医学博士が勧める腸活食材20選

人生100年時代を生きるキーワード・腸活

2020.03.13
腸活食材イメージ

 医学が進歩するにつれて、腸は食べ物の消化・吸収・排泄(はいせつ)だけではなく生活習慣病・がん・免疫力の調整など全身の健康に関与している臓器であることがわかってきました。それに伴い腸を整える「腸活」が注目されています。
 しかし、「腸活」という言葉は聞いたことがあるけど、やり方やメリットを知らない方もまだ多いようです。そのような方に向けて、腸活の効果やメリット、腸活にオススメの食材、さまざまな腸活の方法などを紹介します。腸活に興味を持っている方は、参考にして今後の腸活に取り入れてみてください。

<目次>

腸活ってなんのこと?その効果やメリットは?

 腸活とは、腸内環境を整えて腸の働きを正常にすることです。

 人間の腸には、約1000種類、100兆個の腸内細菌が生息しており、種類ごとに塊となって腸壁に張り付いています。この状態は、品種ごとに咲いているお花畑のように見えることから、腸内フローラと呼ばれています。

 腸内細菌には、人体に良い影響を与える善玉菌と悪い影響を与える悪玉菌、どちらでもない日和見菌があり、腸内環境はこれらの腸内細菌のバランスで決まります。悪玉菌が多い「悪い腸内環境」になると、便秘や下痢、肌荒れなどになりやすいといわれています。

 また、腸には「腸管免疫」と呼ばれる免疫システムが備わっており、侵入してきた病原体を発見したり攻撃したりする働きがあります。この腸管免疫の働きに腸内細菌が関係していることが明らかになっており、免疫力を高める意味でも、腸内の善玉菌の割合を増やし、悪玉菌の割合を減らすように腸内環境を改善することが重要です。

腸活のメリットとは?

 腸活にはさまざまなメリットがあるという報告があります。

 便秘・下痢が改善する:悪玉菌が出す物質によって腸のぜんどう運動が正常に働かなくなるため、腸内の悪玉菌の割合が多くなると、便秘や下痢が起こると考えられています。そのため、便秘や下痢の解消には、腸活で腸内環境を整えることが効果的といわれています。

 免疫力が向上する:腸管免疫系は、身体の中で最も大きな免疫系で、免疫細胞の70%が存在しているといわれています。そのため、腸内環境を整える腸活をすることで、免疫力の向上が期待できるのです。免疫力を高めることにより、インフルエンザや未知の感染症にかかりにくくなったり、花粉症が改善したり、がんを予防する可能性があります。

 動脈硬化を予防する:善玉菌には、脂肪細胞を燃焼させて血清コレステロールを低下させる効果があるという報告があります。悪玉コレステロールが血管の壁に付着して動脈硬化を促進すると、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞(こうそく)などさまざまな疾患を引き起こす要因となります。腸活で善玉菌の割合を増やし、悪玉菌を減らすことで、動脈硬化の予防につながるのです。

腸内環境の状態を確認する方法は?

 便を見ると、腸内環境を大まかに知ることができます。便が黄褐色で臭いが強くなければ、腸内環境は良い状態にあるといわれています。便が黒く臭いが強ければ、悪玉菌の割合が多く腐敗が進み腸内環境は悪い状態にあると考えられます。

腸活のやり方を知ろう。どんなものをどうやって食べればいい?

 腸活のやり方で重要なことのひとつに、食事があります。
腸の働きを正常にするためにオススメする食材をご紹介します。日々の食習慣を見直しながら、いつまでも健康的な身体でいられるよう腸活をしていきましょう。

どんな食べ物を食べれば良いの?

