事実婚とは?婚姻手続きを踏まないメリットと課題

人生100年時代を生きるキーワード・事実婚

2020.03.13
手を繋ぐ日本人夫婦

 事実婚は、法律婚と対になる婚姻関係の概念です。婚姻届など一定の手続きを踏まずに、両者が結婚の意思を有しており、共同生活を営んでいる場合に事実婚として定義されます。

 総合婚活サービスIBJが、自社サービスを利用している20〜50代の独身男女455名を対象におこなった事実婚に対する意識調査(2016年)によると、「事実婚を認めますか?」の設問に対して、「認める。自分もしたい」と回答した人が男性は24%、女性は12%でした。

 また、パートナーエージェントが50〜69歳の独身男女2000名を対象におこなった「シニア世代の結婚」に関するアンケート(2017年)によると、「恋愛・結婚についての願望」の設問に対して「事実婚・同居相手が欲しい」と回答した人は、男性が7.2%で女性が3.7%となっており、いずれの数字も2016年と2015年におこなわれた同設問より増加しています。

 このように、徐々に認知度が上がり、また前向きに捉えられつつある事実婚ですが、法律婚とはどのような違いがあり、どの点がメリット・デメリットとなるのでしょうか。

<目次>

事実婚とは?

 冒頭で事実婚の概要を説明しましたが、ここで改めて事実婚の定義を確認しましょう。事実婚とは、法律上の婚姻手続きをおこなっていないものの、夫婦と同等の関係性を有した人たちの状態を指します。お互いに結婚の意思があり、長期間に渡り共同生活しているなど、結婚している状態と同等であれば事実婚と認められます。

 戸籍上は夫婦関係ではないものの、婚姻届を提出している状態と同程度の夫婦関係であることが各機関に認められれば、事実婚であっても法律婚のように所定の制度を受けられます。

 世界的にも事実婚は増加傾向にあり、厚生労働省「厚生労働白書」(平成25年)によると、結婚の自由度は高まっており、欧州の一部やアメリカなどでは、日本と比較して婚外子の割合が多く、婚姻率の低下と並行して事実婚の増加が指摘されています。

 日本においても近年、事実婚を選択する人が増えています。内閣府「第8回 世界青年意識調査」(2009年)によると、日本の対象者(2007年11月1日時点で18〜24歳に該当する青年1009名)のうち、「あなたは、結婚していますか」という質問に対して、「結婚している」と回答した人は5.9%、「結婚していないが、事実婚のパートナーがいる」と回答した人は0.4%となりました。

 事実婚は、住民票や社会保険などにおいてその証明が成立し、制度的特徴を認めることができます。

住民票の続き柄欄

 事実婚は、当事者が転出届の「世帯主との続き柄」欄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載し、住民票に反映させれば、その証明として成立します。住民票は、実質的な事実婚関係であることを証明するための最も重要となる書類です。
住民票を同じにすることで各自治体から事実婚と認められやすくなり、家族と同等の扱いを受けられる可能性が高くなります。

社会保険においての事実婚の扱い

 国民年金や厚生年金といった年金制度や、健康保険などの公的医療保険で扶養などの制度を受ける場合、事実婚関係であることを各自治体や機関に申告する必要があります。定められている要件と合致していれば、扶養などの制度は法律婚と同等に扱われます。

事実婚のメリットとは?

 では、こうした事実婚を選択する人が増えているのはなぜでしょうか?端的に述べれば、事実婚がいくつかのメリットを持っていることが挙げられます。下記より順番に、事実婚のメリットを見ていきましょう。

姓を改める必要がない

 事実婚は、法律上の手続きをおこなう必要がありません。法律婚の場合、どちらかの姓を名乗らなければなりませんが、事実婚は届け出を提出しないため、戸籍が新たに作られることはなく、実家の戸籍のままいられるメリットがあります。

 姓を変更するどちらかが、銀行口座やクレジットカード、パスポート、健康保険といった各種制度における氏名変更の手続きをおこなう必要がなく、結婚にあたっての煩わしさがありません。

離婚をしても戸籍にバツがつかない

 次に、離婚に際しての利点が挙げられます。
法律婚の場合、離婚する際には改めて届け出をおこなう必要があります。その際に、お互いの戸籍に離婚した旨が記載されてしまいますが、事実婚の場合は、法的な手続きをおこなわないため、関係を解消しても戸籍上は変わりません。

親戚づきあいから距離を保てる可能性がある

 法律において、相手の両親・兄弟と姻族関係にならずに済むのもメリットの一つです。「家族との折り合いが悪く、できるだけ関わりを持ちたくない」など何らかの理由がある場合には大きな利点となります。

 また、「女性が男性の家に入る」といった一般的な規範意識がなくなり、対等に付き合えることもメリットになります。

事実婚の課題とは?

 ここまで事実婚のメリットについて記述してきましたが、一方で事実婚における課題は何でしょうか?
事実婚の大きな課題は、法律婚と同等の保護は受けられるものの、まったく同じ条件ではない点です。

 下記より、事実婚のデメリットを見ていきましょう。

共同親権が持てない

 事実婚で子どもを出産した場合、生まれた子どもが2人の子であっても、どちらか一方にしか親権が与えられません。

 事実婚で子どもを産むと親権は母親に与えられ、子どもは自動的に母親の戸籍に入ります。その上で父親は、子どもを「認知」する手続きをおこなわなければなりません。また認知しても、親権は母親のままとなるため、父親へ親権を変更するためには家庭裁判所の手続きが必要です。

日常関係で家族関係(配偶者)を証明しにくい

 また賃貸住宅の借り入れ、保険加入など日常生活におけるハードルもあります。

 法律婚の場合、戸籍謄本などを用意することで家族関係の証明が容易におこなえますが、事実婚の場合は、事実婚の証明をしてある住民票、生命保険の証書、親族からの証言、日記など、家族関係があると証明できる資料をいくつか用意しなければなりません。

経済的な不利益

 最後に、事実婚では配偶者控除が適用されません。そのため、法律婚と同等な関係にあっても、支払う税金は事実婚のほうが高くなります。また配偶者控除だけでなく、医療費控除なども適用されません。

 また事実婚の場合は相続権が認められておらず、相手の名義で所持している不動産や預貯金などの財産を原則、引き継げません。遺言書によって遺産をもらえるケースもありますが、相続税控除が受けられないため、法律婚と比較して税負担が多くなってしまうデメリットがあります。

まとめ

 今回は、事実婚のメリットと課題を記載してきました。事実婚は近年増加傾向ですが、いくつかの課題も存在することが理解していただけたかと思います。しかし今後、夫婦のあり方の変化や婚姻制度への疑義などを背景に、事実婚の増加自体は続いていくことでしょう。

(取材・文 山元 咲紀)

  • 露木幸彦
  • 露木 幸彦(つゆき・ゆきひこ)

    行政書士・AFP

    1980年生。国学院大学法学部卒。金融機関の勤務を経て、離婚に特化し、行政書士事務所を開業。マネー現代(講談社)、週刊女性prime(主婦と生活社)などで連載を担当。著書に「男のための最強離婚術」(メタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社)など。テレビ、雑誌等の登場多数。

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