腸内環境を改善して健康に 誰でもすぐに始められる方法をご紹介

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2020.03.23
腸内環境改善イメージ

 頑固な便秘、慢性的な下痢。おなかの不調が長引くと、気になって気分も晴れませんよね。そんな悩みを解消するために、腸内環境の改善に取り組みましょう。
 腸内環境が悪いと、排泄(はいせつ)の不調だけでなく生活習慣病につながるリスクもあるとされます。腸内環境は全身の健康において重要な役割を担っています。
 この記事では、誰でもすぐに始められる腸内環境の改善方法について紹介します。おなかの悩みがある人は、今日からさっそく始めていきましょう。

<目次>

腸内環境の基礎知識

 腸内環境は長い期間をかけて、自身の食習慣や生活習慣によって作られるものです。便通だけではなく、メンタルヘルスや肌の調子など、身体のさまざまところに影響を与えるとする研究もあります。そんな腸内環境について理解を深めていきましょう。

腸内フローラを理解しよう

 人の腸のなかには、600兆個を超える細菌がすみついています。細菌は種類にごとにまとまって群生する特性があり、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)という名前がついています。その見た目が花畑(flora:フローラ)のようであることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。

 腸内細菌には、人体に良い影響を与える善玉菌と悪い影響を与える悪玉菌、どちらでもない日和見菌があり、生活習慣や食生活の影響を受けて数を増やしたり減らしたりしています。

善玉菌とは

 ビフィズス菌や乳酸菌などが有名。腸内環境を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を防ぎ、さまざまな病気のもとになる物質が発生しないようにする役割を担っています。さらに、酪酸を産生する腸内細菌も善玉菌として注目されています。

悪玉菌とは

 代表的なものはウェルシュ菌やブドウ球菌など。腸内の環境をアルカリ性にして有害物質を増やします。

日和見菌とは

 腸内で優勢な未知なる菌と同じ働きをする特徴があります。善玉菌が多い腸内環境では特に悪さをしませんが、悪玉菌が増えてくると悪玉菌の味方になります。

 この3種類の腸内細菌の理想的な割合は以下の通りです。悪玉菌といっても、消化・吸収を助けたり免疫機能を高めたりと、身体の健康を維持するために必要な役割も果たしており、あくまでバランスよく腸内に存在していることが重要です。

理想的な腸内細菌の割合

  • ・善玉菌:30〜40%
  • ・悪玉菌:10%
  • ・日和見菌:50〜60%

腸内環境を改善する前に腸年齢をチェックしよう

 腸内環境の改善を始める前に、今の「あなたの腸年齢」をチェックしてみましょう。質問にあてはまる項目がいくつあるか数えてみてください。

生活習慣についての質問(太字は重要項目)

  • ・トイレの時間は決まっていない
  • ・おならがくさい、人にくさいと言われる
  • ・たばこをよく吸う
  • ・顔色が悪く老けてみられる
  • ・肌荒れや吹き出物が悩みのたね
  • ・ストレスをいつも感じる
  • ・運動不足が気になる
  • ・寝つきが悪く寝不足

トイレについての質問(太字は重要項目)

  • ・いきまないと出ないことが多い
  • ・排便後も便が残っている気がする
  • ・便がかたくて出にくい
  • ・コロコロした便が出る
  • ・時々便がゆるくなる
  • ・便の色が黒っぽい
  • ・出た便が便器の底に沈みがち
  • ・便がくさい、人にくさいと言われる

食事についての質問(太字は重要項目)

  • ・朝食は食べないことが多い
  • ・朝はいつも忙しい
  • ・食事の時間は決めていない
  • ・外食は週4回以上
  • ・野菜不足だと感じる
  • ・肉が大好き
  • ・乳製品や牛乳が苦手
  • ・アルコールを多飲する
該当項目別 腸年齡チェック表
4個以下の人 腸年齢=実年齢
5〜9個の人 腸年齢=実年齢+10歳
10〜14個の人 腸年齢=実年齢+20歳
15個以上の人 腸年齢=実年齢+30歳

 簡易的なチェック方法なので、目安として活用してください。腸内環境についてもっと詳しく知りたい人は、自宅で検査ができる腸内フローラ検査キットもあります。検査キットを利用することで、腸内細菌の割合を調べることができます。

腸内環境を改善するとこんなに快適

 腸内環境は私たちの体調と大きく関わっているといわれます。腸内環境を改善すると、どのような効果が期待できるのか、確認していきましょう。

下痢の改善

 腸内環境を改善すると、下痢が改善する可能性があります。これは、おなかの調子を崩す原因となる悪玉菌が減少するためです。腸内環境が健やかになり善玉菌が優勢な状態になることで、腸が正しく働き、下痢が改善されるのです。

肌の調子の改善

 肌荒れは、悪玉菌が出す有害物質が全身へ運ばれ、皮脂や角質と結びつくことによって起こります。腸内環境を改善すると、善玉菌の割合が多くなり、体内に有害物質が発生しづらくなります。その結果、お肌の調子も改善されるとされます。

花粉症などのアレルギー症状が和らぐ

 腸内環境が正常になると、身体を守るバリアー機能も正常に機能するようになるため、アレルギーなどの症状が和らぎます。花粉症などで困っている人は、腸内環境を健やかに保つことが症状の緩和につながることも。

大腸がんのリスクが低下する

 腸内細菌の多くは、大腸にすみついています。肉中心の食生活によって腸内で悪玉菌が増えると、発がん促進物質や発がん物質が作り出されます。さらに腸内環境が乱れることで免疫力も低下するので、大腸にポリープやがんのできやすい状態になってしまうのです。
 腸内環境を改善することは、大腸がんリスクの低下に関係があるといえるでしょう。

腸内環境がなぜ悪くなるのか原因を知ろう

 ここでは「腸内環境が悪化する原因」について説明します。あなたの生活習慣のなかに、悪玉菌を優勢にする行動や習慣がないか見直してみましょう。

不規則な食習慣

 腸内細菌の中には、日頃の食生活に大きな影響を受けるものもあります。そのため、偏った食事や不規則な食習慣を続けていると腸内フローラのバランスが崩れてしまうのです。また、日によって、1食しか食べなかったり、深夜に食事をしたりと不規則な時間に食事をすることも腸内環境が悪化する原因になります。

喫煙習慣

 腸の運動は副交感神経が担っているため、喫煙により交感神経が優位な状況になると活動が停滞することに。そのため喫煙習慣がある人は腸の働きが低下し、便秘になりやすくなります。便秘によって善玉菌が減って腸内環境の悪化につながるのです。

過度な飲酒

 適度な飲酒は胃腸を活発に動かすなどの効果がありますが、腸内の悪玉菌が増えて腸内環境が悪玉菌優勢に変化するという報告も。お酒の飲みすぎは腸内環境に良くないと言えるでしょう。

安易に抗生物質を飲んでしまう

 細菌による病気の治療に抗生物質は欠かせません。しかし抗生物質を飲むと、腸内にいる有益な細菌まで排除してしまい、腸内環境が乱れる要因にもなります。抗生物質を服用するのは、医師としっかりと相談してからにしましょう。

寝不足や不規則な生活が続いている

 寝不足や不規則な生活が続くと、体内時計が乱れ、交感神経が優位な状態となります。そうすると、心身は常に興奮した状態が続き、自律神経のバランスが乱れてきます。自律神経の乱れにより、腸の働きが悪くなり、腸内環境の悪化につながってしまうのです。

ストレスを抱えている

 腸の働きは自律神経によってコントロールされています。そのため、ストレスにより自律神経のバランスが崩れると腸がうまく働かなくなり、便秘や下痢をしやすい状態になるだけでなく、腸内環境が悪化してしまいます。
 腸と自律神経は、どちらかがよくなるともう一方もよくなるという、お互い密接な関係にあります。自律神経のバランスがとれると腸の働きはよくなりますが、腸内環境が改善され腸の働きがよくなると、自律神経のバランスも整うのです。

腸内環境を改善しよう、すぐに始められる方法とは?

 腸内環境は日頃の生活のなかで改善できることもたくさんあります。今日からすぐに始められる改善方法をご紹介します。

食事の見直し

 善玉菌や善玉菌の味方となる日和見菌が含まれる食べ物を摂取するようにしましょう。「プロバイオティクス(健康効果を示す生きた微生物)」と、「プレバイオティクス(善玉菌のエサとなる食べ物)」の両方を摂取する「シンバイオティクス」を心掛けることで、腸内環境が良い状態に保たれやすくなるといわれています。

プロバイオティクス(健康効果を示す生きた微生物)

  • ・納豆
  • ・ヨーグルト
  • ・乳酸菌飲料

プレバイオティクス(善玉菌のエサとなる食べ物)

  • ・オリゴ糖
  • ・キウイ
  • ・りんご
  • ・さつまいも
  • ・きのこ

 これらを日々のメニューのなかに無理のないように取り込み、加えて三食バランスの良い食事を摂取することを心掛けるのも、腸内環境を改善するには大切なことです。

 また、朝食を食べる習慣も、朝に腸が動き出す助けになります。そのため便秘に悩んでいる人は、朝食を毎日食べるようにすると良いでしょう。潤滑油の働きをして排便を促進するオリーブオイルを使用した料理を食べるのもよい方法です。

食物繊維を多くとる

 食物繊維を多く含む根菜類、きのこ類や海藻などをとり続けることが大切です、これらは便秘解消のみならず、腸内の酪酸産生菌を活性させて、酪酸濃度を上昇させ、大腸がん予防や腸粘膜の正常化や免疫力のアップにもつながるのです。

運動習慣をつける

 運動不足は腸内環境にとって良くありません。食生活で身体の内側から腸内環境を整えるだけでなく、外からの刺激も加えることで腸を刺激することも必要なのです。いきなり強度の強い運動をするのではなく、たとえば30分程度のウォーキングなど、少し汗ばむ程度の運動から始めてみましょう。
 また、便秘の改善には腸腰筋(ちょうようきん)と呼ばれるインナーマッスルを刺激することが効果的です。仰向けに寝て、片足ずつひざをかかえ、腸腰筋をゆっくり伸ばすストレッチをしてみましょう。

ストレスケア

 職場や家庭内などで強いストレスを感じている人は、運動、音楽、読書、散歩、趣味の時間を作り、ストレスを解消する方法を探すところから始めてみましょう。最も簡単なリラックス方法は深呼吸です。ストレスを抱えていると感じたときには、意識的に呼吸を深くすることがポイントです。

サプリメントやヨーグルトの摂取

 ビフィズス菌や乳酸菌をサプリメントやヨーグルトで補うというのも一つの方法です。摂取された善玉菌が腸内を通過途中、悪玉菌を抑制し、すでに存在するビフィズス菌の活性アップ(菌数増加)を導いてくれます。その結果、腸内環境を整えられることが期待できます。

腸内環境改善で健やかなカラダを

 腸内環境の改善は健康な毎日を過ごすための第一歩です。おなかの調子をよくするだけでなく、生活習慣病やがん、うつ病などさまざまな病気のリスクを下げることにもつながります。
 食事に気をつけることはすぐにでも始められます。毎日、ヨーグルトや乳酸菌飲料をとる、納豆を食べるなど、食事の改善から取り組んでみてはいかがでしょうか。

(取材・文 山口 尚孝)

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  • 辨野義己
  • 辨野 義己(べんの・よしみ)

    一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員

    1948年、大阪生まれ。酪農学園大学獣医学科卒、東京農工大学大学院獣医学専攻をへて理化学研究所へ。同研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長、同研究所辨野特別研究室特別招聘研究員などを歴任して現職。半世紀にわたって腸内環境学・微生物分類学の研究に取り組んでいる。「『腸内細菌』が健康寿命を決める」(集英社インターナショナル)、「大便力」(朝日新聞出版)、「大便革命」(幻冬舎新書)、「長寿菌まで育てる最高の腸活」(宝島社)など著書多数。

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