 善玉菌は、腸内を弱酸性にして悪玉菌の増殖を抑制する働きがあります。善玉菌を増やす食事をすることで、腸内環境を整えることができるのです。

 善玉菌を増やす方法は、大きく分けると三つあります。
一つ目は、人の腸に住み着いている善玉菌を直接摂取する方法(プロバイオティクス)、二つ目は善玉菌の餌となるものを摂取し善玉菌を元気にして増やす方法(プレバイオティクス)。三つ目はプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた方法(シンバイオティクス)です。

 「プロバイオティクス」と呼ばれる、ビフィズス菌や乳酸菌などの生菌製剤およびヨーグルトなどの食材を摂取すると、善玉菌の割合が高まり腸内環境は良くなります。しかし、食事から取り込んだ菌は、腸内に定着できないため、継続して摂取し続けるのが理想的です。

 「プレバイオティクス」には、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維が含まれているため、「プレバイオティクス」を摂取すると、腸内の善玉菌が元気になり、増えやすくなるといわれています。1回の食事で摂取するのではなく、複数回に分けて摂取する方が、より効果的です。

 では、実際にどんな食べ物を食べればよいのか、確認していきましょう。

オススメの食材は?

 ビフィズス菌や乳酸菌が含まれる食べ物には、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などがオススメ。大豆やごぼう、たまねぎなどには、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維が多く含まれています。

 注意して欲しいことは、善玉菌を増やす食べ物を少し多めに取る程度に留めて、あくまでも基本はバランスの取れた食事を取ることが大切です。腸内環境を整えるためにオススメの食材でも、過剰に取ることは、身体に良くありません。

 食事で腸内環境を改善するのが難しいと感じている方は、特定保健用食品の利用がオススメです。特定保健用食品には、腸の調子が気になる方に向けて、ビフィズス菌や乳酸菌を増やして腸内環境を良好に保つ食品が販売されています。

医学博士のお墨付き・腸活にオススメの食材20選

 ここでは、主に機能性食品の有効性や腸内細菌と疾患について研究されている医学博士である松井輝明さんのお墨付きをいただいた「腸活にオススメの食材20選」を栄養別にご紹介します。どれも腸活に役立つものばかりですが、自分に足りないと思った食材を多めに食べるように意識しましょう。

善玉菌を直接摂取できる食べ物 善玉菌を増やす作用がある食べ物
乳酸菌・ビフィズス菌 食物繊維 オリゴ糖
ヨーグルト キノコ類 たまねぎ
チーズ 豆類 大豆
漬物 野菜類 アスパラガス
納豆 ごぼう にんにく
キムチ 大麦 ねぎ
乳酸菌飲料 ひじき バナナ
玄米 コーヒー

他にもあるこんな腸活のやり方

 腸活におすすめの食材を紹介してきましたが、腸活の方法は、運動や睡眠などの生活習慣、酒・タバコなどの嗜好(しこう)品を見直して、腸の動き自体を整えるやり方もあります。

適度な運動

 腸腰筋というインナーマッスルを鍛えると、腸が刺激されて腸のぜんどう運動を促して排便がしやすくなります。激しい運動をする必要はなく、ウォーキングやストレッチ、ヨガなどで腸腰筋を鍛えることが出来ます。

 定期的に運動することが難しい方は、日常生活で多く歩くことを心掛けることからはじめましょう。例えばエレベーター、エスカレーターを使わず階段を有効に使う、買い物には自転車ではなく出来るだけ歩いていく事でも効果が期待できます。

適切な睡眠

 不規則な生活は、悪玉菌を増価させる原因となるため、夜更かしなど避けて規則正しい時間に眠ることや十分な睡眠時間も、腸活の一つの方法です。
リラックスして眠ると、副交感神経が優位になり、腸は活発に活動し、寝ている間に便を結腸まで運んでくれます。そうすると、朝食後に排便する習慣がつくようになるでしょう。

まとめ

 腸活は、健康維持のために大切なことです。しかし、腸活することに神経質になり過ぎないように注意しましょう。
ストレスは、悪玉菌を増殖させる原因となるため、ストレスを感じるような無理な腸活をするとか逆に腸内環境が悪くなってしまう可能性があります。
腸活はメリットが多いとはいえやりすぎは禁物です。無理なくストレスを感じないよう適度な範囲で行うことがオススメです。

(取材・文 山口 尚孝)

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

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