「実は、居間が危ない」 専門家が考える「最後まで暮らせる家」とは

医療・介護コンサルティング会社「メディヴァ」 理学療法士・鈴木勝也さん

2020.03.23

 人生100年時代。あなたの自宅は、高齢者になってからも10年、20年と住み続けられるようにきちんと整備されていますか?できる限り快適に住み続けるには、将来の自分の身体状況や暮らし方と、住宅の設備を照らし合わせて計画することが大切です。では、具体的にどうすればいいのでしょうか?株式会社メディヴァの鈴木勝也さんに伺いました。

「楽観」は危険、自分がどのフェーズか見極めて

 近年、高齢者住宅や老人ホームなどの高齢者施設が注目されていますが、全体を見ると日本で高齢者施設に住むのは1割程度といわれています。つまり、8割〜9割の方は高齢になっても自宅に住み続けるということです。

 できる限り自宅で快適に住み続けるためには、本人のフェーズに合わせて求められる住まいの役割を移行させていくことが必要になってきます。一口に高齢者といっても、とてもお元気な方から要介護者まで幅広くいらっしゃるので、大まかに以下の3つのフェーズで考えていきます。

ぽじえじライフデザイン 資料

●アクティブ期・・・元気な時期《予防》

目安
・1日1回は外出している
・仕事や趣味に意欲的に取り組んでいる

●フレイル期・・・少し体力が落ちてきた時期《快適》

目安
・疲れやすくなった
・歩く速さが遅くなった(1m/秒以下が目安)
・ペットボトルの蓋が開けにくくなった
・過去に転倒している

●要介護期・・・要介護状態の時期《自立》

目安
・要支援、要介護認定を受けている
・家事や身支度などの日常生活に支援が必要


 アクティブ期はまだお元気な時期です。個人差があるので一概には言えませんが、65歳〜75歳が目安です。75歳を過ぎると要介護や認知症のリスクが高くなるので、フレイル期に入る方も多いでしょう。「過去に転倒したことがある」というのは、予防の時期ではなく既にフレイル期に入っていると考えてください。要介護期は言葉通り、要支援、要介護認定を受けていたり、日常生活に誰かの助けがいる状態をいいます。

 自分や家族のことは「まだ元気なので」と楽観的に考えがちですが、まずはその先入観を捨て、どのフェーズにいるのかを確認することが大切です。

身体フェーズで、住まいの改修度も変わる

 住まいの役割も、本人のフェーズに合わせ《予防》《快適》《自立》の順に優先度が変わっていきます。

 アクティブ期には、病気や要介護状態になるのを防ぐ《予防》を優先した住まいを。フレイル期には、無理なく過ごせる暮らしやすさを優先した《快適》な住まいを。要介護期には、できる限り自分でできるようにする《自立を優先した住まいを意識します。

 では具体的に、《予防》《快適》《自立》のフェーズにおいて、どのように住環境を整えていけばよいでしょうか。

《予防》フェーズに大事な危険排除

ぽじえじライフデザイン 資料

1.転倒・転落の防止

 《予防》のフェーズでは、危険を排除し、将来的な改修を見越した対応をしていきます。

 チェックポイントは「転倒・転落の防止」「ヒートショックの防止」「社会とのつながりの確保」です。

 実は、高齢者の転倒事故の約8割は自宅内で、その半数は居室で起こっていることはご存知ですか? 風呂場や階段は転倒の危険があるためことを認識しているため、注意する方が多いですが、一番いる時間が長く、一番意識が向いていない居間にこそ危険が潜んでいるのです。たとえば、通り道に電源コードをはわせている、カーペットがめくれている、滑りやすいスリッパを履いているなどは、つまずきや転倒の原因になるので対策が必要です。

2.ヒートショックの防止

 次の「ヒートショック」は、寒暖差で血管の収縮と拡張が一気に起こることにより、めまいや気絶、脳卒中、心筋梗塞などが起こってしまう現象です。浴槽で亡くなられる高齢者は、多くがこのパターンです。ヒートショックを防ぐには、なるべく温度差のない住環境を作ることが大切です。たとえば、二重窓の設置や、脱衣所・浴室への暖房器具導入も一つです。いきなり機器を導入できない場合は、入浴前に浴槽の蓋を開けたり、温かいシャワーをかけたりして浴室を温めておくなど、少しの工夫でリスクを減らせます。

3.社会とのつながりの確保

 3番目の「社会とのつながり」は、歩行障害や認知症発生のリスクと関わってきます。外出が1週間に1回以下の方は、1日1回以上外出する方に比べ、歩行障害のリスクが約4倍、認知症のリスクが約3.5倍になるといわれています。玄関付近に手すりや椅子を設置することで負担を軽減し、外出しやすい家にしていきましょう。

《快適》フェーズは、「元気なうちの見直し」

ぽじえじライフデザイン 資料

 次の《快適》のフェーズでは、「なんとかできる」を放置せずに、「楽」に「安全」にできるように、住空間を整えていきます。判断力や対応力のある元気なうちに住環境と生活習慣を見直すことで、要介護状態になっても対応しやすくなります。主に「安全な風呂場」「使いやすいトイレ」「コンパクトで負荷の少ない日常生活空間」が整備されているかをチェックしていきます。

 浴室では、体力の低下とともに困難になる入浴動作を補助できるように、跨ぎやすい浴槽や、立ち上がる際に掴める手すり、椅子を置けるスペースなどを整備することが理想です。

 トイレにおいては介護期を見越して、出入りがしやすい、便座が低すぎない、手すりが設置されている、といった環境が理想です。そして、要介護状態になり毎日の入浴が困難になったときに、隠部の清潔を保つための温水洗浄があるとなお良しです。

 フレイル期は生活スタイルを見直し、コンパクトに変更していく時期でもあります。日常生活の中で階段や段差の上り下りを極力なくし、生活動線を短くすることで、身体への負荷を減らしていきます。

 高齢になると環境の変化に対応できなくなるので、《快適》のフェーズではできるだけ早めの対応を心がけることが大切です。

《自立》フェーズは、本人ができることを支援

 最後は「自立」のフェーズです。要介護期になると、福祉用具や介護ベット、介護サービスなどを導入し、本人ができる限り自分でできることをしていくための環境整備が必要になります。この時期に関しては、病気や症状によって必要な対策が大きく変わるので、必要が出たときに応じて、ケアマネジャーやリハビリ職、福祉用具の専門家に相談しながら進めていきましょう。

 以上が、出来る限り自宅で快適に住み続けるためのチェックポイントです。ご自身やご家族のフェーズに合わせて早め早めに対応していくことで、それが予防にもなり、最終的には健康な状態で長く自宅で過ごすことに繋がっていきます。ぜひご自身やご家族と照らし合わせて、必要な準備をしていきましょう。

  • 鈴木勝也
  • 鈴木 勝也(すずき・かつや)

    理学療法士。「メディヴァ」介護事業部マネージャー

    愛知県出身。名古屋大学大学院医学系研究科修了。ヘルスケア業界におけるサービス提供者と受け手の満足を両立し、誰もが質の高い医療・介護を受けることができる環境の実現を目指し、メディヴァに参画。現在は通所介護、福祉用具、住宅改修を行う「ぽじえじ」介護事業の運営を行うとともに、アジアの高齢化問題に対する政策への関与や現地の事業者支援に取り組む。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP