年金生活の実態とは?困らないために備えておくべきこと

人生100年時代を生きるキーワード・老後の生活費

2020.03.16
年金生活イメージ

 老後の蓄えとして、公的年金以外に約2000万円が必要となるという金融庁による報告書(老後資金2000万円問題)が話題になるなど、老後のお金にまつわる問題には関心の高さがうかがえます。総務省統計局の家計調査報告(2018年)によると、世帯主が60~69歳で2人以上の世帯における消費支出は約29万円、同70~74歳以上では約28万円、同75歳以上では約24万円です。
 老後の生活資金は、年金のみで補えるのでしょうか。年金の受給額と消費支出の差異や、備えておくべきポイントを解説していきます。

<目次>

年金の受給額は?

 厚生労働省によると、日本の公的年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、企業に勤める人が加入する「厚生年金」、公務員が加入する「共済年金」があります。国民年金は65歳から支給が始まり、金額は納付した期間に応じて決定されます。厚生年金は60歳から支給が開始されますが、段階的に受給開始年齢が引き上げられており、2025年(女性は2030年)からは完全に65歳からの受給となります。

 総務省の年金基礎調査(2017年)によると、夫婦ともに正社員中心であり生涯平均年収が、夫336万・妻208万円の場合、2人の年金額を計算すると1カ月あたり約29万円です。また同じ条件で、5年間会社に勤めた妻が結婚を機として退職した場合、2人の年金受給額は1カ月約25.8万円となります。

年金と消費支出

 この受給額と消費支出のデータから、年金の受給金額は、1カ月の最低限の支出とほぼ同額であることがわかります。そのため、年金だけでは不慮の病やけがのための備えをすることや、余裕のある生活を送ることは難しく、年金だけで生活しようとするのは不安があるといえるでしょう。

 実際に、公益財団法人生命保険文化センターは「世帯主が60歳以上の無職世帯では毎月約4万~6万円を取り崩す」ことを指摘しており、明治安田生命の調査においても、無職世帯であれば「月間収支は54,520 円の不足」だと示されています。具体的な金額の多寡はさておき、こうした調査からも、年金生活が赤字に陥るリスクを抱えていることが明示されているのです。

年金生活に入る前に備えておくべきポイント

 こうした実情を受け、年金生活に入る前にどのような備えをしておくのが良いでしょうか。定年後に使えるお金を増やす、定年後に必要な支出を減らすという両方の側面から考えてみましょう。

定年前からお金の準備をしておく

 定年退職後に仕事をせずに暮らす場合は、預貯金など金融資産を崩して不足分を補わなければなりません。年金生活に入ってから慌てることがないよう、定年前から老後資金を準備しておくことが必要です。

 働いている間に貯金をする以外にも、資産運用など、定年を迎える前に資産の山をより高く築く方法を検討してもよいでしょう。ファイナンシャルプランナーなどの専門家へ相談することも合わせて検討して、自分にあったお金の計画を立てておくことが大切です。

定年退職後の勤務先を事前に見つけておく

 定年後も働いて消費支出の不足分を勤労収入で補う方法もあります。改正高年齢者雇用安定法により、企業は、労働者が希望すれば65歳まで再雇用することを義務付けられています。そのため、再雇用制度や勤務延長制度を利用し、現役時代に勤務していた会社で働き続けることも可能です。

 現役時代に勤めた会社以外で働きたい場合や、賃金や職務内容など再雇用制度での雇用内容に同意できない場合は、ハローワークや人材紹介会社を利用して再就職先を見つける方法もあります。日本は人手不足であり、特にシニア世代の活躍が求められている時代背景もあります。退職後にあわてて再就職先を探すのではなく、あらかじめ自分のライフプランややりがいなどから定年後の就職先を検討しておけば、より良い条件で仕事につける可能性は高まるでしょう。

医療費を抑えるため健康維持に努める

 次は、支出を減らす方法を考えてみましょう。特に、若いころとは異なり、年をとるにつれて増える支出として、医療費や介護費があります。健康を損なうと、医療費や介護費がかさむ要因になります。これらの出費を抑えるためには、定年前から規則正しい生活を送り、健康を維持することが大切です。乱れた食生活や過度な飲酒、喫煙、運動不足などは健康を害するリスクがあります。運動の習慣をつけるなど、自分にできることから徐々に意識してみましょう。

年金生活者支援給付金の開始

 年金生活を迎えるにあたり、これまで挙げたポイントに気を付けていても、生活が苦しくなってしまうケースはあるでしょう。
2019年10月からは消費税が10%となったことをふまえ、公的年金などの収入金額・所得が一定以下の年金受給者が年金に上乗せして給付金をもらうことができる制度が開始されました。

 これは年金生活者支援給付金制度と呼ばれ、以下3つの支給要件を全て満たしている人が対象となります。

  • (1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • (2)同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • (3)前年の公的年金等の収入金額(障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まない)とその他の所得との合計額が879,300円以下

おわりに

 ここまで見てきたように、年金生活を送るためにはそれ以前からしっかりと準備をおこなっていくことが重要です。収入や支出は、地域差や個人差なども大きいため、一般的な情報を参考にするだけでなく、個人個人の状況を踏まえてシミュレーションをし、定年後の生活に備えましょう。

(取材・文 青山 浩子)

  • 深野康彦
  • 深野 康彦(ふかの・やすひこ)

    有限会社ファイナンシャルリサーチ代表

    大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。金融資産運用設計を研鑽(けんさん)して1996年に独立。現在のファイナンシャルリサーチは2006年に設立(起業2社目)。さまざまなメディアやセミナーを通じて、資産運用のほか、住宅ローンや生命保険、あるいは税金や年金などのお金周り全般についての相談業務や啓蒙(けいもう)を幅広く行っている。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP