症原因は、テストステロンのバランスの変化であり、ストレスなどの様々な要因で体内の分泌物質は変化します。そのため、30代後半であっても更年期と判断されることも少なくありません。ただの疲れだと自分で判断するのではなく、いつもと違うと感じたときは早めに診察を受けることが大切です。

男性更年期の治療方法

 男性更年期の治療方法には、テストステロン補充療法や漢方薬などがあります。

テストステロン補充療法

 テストステロン補充療法では、テストステロンの注射を行います。テストステロンを投与する場合には、精子を作る機能が制限される可能性があります。また、前立腺がん・肝臓病がある場合は、テストステロン補充療法を受けることができないことも知っておきましょう。

 治療期間に関しては個人差があるため、一概には言えませんが、6カ月程度の短期間で済む方もいれば、長期の治療期間が必要になる方もいます。 

漢方薬やその他の薬

 比較的症状が軽い場合は、漢方薬(補中益気湯) ED 、抗うつ薬などを使用することもあります。男性の更年期障害は心理的な影響を与えるものが多く、EDを発症することもあるためです。

 男性の更年期によって心身ともに大きな支障をきたすこともあるため、メンタル面のケアも必要です。医師の診断・指示のもと注射や内服薬、塗布、メンタルケアなど症状に合わせた適切な治療方法を選択していきましょう。

生活習慣を変えて男性の更年期を予防しよう

 男性の更年期障害が現れる原因や治療方法についてご説明してきました。

 まだ発症していない方や予備軍の方も、生活習慣を変えることで更年期障害を予防できます。日常生活において下記のような行動を心がけてみてください。

十分で質の良い睡眠

 睡眠の質を改善することがテストステロンの分泌を促進させます。ぐっすりと十分な時間寝ることで男性更年期を予防することができるのです。

 睡眠不足はもちろんですが、眠りが浅いなど質の悪い睡眠は、テストステロンの減少につながるので、睡眠の質も見直してみましょう。アルコールの取りすぎや寝る前のスマホの操作などは、睡眠の質を低下させる要因となるため注意してください。

適切な食事

 ダイエットなどで炭水化物の摂取が減るとテストステロンの分泌が減ります。タンパク質を含む肉や魚、タマネギやニンニク、アボカド、貝類などはテストステロンの分泌を高めます。

適度な運動

 適度な運動も、テストステロンを増加させるには有効です。運動することで代謝が良くなり、ストレスの発散にもつながります。

 もちろん体がもっと動く人は、ランニングやジョギングなど強度の高い運動をしてもいいですし、筋力トレーニングもテストステロン増加には非常に効果的です。

人との競争や評価される機会をつくる

 スポーツやゲームなどを通じて、友人や仲間と競い合うことで、テストステロンが分泌されるといわれています。また、自分がつくった作品を展覧会やコンクールに応募する、人から褒めてもらうなど、評価される機会をつくることも更年期障害の予防に効果的です。

 年をとってもいつまでも元気に楽しく生活したいですよね。生活習慣の改善によって、男性更年期障害の原因となるテストステロンの減少を予防していきましょう。

(取材・文 千歳 悠)

  • 堀江重郎
  • 堀江 重郎(ほりえ・しげお)

    順天堂大学大学院医学研究科・泌尿器外科学主任教授

    泌尿器科医、医学博士。社団法人日本抗加齢医学会理事長、社団法人日本Men’s Health医学会理事長。前アジア太平洋前立腺学会理事長。1960年生まれ。日米の医師免許を持ち、泌尿器科学、腎臓学、分子生物学、臨床腫瘍(しゅよう)学の研鑽(けんさん)を積む。2003年より帝京大学医学部主任教授、2012年より現職。ロボット手術ダビンチを駆使した精度の高い泌尿器手術を行う一方、学際的なアプローチを抗加齢医学、男性の健康医学に導入。日本で初めてメンズヘルス外来を始める。著書に『いのち』(かまくら春秋社)など。

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