なぜ負担は女ばかり? 「家事のモヤモヤ」解消法

家事研究家・佐光紀子さんに聞く(前編)

2020.03.11

 「体力が落ち、家事が重荷になってきた」「夫がリタイアして家にいるのに、家事を何もしてくれない」「母の家事は完璧だった。私は劣等感でいっぱい」……。「ていねいな暮らし」には憧れても、日々募っていく家事の“モヤモヤ”をどうすればいいの? 昨年末に『もう「女の家事」はやめなさい』を出版した家事研究家・翻訳家の佐光紀子さんに、心の負担を軽くするヒントを聞きました。

佐光紀子さん
家事研究家の佐光紀子さん(撮影:山本友来)

 私が家事問題に興味を持ったのは、重曹などの自然素材を使った掃除の本を翻訳し、その後、日本人向けの「ナチュラル・クリーニング」を出版したのがきっかけでした。講演に呼ばれるようになると、そこに来る女性たちが家事に疲れ、自己評価が低いのが気になったんです。どうして日本の女性は家事に縛られているのか不思議で、大学院で家事問題を研究しました。

 歴史をひもとき、国際比較をすると、日本では「家事は女性がきちんとやるべきだ」という意識が根強く、家事分担を阻んでいることが分かってきました。米国など他の国では、家事は「生活を回すための技術」だと考えて家族で分担するのが当たり前なのに、日本では女性が手間暇かけて家事をすることが、家族への「愛情のバロメーター」になっているのです。

メリットとデメリットを書き出した

 私は翻訳の仕事をしながら3人の子を育てました。次男が生まれた直後にフリーになったのですが、父が倒れ、家事が回らなくなりました。外部の力を借りないと燃え尽きてしまうと感じ、外注のメリットとデメリットを紙に書き出して、夫に説明しました。末っ子が上の子と同じ保育園に入れず、綱渡りの毎日。送迎はベビーシッターの力も借りました。生協には二つ入り、クリーニングも利用しました。

 子どもたちが大きくなってからは、楽しい要素を加えながら、家族で分担するよう心がけました。料理は私が作り、後片付けは他の家族でじゃんけんにしたり、子どもたちが中学生の頃は、夏休みに犬の散歩と風呂掃除、ごはんを炊くのを任せました。洗濯かごを個人別にしたら、子どもたちは自分で洗濯をするように。できないことは「無理かなぁ」と正直に言うので、社会人になった娘から「お母さんはよそのママより家事ができないと思っていた」と言われました。

分担を進めるコツは?

 国際比較のデータを見ると、日本はパートナーと家事を分業している割合が突出して低いです。分担が進まない原因の一つは、男性への「家事は女性がやるものだ」という刷り込みが強く、自分事として考える意識が薄いためでしょう。一方で、女性も「家事はきちんとしなければ」という考えが根強く、共働きなのに専業主婦だった母親と同じように「きちんと」しなければと頑張りすぎる人もいます。

 もちろん、ていねいに暮らしたい人はそうしたらいいと思います。家事をきちんとすることが心の支えになる人もいるでしょう。でも、つらいと感じるのなら、無理をしなくてもいいと思うのです。

 うまく家族との分担を進めるコツは、こだわりのある家事は自分でやること、そして、家族に任せた家事は、できばえに文句を言わないことです。男性は小さなことでも自分で完結させる意識が必要です。後片付けをしない料理は「趣味」でしかありません。ゴミも渡されたものを捨てに行くだけで、妻に言われなければ忘れてしまうのでは子どものお手伝いと変わりません。担当者意識が大切で、家事を「手伝う」という言い方はNGです。

 家族が気持ちよく生活するために一番大事なことは、私が元気でゴキゲンなことだと思うんです。「私さえ我慢すればいい」という発想では、生活は回っていきません。家事が心の負担になってつらいなら、家族と分担したり、外注したりしたっていいのです。

(聞き手・見市紀世子、撮影・山本友来)

  • 佐光紀子
  • 佐光 紀子(さこう・のりこ)

    家事研究家、翻訳家

    1961年、東京都に生まれる。1984年、国際基督教大学を卒業。繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に携わったあと、フリーの翻訳者に。ある本の翻訳をきっかけに、重曹や酢などの自然素材を使った家事に目覚め、研究を始める。2002年、『キッチンの材料でおそうじするナチュラルクリーニング』(ブロンズ新社)を出版。以降、掃除講座や執筆活動を展開中。

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